お嬢様との交流
咲夜さんの料理は本当に美味しかった。
量も沢山あって、私もお腹いっぱい食べる事が出来た。
そして、料理を食べ終わった後、私はお嬢様に部屋に来るよう言いつけられた。
うーん、何か悪い事をしたかな…ま、まさか、フランお嬢様の暴走に気付いて…
ど、どうしよう、あの部屋であんな事があったってバレてたら殺されちゃうよ!
い、いやまって…冷静になろう私、バレてないはずだし。
よし、とりあえずお嬢様のお部屋の前に来たぞ。
確かノックは3回だったかな、いや、4回だったかな。
うーん…確か4回だったはず、親しい仲なら3回だっけ。
とにかくノックだ、今は4回で。
「どうぞ」
「し、失礼します」
お嬢様のお返事が聞えて、私はゆっくりと扉を開けた。
そこにはお嬢様が普段とは違うラフな格好で座っていた。
普段と違ってナイトキャップを被っていないし
服もドレスじゃなくてキャミソール、多分下着用。
いつも威圧感があるけど、お部屋の中では見た目通りの女の子なんだなぁ。
…でも、何か足りないような…何だろう、もっとこう黒い何かがあった気が…うーん…
「よく来たわね、フィル、さ、入りなさい」
「は、はい、失礼します」
何が足りないかが出て来ないまま、お嬢様に言われて
部屋に入り、ゆっくりと扉を閉めた。
「そんなガチガチに緊張しなくても良いじゃないの
別に文句があるから呼んだ訳じゃないんだから」
「そうなんですか?」
「そりゃそうよ、この格好を見れば分かるでしょう?
何処に誰かを怒るために下着姿で部屋に待機してる奴が居るのよ」
確かに相手を怒るならもう少し身だしなみは厳かだと思うし。
でも待って、じゃあどうしてお嬢様は私を呼んだの?
それも下着姿で部屋で待機して…
「実はね、私はフランと比べてあなたとの交流が少ない気がしてね。
あなたのご主人は私だというのに、その私が妹よりも
自分のペットと交流がないって言うのもどうかと思ってね。
あなたの前では一瞬も油断をした姿は見せていないし
流石に距離を取られたりするかも知れないしね。
だから今回はあなたと交流をしようかと思って呼んだの」
「そうなんですか? でも、そんな事を」
「いやほら、何か癪じゃないの、妹に何かで劣るって」
妹が居ない私には分からない感情だけど…そうなのかな。
お姉ちゃんも居ないからどうなのかも聞けないんだけど。
そう言う物なのかな…?
「と言う訳で、ほら、こっちに来なさい」
「は、はい」
うーん、し、失礼がないようにしないと。
と言うか、なんでベットの上で…まぁいいや。
「ほら、座りなさい」
「え? 良いんですか?」
「言ったじゃないの、交流のために呼んだんだって」
「は、はい…では、失礼します」
お嬢様が座ってるベットに自分も座った。
凄くふわふわのベットだ、私のお部屋のベットもふわふわだったけど
お嬢様のベットは更にふわふわ、当たり前だよね、紅魔館の主だもん。
何処の部屋よりも豪華なのは当たり前だよね。
「……」
「え、えっと…」
「えい」
「はひ!」
し、尻尾に抱きついてきた! え!? 何で!? どうして!?
「はぁ、実は何度かあなたの尻尾をこうやって抱きしめたかったのよねぇ
本当ふわふわだわ、八雲紫の式も滅茶苦茶尻尾あったけど
あなたの尻尾は1本でもこんなに暖かくてふわふわなのねぇ」
「え!? え!? あ、えっと、何ですかこれ! ドッキリ!?」
「うー…気持ちいい…」
「え!? え!? え!?」
何これ何これ!? どう言うこと!? どうなってるの!?
何でお嬢様が私の尻尾なんかに抱きついてるの!?
意味が分からないよ! 尻尾にそんな魔力が…!
だって、お、お嬢様が今までと雰囲気違うもん!
何か可愛い女の子になってるもん! どう言うことなの!?
「うー…このままちょっと寝たいわね、ほら、ベットに転がってよ」
「え!?」
「良いから転がって」
「わっぷ! 放り投げること無いじゃないですか…」
「さっさと転がらないあなたが悪いのよ、よいしょ」
私の後ろに回って、私と自分に布団を掛けた後
お嬢様はさっきと同じ様に尻尾を抱きしめた。
だ、抱き枕!? 私の尻尾は抱き枕!?
「良いわ…この尻尾良いわ…肌触りも良いし、匂いも良いしね」
「あの、それ私の尻尾です、肌触りはまぁ、良いですけど
匂いはあまり自信が無いんですけど…」
「まぁ、温泉に入ってなかったら良い匂いはしてないかもね」
「ま、まぁ」
紅魔館に戻ったとき、結構長い間お風呂に入ってなかったからなぁ。
お風呂は好きでも嫌いでも無いんだけど、なんで入ってなかったんだろう。
「それにしても、あれね、尻尾増やせたりしない? 9本くらい」
「ら、藍さんじゃないので、9本は…と言うか、尻尾は増えませんよ…」
「まぁ、1本でも十分気持ちいいんだけどね」
「…と言うかお嬢様、この状況は何でしょう
何でお嬢様と私がお嬢様のベットで一緒に寝て
お嬢様は私の尻尾に抱きついているのでしょうか…」
「交流よ、交流、大体犬って主と一緒に寝るじゃないの」
「いやまぁ、そうかも知れませんけど…私、一応人型ですよ?」
「大丈夫よ、ペットはペットなんだから」
うーん、まぁ、燐さんも空さんもペットって言われてたし
やっぱり人に変化出来る動物ってペット扱いになったりするのかな?
いや、それはお嬢様やさとりさんくらいなんじゃないかと思いたい。
「うーん…でも…」
「……」
「お、お嬢様?」
「……すぅ」
ね、寝てる!? がっしり尻尾を掴んだままの体勢で寝てる!?
待って待って! 尻尾が着脱式なら良いけど、この尻尾にそんな機能ないよ!
…ッハ! そう言えばお嬢様やフランお嬢様ってあの翼、寝るときどうなるの!?
そう言えば、部屋に入ったときに何かが足りないと思ったけど! そうだ! 翼だ!
あのコウモリみたいな大きな翼がなかったんだ!
ど、どうして!? まさか着脱式!
「え、えぁ…あ…あぁ」
急いでお嬢様の方を見て、翼がある筈の場所をギリギリで視認した。
そこにはコウモリの翼が小さくなって背中に付いていた。
なる程、あの翼、大きくしたり小さくしたり出来るんだ。
安心したよ、着脱式だったらコスプレじゃんってなるもんね。
でも正直、耳と尻尾は着脱式の方が良かったなぁ…何でそう思うかは分からないけど。
「痛て」
何で自分の耳を引っ張ったんだろう、取れるわけないのに。
…まぁ、これが私なんだし、着脱式じゃ仮装してるだけだしね。
きっと私は仮装だった方が良かったんだろうけど。




