表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/154

大事な話し合い


私が操れる式を一気に行使して幻想郷中の有力者達を一点に集めた。


集めた場所は、フィルが過ごした大事な家、紅魔館。


今回の件は紅魔館にも大きな影響があるから私が直接話して場所を借りることにした。


紅魔館は幻想郷の中でも中々に広いし


結構な頻度でパーティーを開催している関係上


この紅魔館に堂々たる面子を揃えたところで違和感も無いと判断したから。


 


人里の人間達も、野良の妖怪達も、紅魔館でのパーティーが多い事は把握済み。


だから、一気にこの一点に色々と集めたところで異変に気付く妖怪や人間は少ない。


 


「揃ったわね」


「……」


 


フィルの件で重要な話があると告げただけでこれだけ来るとはね。


私からの召集という部分がかなり大きいのかも知れないけど


色々な場所にあの子を飛ばして交流させたのは正解だったわね。


地霊殿と地底の妖怪まで今回は特別に地上へ出て来て貰ったし。


 


「集まってくれて感謝するわ」


「お礼は必要無いわよ、あなたがこれだけのメンバーに声を掛けた。


 それだけで、この事態の重大さは簡単に測れるわ」


 


月の賢者まで動いてくれたというのは結構予想外だったわね。


恐らく、フィルが解決した月の異変から申し訳ない気持ちがあったのでしょう。


あの子を強引に巻き込んだわけだからね。


 


「八雲紫、面倒な前置きは必要無いわ! フィルは何処!」


「恐らく今は宇宙空間でしょうね」


「な! 何を馬鹿な! そんなのフィルが死んじゃ!」


「いえ、あの子は死なないわ、そして今、こっちに向ってきている」


「……」


 


これが本来、どれ程異常なことなのかは月の賢者には分かりきってるとは思う。


特別な力がない状態で生物が宇宙空間から地球へ帰還なんて不可能なんだから。


 


「私の予想だと、数日の間にフィルは幻想郷に戻ってくるわ」


「どれ程離れた場所に放置したかによるけど、それよりも異常なのは


 何でその子は宇宙空間でも活動できるの? そんな能力がありそうには見えなかったけど?」


「まずはそれを話さないと駄目でしょうね、事態の深刻さを伝えるためにも。


 フィル、彼女の正体は神殺しの魔狼、フェンリルの血を引く半獣」


「はぁ!?」


 


私の言葉にいち早く反応したのは吸血鬼だった。


この中では1番察しが遅いとは思っていたけど少々予想が外れたわね。


 


「あの子がフェンリル? 北欧神話の」


「そうよ、よく知ってるわね」


「……まぁ、縁があってね」


 


そう言えば、彼女のスペルカードにはグングニルがあったわね


だとすれば、察しが1番早いのも納得かしら。


 


「……それだけなの?」


「え?」


 


私の言葉を聞いて、幽々子が怪訝そうな表情を浮かべる。


私には何故彼女がフィルの正体に疑問を持ったのかは分からなかった。


 


「いえ、何でも無いわ…所詮懸念でしか無いし」


「…?」


「なる程…だから彼女が我々の元に来たとき、我々は動きが取れなかったのか」


「妖怪の山にフィルさんが姿を見せたときですね。


 考えてみれば、あの時…他の神々の姿は見ていなかったわ。


 しばらく一緒に行動はしたと思うけど…」


「えぇ、恐らく他の神々は本能的にフィルに恐怖し、身を隠していたのだと思うわ。


 でも、八坂の神々は自らの神社を守る為に立ち向かおうとした…そんな所かしら」


「あそこが無くなってしまったら困るからね」


「私としても困るからね、あの時は神奈子に全部任せればよかったと後悔したけど」


 


妖怪の山に向わせたのは少し失敗だったかも知れないわね。


大事には至って無かったみたいだけど。


 


「しかしなる程…それだけの血を引いていたとすればあの実力は納得だな」


「通りで儂らがバトルロワイヤルで挑んでも敵わなかった訳じゃ」


「ですが、普段のフィルさんはとてもじゃありませんが凶暴には見えませんでした。


 それは何故ですか? それ程に恐ろしい魔狼の血を引いているのであれば」


「……それは、フィルが元々あんな風に優しい性格だったからね」


「でも、そうなると違和感があると私は思うわよ?


 夢世界の彼女はかなり荒れていたように思えるけど?」


 


夢世界のフィル…私も現世に出て来た夢世界のフィルとは接触した。


確かに現実世界のフィルとは似ても似つかないほどに凶暴な性格だった。


でも、それでも根本はフィルなのだと言う事を理解する事は造作なかった。


あそこまで殺意の塊だった彼女が、怨みを晴らすために復讐の悪鬼となっていた彼女が


人里の人間を、誰1人殺していなかったんだからね。


 


「えぇ、夢世界の彼女は自分の記憶を持ち合わせているからね」


「フィルの過去に何があったって言うのよ! あんたがずっと隠してた過去!」


 


このメンバーの中で最も動揺して居るのはレミリアね。


あの子の事をペットなんて言ってたけど、その実はやはり家族として大事にしてたのね。


ま、彼女がそんな性格だと知っていたからこそ、私はフィルを紅魔館に預けたままにしていた。


この中では最も実力も無くて、子供っぽい彼女ではあるけど


それ故に、彼女は信頼に値する。純粋で素直になれないお馬鹿な吸血鬼。


 


「教えなさい、あの子の主として、私は知っておかないといけないの!」


「……良いでしょう、少しだけフィルの昔話をしてあげましょう。


 あの子の両親から聞いた話でしか無いんだけどね」


「……教えて」


「この話を聞けばきっとすぐに理解できるわ。


 でも勘違いしないで欲しい、記憶が無い今までの彼女こそ本当の彼女なの。


 最悪の時間に呑み込まれなかった彼女…だから、あの子は救えるわ」


「良いから教えて、フィルの過去を! 私は知る必要がある!」


「そうだよ! フィルが抱えてる辛い思いを私達が一緒に背負うんだから!」


「妹までそんな風なのね。いや、それもそうか…あの子と一緒に長く過ごしてきたんだから」


「私も興味があるわ、その昔話に」


「全員そうなの?」


「……」


 


全員が無言で頷いた。普段は変わり者ばかりだけど


こう言う場面では案外そうじゃ無いのね。その方が、私も嬉しいけど。


 


「分かったわ、話しましょう…私が知ってる全てを」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ