必死の攻防
「早速後半戦よ!」異界「地獄のノンイデアル弾幕」
私が少し呼吸を整えるとすぐ後半戦が始まった。
自分を中心に弾幕を展開して来ている。
その弾幕は不規則で密度も少し濃いように見える。
弾幕がへにゃへにゃと動き、こちらに向かってくる。
中心付近ならその不規則性はあまりないように見えるけど
そこは弾幕の密度も濃く、避けるのはしんどそうに見えた。
かといって、この不規則な弾幕を避けるのはしんどい。
「うぅ!」
何発か擦りながら、この弾幕を避ける。
不慣れな空中戦…地上戦でも苦戦しそうな弾幕なのに
空中戦での攻撃というのがより辛い。
それでも避けないといけないんだから避けるしか無い!
「少し息切れしてきたんじゃ無いの?」
「ま、まだまだです!」
「そう、なら楽しめそうね」
そのままこっちも弾幕を撃ち込んで、何とかこの状況を打破することに成功。
この弾幕を避けきることが出来たのは素直に嬉しかった。
「そう来なくっちゃ、なら次ね」 地球「地獄に降る雨」
頭に乗せてる赤い珠を今度は地球の珠に変えて
再び青い髪の毛に変化した。
そしてスペルカード宣言のすぐに私の背後から小さな弾幕がいくつも飛んで来た。
密度は少しバラバラ。だけど、速度はそこまで速くないし
隙間もいくつもあるから避けるのは簡単だった。
その間、ヘカーティアさんは私に向けて小さな弾を飛ばす。
あまり意味の無い小さな弾…それに、背後から来る弾も遅い。
この位の攻撃なら簡単に回避出来るけど。
「あ!」
でも、ヘカーティアさんの背後にまで到達した弾が弾けて
レーザーに変化し、こっちに戻ってくる。
私から見たら、何だか雨のように見える。
レーザーが不規則な感覚で降る、雨。
じゃあ、私の背後から飛んで来た弾は水蒸気で
ヘカーティアさんの背後が空。そこから変化して地上に雨が降る。
そんな感じのスペルカード。相手は神様でこっちは人間。
そんな風に思わせてくるような構図。
だって、ヘカーティアさんの背後で水蒸気が雨に変化して降ってくるんだから。
「くぅ!」
そして、降ってくるレーザーはまさしく雨と言わんばかりに速い!
背後から不規則に飛んで来る小さな弾幕を避けながら
ヘカーティアさんが撃ってくる行動制限の弾を避けつつ
正面から飛んで来る速いレーザーも回避する。
3つの情報を処理しないといけない。
それも、正面と背後の2方向をしっかりと確認しないと行け無い状態。
正面を見ながら背後を見ることは出来ないし
当然、背後を見ながら正面を見ることも出来ない。
すぐに切り替わる2つの情報を素早く確認し理解して避ける必要がある。
視線をさほど動かさないで上下左右が見られるならまだ簡単だけど
同時に見ることが出来ないと言うのは凄く辛い!
「へぇ、少し苦労しながらも避けてるわね」
「うぅ!」
な、何とかこの弾幕も回避する事が出来た。
服はボロボロになりつつある。
「さぁ、今度はどうかしら!?」月「ルナティックインパクト」
「なぁ!」
ヘカーティアさんの髪の毛の色が金色に変る。
そして、自分の手元に巨大な月を取り出した。
そして、その巨大な鉄球のような月をこちらに向けて投げてくる。
すぐに移動し、その月に潰されること無く回避することが出来た。
しかし、ある程度進んで壁のような場所に衝突するとヘカーティアさんの
背後からいくつもの星形弾幕が落下してくる。
「それ!」
「ひゃう!」
壁に衝突したはずの月が何の力も無くこちらに向かって飛んで来る。
誰もあの月には触れていない。それなのに月が私の方に飛んで来た。
その攻撃を避ける事が出来たけど、やっぱりヘカーティアさんの背後から
飛んで来る…いや、落下してくるような星形弾幕が私の動きを制限する。
だけど、まだ間隔がある。これなら避ける事は!
「さぁ、もう1個よ!」
「なん! うわぁ!」
い、1個でもかなり苦労するのに2個目なんて!
それに、その月も同じ様に壁に衝突すると星弾幕が降ってくる。
うぅ! あの壁みたいなのが無かったら良いのに!
さ、最初からあったのかも知れないけど…動きを制限されるのはキツい!
それに、あの壁みたいなのが無ければ、あの大きな月はすぐに何処かに行くのに!
何処か行くことが無くても、多分星の弾幕は降ってこないんじゃ無いかな!?
「そらそら!」
「うぅ!」
2つの巨大な月が私へドンドン飛んで来る。
こっちのショットはあの月に阻まれるみたいで
あの月を避けているときにヘカーティアさんへの攻撃が阻害される。
ただでさえ辛いこの状況が、このせいで長期戦になっちゃう!
は、早くこの攻撃を止めないと! その内、捕まる!
「さぁ、おまけよ!」
「嘘! ひゃぁ!」
み、3つ目! 月の弾は全部私をめがけて飛んで来る。
だから、飛んで来るタイミング次第だと普通よりも早く壁に当って
空から降ってくる弾幕の間隔が変る!
一定のリズムを保てない! 不規則に落下してくる星の弾幕!
不規則に飛んで来る3つの巨大な月の鉄球!
う、うぅ! い、今までで1番辛いかも知れない!
「うわ! ひゃう! あぶな!」
うぅ! 落下してくる弾幕のせいで動きが!
す、スペルカードを使いたいけど…まだ!
「おっと! へへ、良く凌いだわね! ならば!」
「ヘカーティア、今度は私が」
「くぅ! またかぁ…仕方ないわね」
な、何とか耐えきったけど…は、はぁ、あ、危なかった。
もう服が凄いことになってるよ…色んな所が傷だらけだよ。
あ、後で縫わないと…でも、怪我はしてない?
血は全く出てないし…あ、最後に擦った傷がもう治ってる…
いやまって私! 今はそんな事を考えてる場合じゃ無い!
「さぁ、逃げ惑って頂戴」「人を殺める為の純粋な弾幕」
「え!?」
純狐さんが放ってきた弾幕には美しさなど全く無かった。
相手を楽しませるつもりも、相手と遊ぶつもりも無い。
スペルカードの名の通り…シンプルに…ただシンプルに
人を…相手を殺す為の弾幕! 隙間が無い!
煌々と輝く真っ赤な弾幕に隙間は一切見えなかった。
そう、その弾幕は純粋な殺意の表れに見えた。
相手を殺す為の、純粋な殺意!
「ふふ」
「へ?」
でも、ある程度近くに来ると、その輝きが薄れ
中くらいの弾幕が見えた。その弾幕と弾幕の間には
確かな隙間が見える! ここを潜れば避けられる!
「うぅ!」
私は身体を動かし、無理矢理その隙間を通った。
すぐに第二波が飛んで来る。最初と同じく避ける隙間が見えない弾幕。
だけど、ある程度接近するとそのさっきと同じく隙間が見える。
何でこんな弾幕を? こっちを威嚇するための弾幕…いや、違う。
何というか、最初は純粋な怒りを表わして居たのかも知れない。
だけど、私の方に近付くにつれてその怒りが収まり殺意が消える。
この弾幕…今は絶対的な敵意を私に向けていないと
そう告げているように感じた。
私のただの勝手な妄想だけど…だけど、少しは楽しんでる。
純狐さんも、少しはこの戯れに興じているって事かも。
「あら、避けられちゃったわ」
「じゃ、私の番ね」 「トリニタリアンラプソディ」
ヘカーティアさんの姿が消えたと言う事は耐久スペル。
彼女が消えてすぐに青いトライアングルみたいな物が出て来た。
そのトライアングルは最初は巨大だけど、すぐに縮小して
完全に消えた地点から弾幕が全方位に射出された。
あのトライアングルの中心に居たら間違いなくやられちゃう!
「うぅ!」
青いトライアングルは中心、上の左右など
色々な場所に出現している。
だけど、出現パターンは決っているようだった。
最初破裂した瞬間は少し大きな弾幕が四方に展開してたけど
すぐに消えて小さな弾幕だけが飛んで来る。
それを避けていれば問題無いけど
中くらいの弾幕があるタイミングだと確実に当る。
つまり、トライアングルが消滅する瞬間にその近くに居たら
私は確実に被弾してしまうって事。
「うわ!」
そして、ある程度の時間が経過すると
トライアングルが壁際にばかり展開するようになる。
だけど、トライアングルの数が増え、今は3つ。
「でも、これ位なら」
次は4つだけど、これ位の密度なら簡単に避けられる。
そして、4方向から展開する弾幕が消えると静かになる。
だけど、その静寂はすぐに打ち壊され、今度は色が変り
緑の弾幕が私を中心にして小さくなってくる。
「もしかして!」
私はすぐに動いて緑のトライアングルを回避するけど
すぐに次のトライアングルが私を中心に展開する。
そうだ、これは! この緑色は私を追いかけてきている!
私が避けても緑色が消えたときに生じた弾幕は飛んで来るから
誘導していかないと飛んで来る弾幕に当っちゃう!
「よし、攻略法が分かれば!」
私は緑の弾幕を誘導することにした。
あまり早く距離を取らず、必要最低限の移動で留める。
そうすれば弾幕が散らばって、動き難くなることも無い!
「うわ、うわ、うわ! うわわ!」
だけど、緑色が出てくる間隔がドンドン、ドンドン速くなる!
凄い速い! 凄く速いよ! まださっきの緑色消えてないよ!
い、急ぎすぎないで避けながら進まないと!
「ひゃうぅ!」
でも、プレッシャーが! プレッシャーが凄い!
で、でも、な、何とか逃げ切ることが出来た…
「こ、今度は何?」
今度は赤いトライアングルが出てくる。
緑とは違って私を追いかけてくることも無いし
青いのと違って真ん中に展開することも無く四方のみに展開している。
「あ、もしかして」
赤いのが砕けて出て来た弾幕を見て、どう言う攻撃か予想が出来た。
この攻撃は弾幕の弾速が遅い。つまり、ゆっくりと行動を制限してくる弾幕!
現に、赤いのが出てくる間隔が少しずつ加速していって
私が逃げられる範囲がゆっくりと減っている。
だけど、そろそろ耐久時間もあと僅か! 粘りの勝負!
もし、これで青と緑と赤のカラフルなトライアングルが出て来ていたら大変だった!
青い弾の速い弾速、緑の弾幕からも逃げないといけなくて、更には赤の弾幕が
逃げる範囲を確実に狭めてくる。そんなの避けられるのか疑問すら抱くよ。
「よし!」
「やるわね…じゃ、やりましょうか…純狐」
「えぇ、そうね」
あ、あれ? 何で2人同時に私の前に出て来たんだろう。
「え? いやま」
「さぁ! これが最初で最後よ!」
「見事避けてみなさい!
「最初で最後の無名の弾幕」
2人が同時にその言葉を呟いた。
そして、やっぱり同時に2人が弾幕を展開してくる。
純狐さんの高密度の弾幕にヘカーティアさんの鞭のような弾幕!
そ、そんな2つの弾幕を同時に出してくるなんて!
そ、そんなのあり!? た、確かに前にお嬢様とフランお嬢様の喧嘩の
板挟みに遭って、こんな状況になったけど!
今回は違う! 2人とも私を攻撃しているんだから!
だ、だけど! やるしかないんだ!
「負けません! 例え相手が2人でも!」
「さぁ、果たして2人なのかしら? ま、今は2人以上は無いけど」
「うぅ!」
2人の攻撃を避けながら、私は攻撃を始めた。
こう言う場合、片方を撃破出来れば大分簡単になるはず!
私が狙うのは純子さん! だって、こんな高密度の弾幕を避け続けるのは辛い。
ヘカーティアさんの鞭の弾幕を避けるのも大変だけど
こっちはまだ隙間が大きいから避けやすい。
だから、まずは純子さんを倒さないと!
「…あら、私を狙うのね」
ある程度攻撃を当てていると、弾幕が一旦消えて次の弾幕…
いや、同じ? でも、純子さんの出してくる弾幕の間隔が速くなった?
そ、それでも純狐さんを先に倒さないと苦労する!
「ふふ」
うぅ! また間隔が…狭く…いや、速くなってるんだ!
「くぅうう! それでも私は!」
私はそのまま攻撃を続けた、自分の全力を込めてひたすらに攻撃を続けた。
「……ふ、どうやら私の負けみたいね」
な、何とか純子さんは攻撃を止める。
同時に、ヘカーティアさんの攻撃も止まった。
「おめでとう。あなたの勝ちよ」
「はぁ……はぁ……」
よ、良かった…か、勝てた!




