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組織の鉄の獣、再来する。

 休日の訓練が終わり、その翌日。

 彼方はいつも歩く通学路を八重と共に登校していた。

 理由は彼方を組織の手の者から守るためなのだが、それを知らないその他の学生から見ればぱっとしない男が美少女と共に登校しているという羨ましい光景にしか見えなかった。

 事実何人かを男子生徒は彼方を射殺さんとばかりの視線をぶつけている。


 「なぁ、確かに俺の警護をしてくれるのは頼もしいんだが、一緒に登校していると色々勘違いされそうなんだけど……」


 「勘違い……ですか?私は別に気にしませんし大丈夫ですよ。そんなこと気にしてもしものことがあればそっちの方が大変なんですから!」


 彼方の制服の左側の二の腕部分を掴み、八重が力説する。


 「あ、あぁ。ごめん」


 その迫力に彼方もつい飲まれてしまう。


 「あー!彼方と八重ちゃんどうして一緒に登校してるの!?」


 彼方達が後ろを見ると真琴と遼太郎が驚いた表情で二人を見ていた。


 「えー、これにはな事情が……「今日歩いて登校して道に迷ってた所を御空君が助けてくれたの」


 「そ、そうなの?」


 「あ、あぁ。その辺を歩いていてな。気になって声をかけたんだ」


 「ふーん」


 余り釈然としないような態度で真琴は彼方達を見る。


 「彼方のそういうところは昔からだろう。信じてやれ」


 遼太郎が真琴はの頭を軽く小突く。


 「わかってるけどさぁ。八重ちゃん、もし彼方に変なことされたら教えてね?私か遼太郎がシメるから!」


 「しねぇよ!てかなんでなにかするのが前提なんだよ!」


 「だって八重ちゃん可愛いし、ついムラっときた彼方が襲うんだよ!」


 「だからしねぇって!お前の中で俺はどんなキャラなんだよ!」


 彼方と真琴の応酬が徐々にヒートアップしてあく、それを見る八重と遼太郎はただ呆れるのみだった。


 「ねぇ、そういえばあの栗きんとんだけどどうだった?お腹壊してない?」


 言いたいことを言い終わり落ち着いた真琴は彼方に聞く。


 「普通に美味しかったけど、お腹壊すってお前あの中になんか入れたのか?」


 「なっ、入れてないよ!失礼な!」


 「お、真琴。彼方に栗きんとん渡したのか?いいなぁ。俺にもくれよ」


 「またお店に出せない不ぞろいのやつが出たらあげるよ」


 「真琴は和菓子作るの趣味なの?」


 彼方達の会話を聞き八重が疑問をぶつける。


 「真琴の家は和菓子店なんだ。特に栗きんとんが美味しくてさ。幼馴染の俺と遼太郎は昔からよく買いにいってるんだ」


 「私はまだまだ見習いだけどね。けどいつかお父さんの跡を継いでお店を繁盛させるのが私の夢なの!」


 「そうなんだ!真琴頑張ってね!」


 そんな事もありながらも四人は学校へ行き、一日の授業を終えて、放課後なり真琴は家の手伝い、遼太郎は剣道部の部活動があるため、彼方と八重は二人で帰ることになった。


 「悪いな。日直の仕事手伝わせて」


 「大丈夫ですよ。そんな大変なものでもありませんでしたし」


 彼方は今日が日直だった為、日直としての仕事していた時に松田がまた追加の仕事を受けてしまい、八重と合流した頃にはもう日が暮れ、夜空が見えてきていた。

 もう校内に部活動をしている生徒も少なくなってたので彼方達もさっさと帰ることにした。


 「もうこんな時間か……」


 彼方の家に向かう通学路を歩きながら右腕の腕時計を見る。


 「午後七時……遅いですし氷室さんにお願いして迎えに来てもらいましょうか?」


 「いや、その必要はねぇな」


 彼方達が後ろをみると先日彼方を襲った男、永塚地竜也が立っていた。


 「よぉ、この前の能力者のガキ。やっと見つけ「御空君、こっちへ!」


 八重は竜也が言葉を言い終わる前に彼方の手を引いて逃げ出した。


 「お、おい!待て!」


 「シャドーガーデン!」


 八重の声と共に八重の影から無数の手が出てきて竜也の足を掴んで転倒させる。


 「痛ぇ!待てっ!」


 竜也の制止も聞かず、二人はその場を走って逃げた。


 「う、卯木。ど、どうするんだ?ついに組織の奴にバレたぞ」


 ある程度離れたあと息を切らしながら彼方は八重に尋ねる。


 「思ったより見つかるのが早かったですね。御空君は家の館に行って氷室さんに保護してもらってください」


 「わかった。けど卯木はどうするんだ?」


 竜也から離れた屋敷近くにある今は使われてない廃棄された公園の中で二人は立ち止まる。


 「私はあいつを足止めします」


 「しょ、勝率はあるのか?」


 「わかりません。この前御空君から聞いた鉄パイプを蛇のように変える力なら私の異能でなんとかできると思います……ですが、それが本当の力じゃなければ下手をすれば私の方が負けるかもしれませんが」


 八重は辺りを警戒しながら、返答をする。


 「なら一人より俺もいた方が……」


 「必要ありません。戦えない貴方がいた所で人質にされればそっちの方が厄介です」


 冷たくも全くの正論に彼方は返す言葉がなかった。


 「でも、気持ちは嬉しいですよ。ありがとうございます。さぁ、やつが来る前に早く!」


 彼方は八重に言われるまま後ろ髪を引かれながらも館に向かい走っていった。

 それを確認したすぐあと竜也が追い付いた。


 「やっと追い付いたな。たく時間とらせやがって……。ガキの方がいねぇな。全く逃がすなんてやってくれたな。お前さっきの異能使った奴だろ?この前も邪魔しやがって。可愛い顔してなけりゃ殴ってるぞ。全くこんなところにまで逃げて」


 「貴方達のような危険な組織に渡すわけにはいけませんからね。それにここなら一般人もあまり来ませんし全力を出せそうです」


 「ほう、言ってくれんじゃねぇか。後悔するなよ?アイアンビースト!」


 竜也の掛け声と共に背中に背負われたバックの中から鉄パイプが数本蛇のような動きをしながら出てくる。


 「その程度なら!シャドーガーデン!」


 八重の影が刃物のようになり、鉄の蛇を切り裂く。


 「ほう、さっきも見て聞いたが、その力は影の操作か……便利そうな能力だな」


 「褒めてもらっても嬉しくありませんよ。この態度で私に勝つ事はできませんよ。早めに降参してもらえると助かるのですが」


 「悪いな。そうはいけねぇんだ。これも仕事なんでな」


 竜也はため息を吐き、八重を見据えている。

 顔には鉄の蛇を切られて、焦った様子もなく余裕の表情のみが見えており、ボソッと呟いた。


 「これで終わりだと誰が言った?」


 一方、その頃。

 彼方は館に向かう為、森の中を走っていた。


 「くそ!くそ!くそ!」


 彼方は自分の力の無さに嘆いていた。

 いくら機関で鍛えられていたと言えど、華奢で小さな八重を置いていく事は彼方にとって苦渋の判断だった。

 だが現状彼方に戦う力はなく、もし戦闘に参加しても足を引っ張るのは目にみえていた。


 「フール!」


 「はい!マスター!」


 彼方は立ち止まり、フールを呼ぶ。


 「なぁ、俺はどうすればいいんだ?確かに俺は戦えない……けど卯木を放っておいて、自分だけ助かるなんて嫌なんだ」


 「……マスター。私達は貴方様の異能です。貴方は貴方がしたいことを成せば良いと思います。それがもし誤った選択であろうと私達は否定はしません。ただ後悔が残らないようにすればいいおのずと道見えます。キリュシリア様もそんなお方でしたから」


 「……」


 彼方はフールの言葉を聞き黙る。


 「フール、わかったよ。付いてこい!」


 そして彼方は走り出した。

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