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純粋な殺し合い



「喰らいなさい!」


「ん」


 


あえて攻撃を受けてみた、その憎しみがどれ程かに興味があった。


何処まで本気なのかに興味があった…まぁ、相当本気みたいだね。


 


「あっさり当ったわね」


「あえてだよ、あえて、ラスボスが見せ場もなく敗北じゃつまらないだろ?」


「…しかし、この傷を受けても、お前からは死穢の匂いを一切感じない」


「死なないからね、この程度じゃ」


 


確かに僕の腹からは大量の血が出ている、多分内臓まで届いているだろう。


1度、臨死体験という物をした記憶があるな、あの時はちょっと驚いたね。


力を封じられていたからか知らないけど、ま、大事には至ってないけどね。


でも、今回は力を封じられているけど、この月の上での戦いだしね。


かなり拘束が弱くなっているとは間違いないだろう。


ま、元々僕には純粋な生と死しかないんだ、死にはしないだろう。


 


「しかしまぁ、君が本気だというのは分かったよ。


 戦意を失ったと言っても、その殺気は本物みたいだね」


 


さっきの怪我を少し撫で、手をどかすと傷は癒えていた。


恐らく内臓までに届いていたであろう重傷だが、大した事無いね。


 


「…その再生能力、並の妖怪ではないわね」


「吸血鬼でも出来るだろう? これ位ならね」


「そこまでの再生速度は無いと思うけど?」


「それもそうか、まぁ良いや、本番を始めよう。


 戯れはお終いだからね、ここからは本気だ。


 君の本気が分かったんだ、こっちも本気で行かせて貰おう。


 あぁそうだ、僕は大丈夫だけど君は分からないから注意をしてあげよう。


 死なないでくれよ? 僕に出せる本気を可能な限り出して戦うからさ


 最悪死ぬかも知れないけど、覚悟をしてよ」


「ふ、私は仙霊、そう易々とは死なぬさ」


「じゃあ……派手に行こう!」


 


最初に動いたのはこっちだった、出来れば短い間に帰りたいからね。


当然、並の妖怪とかでは反応出来ない速度ではあるが。


 


「速いわね、でも」「掌の純光」


 


ある程度接近すると、自身を中心に周囲へ高密度のレーザーを放ってきた。


流石にこの密度に突っ込むのはちょっと面倒だね。


ひとまずは距離を取って、隙間が出来た間を潜る。


そのレーザーに混じらせ小粒を混ぜるのがまた嫌らしいけど


残念ながらその程度の速度じゃ、僕には止まって見えるのさ。


 


「それ!」


「く!」


 


弾幕を回避しながら、こっちも弾幕を放った。


今回は初めて使ったかも知れないね、この弾幕って言うのを。


夢の世界の支配者と月の奴も物理的に排除した。


前の妖精はそもそも1度も攻撃せず、相手が息切れしただけだ。


だから、遠距離攻撃の使用はこれが初めてだった。


ちょっと加減が難しく、最悪あの母親の首を刎ねてしまうところだったよ。


ギリギリ避けてくれたから助かったけど、その切れ味は良く分かる。


 


「……ほぅ」


 


回避したはずだが、彼女の頬からは大きめの傷が出来ていて


結構な量の血を流していた…しかしまぁ、流石は幽霊。


その傷は短い間に完治する。


 


「なる程、でかい口を叩くだけあるな」


「避けてくれて感謝するよ、避けなきゃあんたは死んじまってたからね。


 それはこっちも興醒めってもんだ、純粋な戦いが始まってすぐ決着じゃ


 興醒めにも程があるしね」


「ふ、その気持ち、最初の私も同じだったわ


 あれだけでかい口を叩くのに、あっさり私の攻撃を受けたのだから


 それも、確実な致命傷」


「それはただの演技だった、ただの遊びだったんだ。


 下げて上げるのが好きでね、間の抜けた面を拝むのは面白いしね」


「ふ、では、今度は下げないで欲しいわね、何処までもあげなさい」「殺意の百合」


 


中粒の弾幕をこちらに飛ばし、回避した後一定距離を取ると


中粒弾幕からレーザーと小粒の弾幕が飛び出した。


狙いは上方、その射線上に入らなきゃ当ることは無い。


 


「ふふ」


「ん、っと!」


 


側面に飛んでいった中粒弾幕、中粒弾幕の射線上に飛ぶか


はたまた真上に飛ぶのかと思ったが、真横とはね。


危うく当るところだった、ちょっとゾッとしたよ。


はは、こんなのは初めてかもね。


だけど、何とか避ける事が出来た。


 


「いやぁ、相当久々にドキッとしたよ、初見殺しって奴?」


「いえ、ただ殺す為の弾幕よ」


「そりゃあ、不意打ちだね、ま、当たりはしなかったけど!」


「う!」


 


サマーソルト、空中だと放つのが楽だね。


僕はサマーソルトの射線上に斬撃を飛ばした。


最初の攻撃よりも速く、避けられる程度の速度でね。


多少は加減をしたから、あの純狐って人はギリギリで避けた。


だけど、その服は僅かに切断され、少しだけ血が滴り落ちる。


 


「真っ二つにならなくて良かったね」


「くく、面白いわね! これこそ純粋な戦い!」「現代の神霊界」


 


周囲に大量の弾幕を展開してでの攻撃か。


美しさなど無い、単純に相手を殺す為の弾幕。


でも、残念ながらそんな弾幕、僕には通用しない。


隙間がある以上、僕は弾幕をくぐり抜ける。


更にだ、ここまでゆっくりとした弾幕じゃ僕には止まって見える。


 


「こっちも反撃だよ! 避けてみな!」


「ふ、確かな殺意を感じるわ」


 


僕の弾幕はただひたすらに相手を狙う弾幕。


自機狙い弾の連続という感じなのかな。


だけど、ゆっくり少しずつ弾幕を展開させ


動きを着実に押さえつける、そして。


 


「そこだ!」


「うぐ!」


 


ある程度、動きを制限させたタイミングで一気に接近して爪で斬り裂く。


これもギリギリで避けた訳だが、その気になれば追撃は容易だ。


でも、ここは我慢としよう。


 


「……適度に手を抜いてるわね」


「あっさり終わったらつまらないだろう?」


「なら、手を抜けないようにしてあげましょう」「震え凍える星」


 


大量の弾幕を展開する弾幕か。


だけど、こう言う弾幕は僕には一切通用しないんだけどね。


ここまで隙間が広くて、ここまで鈍い弾幕なら容易に避けられる。


 


「隙と隙間が大きい弾幕だね」


「私の弾幕をここまで避けるとは驚きね。


 でも、何となく分かったわ、あなたの弱点」


「ほぅ、それは?」


「あなたはレーザーに弱い」「純粋なる狂気」


 


ほぅ、考えたね、周囲を大量のレーザーで覆い


クネクネと動くレーザーで僕の行動をより制限する。


確かに僕はレーザーと粒の弾幕ではレーザーの方が嫌だけど。


残念ながら、それは粒の弾幕を避けるのが得意と言うだけであって


レーザーが苦手だというわけではないんだよね!


 


「甘い甘い、この程度で僕を抑えられるとでも?」


「当る気がしないわね」


「当然さ、粒の弾を避けるのがより造作ないだけであって


 レーザーが苦手だというわけではないんだからさ」


「…ならば、もはや手加減無くやるしかないか」「純粋な弾幕地獄」


「っと」


 


やれやれ、最後は破れかぶれが近いのか? でも、そうだな


確かに名前の通り、単純で何処までも純粋な弾幕地獄だ。


いくつもの弾幕を展開し、こっちの行動を制限しながら相手を仕留める様に狙う。


複数方向からの弾幕だから、何処を見て良いか分からずに混乱もするだろう。


だけど、相手をただ殺すつもりに無作為に放たれた弾幕。


そんな物、僕には何の意味も持たないのさ!


 


「ふ、それじゃあ、そろそろ決めさせて貰おう!


 その純粋な弾幕、その全てを斬り裂いて!」前座「邪狼遊戯」


「な! うぐぅ!」


 


一瞬開いた隙間を狙い、瞬時に彼女へ接近し正確に斬り裂いた。


僕の爪は純狐の内臓には届かせては居ないが


その傷はしばらく動けなくなる分には十分過ぎる程に深い。


彼女はゆっくりと月へ落下し、天を仰ぎ僕を見た。


 


「…ははは! あははは! あぁ、最高に気分が良い。


 ここまで清々しい敗北は初めてかも知れないわ。


 知恵比べで今まで諦めてきていたけど


 今回は後腐れも無いほどに純粋な敗北よ。


 知恵比べでも負けて、戦いでも敗北した。


 うふふ、ここまでの完全敗北は初めてね」


「そうかい、良かったね、完全なる敗北を味わえて」


「…でも、あなたが本気なら、私は生きていないでしょうね」


「もう死んでるような物だろう? 仙霊なんだから」


「言えてるわ」


「それじゃあ、僕は帰ろう、気分もスッキリしたしね」


「…待ちなさい、フィル」


「……へぇ、僕の名前、覚えててくれたんだね」


「訂正するわ、あなたの事はきっと一生忘れないでしょう」


「そうかい、でも、僕の方は訂正しない。


 きっと次に出会った時、僕は君を覚えては居ない。


 それは頭の片隅にでも置いて置いてよ。


 ま、例え忘れていても、一緒に思い出を作っておくれよ」


「良いでしょう、きっとその時はすぐ来るでしょう」


「そうかい、ま、それでも覚えてないだろうけどね。


 じゃあね、純狐さん、今度会うときはお手柔らかに頼むよ」


 


さて、さっさと地上に戻ろうかな。


とりあえず、夢の道をもう1度通ってからかな。

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