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狂気染みた夢


夢の世界、前に1度行ったけど、記憶は殆どない。


確かあまりよく分からない世界だったと思うし。


 


「おやおや、また来てしまったのですね……覚悟は出来てますか?」


「え、いやあまり…」


「ふむ、しかしまぁ、あなたも夢を見るようで安心しましたよ」


「え?」


 


出会ってすぐそんな事を言われたわけだけど


私にはなんの事かさっぱり分からなかった。


私はちゃんと夢を見るはず…でも、あの言い方だと


私は今まで夢を見ていないと言う事になる。


そもそも、この人は何で夢を知ってるの?


 


「しかし、今まで夢を見なかった理由…ようやく分かりましたよ、あの夢で」


「え?」


「そう、私はあなたを見ていた、あなたの夢を知ってた。


 夢の世界における、あなたを知っていた…でも、あまりにも


 かけ離れていて、私はその姿のあなたをあなたと認識出来ていなかった。


 だから今まで、私はあなたの夢を知らなかったと感じていたのですね」


「な、何を言ってるんですか? 私には何も」


「……夢の世界では、大体の妖怪も人も強気になります。


 怠けたり、酷い状態に陥ったりする物です。


 その中でも、あなたはより一層酷かった」


「……」


「あなたは夢の世界で自分自身を否定していたのですね。


 だから、夢の世界におけるあなたと現実世界のあなたはあまりにも違っていた。


 顔も違っていたし、何より、夢の世界において、あなたには耳も尻尾もない。


 それは、あなたがその耳と尻尾を嫌っていたから、だから夢の世界ではなかった。


 姿も違い、性格もまるで違っていては、流石の私でも見抜けませんでしたよ」


「何を言ってるんですか? 私は何も」


「えぇ、そうでしょう、あなたは何も知らないし何も知ろうとはしていない。


 しかし、それは変わり始めている、私があなたの夢を知っていると言う事は


 あなたは夢の世界においてでも、少し自分の容姿に抱き始めたと言う事。


 それはつまり、あなたが自分に興味を抱き、今の姿に自信を持ち始めたと言う事。


 それはあなたにとっては大きな1歩でしょう、非情な現実を知る上で


 あなたが手に入れるべき、大事な要素…自分を見ること」


「何を!」


「……八雲紫は殆どの人間に事実は告げていないようですね。


 しかしながら、私は夢を通し、あなたの事を知っている。


 ご安心を、誰かに話したりはしません、まだ早いことでしょう?


 私としても苦労する話なので、出来れば広まるのは後にして貰いたい。


 しかし、本当に同情しますよ、あなたの生い立ちは」


 


うぅ…あ、頭が…こ、ここで? 月は何処にも…


 


「……同情だって? 下に見やがって偉そうに、お前に何が分かる!」


「…もう1つの人格ですか」


「うぅ…」


「しかし今回は元の人格も起きている様で、そんなヘマをする程


 私の言葉はあなたの心を抉りましたか?」


「…夢の妖怪、お前には何も分からない、僕達の気持ちは分からない。


 例え僕達の夢を見ていたとしても、お前はどうせ見ているだけ。


 見ているだけの存在が、相手の気持ちを理解できるはずもない。


 理解しようとするな、お前らに出来るのは押しつけだけだ、八雲紫みたいにね。


 だが、その押しつけが必ずしもマイナスに展開するわけじゃない。


 少なくとも無意味な同情なんぞよりも何千倍も価値がある。


 僕はね、同情されるのは嫌いなんだ、何も知らない奴が偉そうに喚くのは嫌いだ。


 今度、不用意な言葉を述べれば…次は殺す、四肢をもぎ取り、腸を抉り出し


 その細首を噛み切り、心臓を抉り出し、頭部を噛み砕き、吐き捨てる」


「……」


 


ドレミーさんの表情が少しだけ変る、私はあんな言葉を言うつもりは無い。


それでも、口が勝手に動く…何で? 私に何が起こってるの?


2重人格なのは紫さんから教えて貰った、でも、こんなの知らない!


 


「……分かりました、不用意な言葉は言いません」


「……あ」


 


あ、頭痛が消えた…意識もハッキリ戻った、あの間に何が?


何だったの? さっきのが私のもう1つの人格?


でも、前に声を聞いたときとは全然違った。


完全な怒りを、ひたすらに吐き捨てていた…


 


「不用意な言葉は止めた方が良いですね、侮ってましたよ。


 本当、肝を冷やしました…」


「すみません」


「いえいえ、不用意だったのは私の方です。


 さて、本題に入りましょう。寄り道が過ぎましたしね。


 …では、何故あなたは再びこの世界へ来たのです?」


「夢の世界の月、私はその月に囚われた月人を救いたいんです。


 このままだと幻想郷が大変な事になります、だから」


「左様ですか……良いでしょう、案内します」


「良いんですか? 大体こう言う場合、戦いになりそうなんですけど」


「いえ、私としてもこの問題は早急に処理したいのですよ。


 本来ならば力試しとして戦いますが、今回は特別です。


 あなたの実力も、あなたの正体も私は知っています。


 ただ知ってるだけですがね、先ほどもああ言われましたし


 同情だとか、そう言う事はしませんよ、冗談か本気かは分かります。


 流石にバラバラにはなりたくないんですよね」


「…ありがとうございます」


「では、こちらへどうぞ」


 


私はドレミーさんに案内されて、夢の世界の月がある場所へ移動した。


今回の事でまた分からない事が増えたけど…それを考えるのは後でいい。


今は幻想郷を守ることを考えよう…私の事は私が1番分かってないんだから


私がどれだけ必死に考えても、分かる筈が無いんだから。

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