ありえない光景
はぅ…温泉気持ちいいな…でも、やっぱりこう言う状況だと。
「しかし、今日は珍しいですね、紫様」
「たまにはこう言うのも良いでしょう?」
「妖怪の賢者と同じ湯船というのも、普通は体験できませんよね…」
「誇らしくは無いけどね」
「あら、失礼しちゃうわね、もう少し位誇りなさいな。
そもそも、幻想郷で私と交流があるというのは
かなりのアドバンテージになるわよ」
「月の賢者と交流がある方が、優位性は高そうだがな」
「利用されるだけよ、そっちは」
「あなたも同じでしょう?」
「あら、それはどうかしら」
…やっぱり、最初に目が行くのは胸なんだよね…
うぅ、藍さん、紫さん、美鈴さん、幽々子さん本当に大きいなぁ…
「あらあら、お胸を気にしてるのかしら~?」
「へ!? な、なんの事でしょう!?」
「表情に出てるわよ、隠し事が下手ね~
でも、安心しなさい、あなたより小さいのは沢山居るわ。
妖夢とか小さいわよ」
「幽々子様! 何を言ってるんですか!?」
「そんなに怒らないで、事実を述べたまでよ」
「幽々子様! 私だって気にしているんですから!」
「駄目よ、受け入れるのも大事な事なの
あなたはもうそれ以上」
「や、やめてください!」
「まぁまぁ、剣士としては小さいほうが有利でしょう?
大きくても動くとき、邪魔になるだけよ~?
攻撃を回避するのも難しくなるでしょうしね~」
「それでもやっぱり」
「胸はどうでもいいと思うけどなぁ、やっぱり気になるの?」
「それはもう…大事なところです」
「ま~、吸血鬼2人はまだまだ成長するでしょうけどね~
妖夢はもう駄目よ」
「幽々子様ぁ!」
「あら~、怒られちゃうわ~」
「妖夢、主に手を出してはならないぞ」
「出しませんよ」
幽々子さんと妖夢さんの会話は仲が良さそうに聞こえた。
幽々子さんは妖夢さんをからかうのを楽しんではいるけど
完全に貶しているわけでもないし、蔑んでるわけでもない。
妖夢さんの返事も怒ってるようではあるけど、楽しんでる様に思えた。
この2人の関係は当たり前で、このやり取りもきっと当然の事なんだ。
「主と従者はあんな関係が理想なんですね! 私も頑張らないと!」
「いや、頑張る必要ないと思うわよ」
「え?」
「何でもないわ」
うぅ、まだまだ駄目だと思うのに、なんで頑張る必要がないんだろう。
「…しかし、本当にまた妙な光景よね、これ」
「うぅ! 熱い…」
「チルノ、ぬるま湯で熱いとか言ってたら駄目なのだ」
「いや、だって熱いじゃん! あたいには熱い!」
「ぬるすぎると私は思うのだ」
「熱いじゃん!」
「チルノちゃん、熱いのはわかるけど、湯船がどんどん冷えてるんだけど…」
「このままだと水になる…」
「まだまだ熱すぎる! あたいはもっとこの温度を下げる!」
「やめてぇ!」
…チルノさんにはぬるま湯でもつらいみたい。
氷の妖精だったっけ、見た目凄く涼しいし、やっぱり氷だとぬるいでも熱いんだなぁ。
「だな、なんでこんな騒動になるんだよ、温泉の魔力か?」
「どっちかというと、あの狼の影響がデカいと思うわ」
「そうか? 確かにフィルは結構強いが
強さだけで周りを惹き付けることは無理だろう」
「強さではなく性格でしょうね」
「最もこの状況に貢献してるあなたが言うの?」
「私はきっかけを与えただけですわ」
「そうでしょうけどね」
私がこの状況に影響を与えてるってどういう意味だろう。
「しかし、本当に妙な手を考えたわね、あなたも」
「何の話?」
「白々しい、理由はわかるけどね。
…で、本当に上手くいくの? 私は難しいと思うけど」
「賭けというのは勝率が高い方に賭けるものよ」
「どっちも勝率が低いときは?」
「勝率を引っ張り上げるまでよ」
「あなたらしいわね」
難しそうな話をしているのはわかる。
その話の中心にあるのも私だという事もなんとなくわかる。
でも、私に関することで難しいところって何?
……あの時の暴走? それとも…記憶がない所?
幻想郷に来た時も記憶がなくて、永琳さんに呼ばれて
月へ行った後も記憶がない…満月の夜も少し記憶があいまい。
…ここからわかること、今のところ、私が分かること。
最初の暴走は色々な話を聞いてみると、迷いが消えたのが原因。
相手を倒すことに迷いを抱いてた、その迷いが切れたのが原因。
その時以降、あまり攻撃に対して迷うことがなくなった気がする。
…そして、記憶に関する点…私は月を見ると記憶…いや、意識が飛ぶという事。
満月の夜に記憶が少し曖昧なのも、意識があいまいだったから。
というか、頭が痛かったから。
月へ向かった時、なんだか月が見えてからの記憶があいまいだった。
という事は、月を近くで見たから意識がなくなったってことかな。
じゃあ、出来れば月は見ないようにした方が良いのかもしれない。
「…で……らー…」
「今は……ないわ」
「そう」
小声で少し聞き取りずらかった、私は耳が良いと思うんだけど
流石にあそこまでひそひそと話をしていると聞こえない。
もしかしたら、大事な話をしていたのかもしれない!
「ところでフィル」
「はい、なんでしょうか」
「あなたって武器とか使わないの?」
「え? なんの脈絡もなく、なんでそんな話に?」
「いや、あの庭師を見てて思ったのよね。
そこから従者って考えて、大体が武器を使ってる気がしてね。
あの兎は弾丸だったけど…確か銃とかだったっけ。
で、あの庭師は剣」
「でも、藍さんは何も使ってませんよ」
「あぁ、そうなの? あの九尾の事はよく知らなかったから」
「えっと、藍さんは武器を使いません」
「ふむふむ、でも私としては武器を使うフィルって面白いと思うのよ。
私は槍、フランは大剣、咲夜はナイフ、パチェは本、小悪魔と美鈴は仲間外れになるわね」
「えぇ!?」
「いやでもほら、剣を使って戦うフィルって面白そうじゃない?」
「フィルは武器がなくても十分強いと思いますよ。
武器も牙と爪がありますし、格闘術も美鈴以上です。
まぁ、技術面ではいまだ美鈴の方が上ではありますが
攻撃力はフィルの方が上かと」
「フィルさんの一撃はすごいですからね、今度、私の体術を教えましょう。
あなたの身体能力と私の技術が合わされば、相当だと思いますし」
「はい! 今度お願いします!」
美鈴さんに色々と鍛えてもらうの、すごく楽しみかも!
「…大丈夫なの?」
「…多分」
「フィルがこれ以上強くなると、私の立つ瀬がなくなりそうだぜ。
こりゃあ、私も鍛えないと不味いかもな」
「もうすでにないと思うけど?」
「いや、まだ私の方が上だぜ! 弾幕ごっこは」
「当てれないでしょう?」
「あれはフィルがおかしい」
「それ、上じゃないわよ」
「う…まぁ、私はまだまだ強くなるから問題ないぜ」
「…私も少しは鍛えた方が良いかもしれないわね」
「霊夢!? 何どうしたんだ!? 体調が悪いなら早く言えよ!」
「なんでそんなに心配してんのよ!」
「いや、だって霊夢が自分から鍛えようとか…明日は隕石が降るな」
「隕石が降ってきても私がキュッとしてドカーンだよ」
「そういえば一度やってたわね…」
「やっぱりフランの能力は化け物だぜ…」
ありとあらゆる物を破壊する程度の能力…すごいよね。
あ、そういえば能力を考えないといけないのか…
うぅ…そこも決まってないなぁ…私の能力って何だろう…
足が速い程度の能力とか私っぽいかも!
でも…なんだか格好悪いなぁ…もっと考えよう。
スペルカードも考えないといけないし、やること多くて大変だよ…
でも、やっぱり修行もしたいし…うん、頑張ろう。
考えてみれば、色々と言われた後に修行したり色々な場所に行ったり
外の世界に行ったり、月に行ったりで何かを考えたりする時間がなかったし
しばらくの間はお仕事をしながら色々と考えようかな。




