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異能の目覚め愚者の顕現

今回の魔術、魔法の扱いはあまり気にしないでくださると助かります。

まだそこまで深く作ってないので気にしないでくださると助かります。

むしろ教えていただきたい

 その日の放課後、彼方は松田に呼ばれて職員室に来ている。

 他の先生は部活動の方に行っているからか他に誰もいなかった。


 「先生、卯木さんの校内の案内終わらせましたよ」


 「おぉ、ありがとうな。終わったところすまないが、ちょっと資料室にいって明日の授業で使う世界地図を取ってきてくれないか」


 「えー」


 「頼む!今、明日の朝の会議に使う資料を作らないといけないんだ」


 松田は両手を合わせ、拝むように頼み込む。

 

 「はぁ、今度ジュースでも奢ってくださいよ」


 「助かる。これが資料室の鍵だ」


 彼方は松田から資料室の鍵を投げ渡され受け取る。

 その後、職員室を出て少し離れた資料室に到着する。

 鍵を開け、資料室の中に入ると大量の本や大きな張り紙の束が乱雑に置いてあった。


 「うわぁ、汚いな。探すのに時間が掛かりそうだ」


 文句を言いつつも資料を探して、本棚の上の方を探すため椅子に立ちながら、探していると態勢が崩れ、本棚ごと倒れる。


 「痛たたた、棚ごと倒したか……片付けが大変そうだな。あまり大きくない棚だったのが不幸中の幸いだったな」


 彼方はため息を吐きながら、棚を元に戻して中に入っていたものを元に戻す。

 元に戻すついでに世界地図を見つけたので残りのも戻し、最後に残った小さな箱を拾い上げ箱に書いてある英語らしき文字を読み上げる。


 「キリュシリア……レメフィス?」


 手に取った箱を開けると中にタロットカードのようなものが束で入っており、旅人のような図柄のカードを1枚を取り出す。


 「たしか……この絵って愚者だったよな?ってうわぁぁぁぁぁ!!」


 それを言うと不意にカードが光りだし、光が資料室を埋め尽くす。

 光が収まり、彼方が目を開けると目の前に15センチ程の白い仮面を着けた道化師の人形が現れる。


 「なっ、なんなんだこれは!?」


 彼方の声に反応したのか、仮面のなかの目が光り、彼方の目線まで浮かび上がる。


 「こんにちは、私達の新たなマスター。私はキリュシリア・レメフィス様によって製作された血族専用魔道具型異能『アルカナの支配者ルーラー』の愚者でごさいます。フールとでもお呼びください」


 「マ、マスター?血族?い、異能!?」


 「はい!貴方様からキリュシリア様と同じ魔力を感じ、貴方様の御力になるため顕現致しました」


 「は、はは、なんだこれ。俺、夢でも見てんのか?」


 いきなりのフールの出現に彼方は理解ができなくなり、半ば現実逃避になりながらも自分の頬をつねりながら今起きていることが現実だと彼方は理解した。


 「血族専用ってことはそのキリュシリアって人の血を引いてないといけないんだろ?俺は両親ともに日本人だぞ?」


 「はい。私達はキリュシリア様の血を引く物にしか使うことができませんし、本体であるタロットに触れることができません。つまり触れることができる貴方様は私達の所有権があるということです。おそらく何代か掛けてキリュシリア様の血を継ぐもの達が日本に来て、子を成して、当代たるマスターに引き継がれたのでしょう」


 「あはは、なんだそりゃ」


 彼方は顔をひきつらせ、笑うことしか出来なかった。


 「お前が愚者ってことは他にも色々いるのか?」


 「はい。私の愚者から始まり、魔術師、女教皇、女帝、皇帝、教皇、恋人、戦車、正義、隠者、運命、力、刑死者、死神、節制、悪魔、塔、星、月、太陽、審判、世界と順に私のような擬似人格を持った存在がいます。ちなみに今のマスターではまだ私以外のアルカナを使うことはできません」


 「はぁ?なんでだよ?」


 「各アルカナには発動するための条件があるのです。条件を達成し、そのアルカナに認められることで初めて使用することが出来ます。私は異能の案内役として顕現されるので血族者であれば誰でも召喚出来ます。ちなみに私は長期における封印の影響か他のアルカナの条件については覚えていませんのでそのつもりでいてくださいませ」


 彼方の質問に一つ一つ丁寧にフールは答える。


 「な、なるほど。で、俺はお前のマスターとしていったい何をすればいいんだ?言っておくが俺は魔法なんて使えないぞ」


 「あえて言うなら魔力、つまりマスターの精気ですが私ぐらいなら微々たるもので1ヶ月間顕現し続けていても貧血ぐらいですね。直接の戦闘能力を持たない代わりに消費するエネルギーが少ないのです。逆にエネルギーをたくさんの使うアルカナを連発すればすぐに精気が枯渇し、気絶または死もありえるのでご注意下さい」


 死という単語をさらりと恐ろしいことを言ってのけるフールに彼方は背筋が凍るような感覚が走る。


 「ともかく、日が暮れてもうすぐ夜になります。いつの時代も町の中といえど危険が多いので早く帰りましょう」


 そういうとフールは彼方の上着の内ポケットに入っていく。


 「あっ、こら、勝手に入るなよ!」


 「私も長い間の封印で外の世界のを見るのは久しぶりなのです。それに敵の存在を知るためにも家に着くまでここで見学させてもらいたいと思います。駄目でしょうか?」


 「……はぁ、仕方ないから許可するが勝手に出てきたり、喋ったりするなよ?お前が時代はどうだか知らないが、今の時代に敵なんていないし、他の人に見つかったら即見世物小屋行きだからな」


 顔の仮面のせいで表情はわからないが、フールのお願いに彼方は仕方なくポケットにいる事を許可した。


 「見世物小屋……ですか?ふむ、今の時代には我々のような存在はいないのでしょうか?」


 彼方はぶつぶつ言うフールをほっといて、松田のいる職員室まで歩く。

 資料室を出た後はフールも周りをキョロキョロ見渡しながらも静かに隠れていた。

 職員室に入った後は頼まれていた世界地図を渡し、松田の礼を受けた後、帰路に着く。


 「おぉ!夜なのにこんな明るいとは文明はここまで進化していたのですね!」


 街灯や店から見える光にフールはテンションが上がり、今にも内ポケットから飛び出そうとしていた。


 「お、おい。飛び出すんじゃない!」


 そんなフールを無理矢理出さないように気を付けながら、彼方はようやく家についた。

 一戸建ての庭付きと一般家庭としては少し大きい方だ。

 彼方の両親は彼方が高校に入学したのを機に海外に出て働いている為、今では彼方が一人で住んでいる。

 幸い彼方は多少なりとも家事ができるので問題はなかった。


 「マスター!黒い箱から私と同じような者と自然が映っております!これは遠見の魔導具なのですか?こっちでは竈のない所で火が!?現代は不思議が溢れているのですね!」


 「いやいや、お前の方がよほど不思議な存在だよ」


 テレビやキッチンを見てテンションの上がるフールに彼方はやや呆れながら突っ込む。


 「そうでしょうか?私がキリュシリア様と共にいたときは、たくさんの異能者がいましたよ。特に裏社会の人間のがおお……「ストーップ!!それ以上は言うな!なんだか戻れなくなりそうだから止めろ!」


 「マスターがそうなら止めます。しかし、改めてみるに、現代は昔に比べて変わりましたね。人は朝日と共に活動し、夜になれば寝床に戻って朝を待つ。それが自然の摂理であり、キリュシリア様もそれに従い生きていました。ですが現代では人間の作り出したたくさんの光が夜の闇を蹴散らし駆逐する。昔に比べれば便利なことも多いでしょうが寂しくもありますね」


 フールが感慨深そうに言う。

 仮面のせいで分かりにくくも、彼方にはフールが在りし日の事を思い出して感傷に浸っているように見えていた。


 「それも人間の発展の結果だな。俺には昔の事は分からないけど、今を生きていくだ」


 「マスター……申し訳ありません。このフール、貴方様の為にこの身が果てるその時にまで仕えましょう」


 フールが膝を付き頭を下げる。


 「いやいや、そんな風になるまでしなくていい。昔は知らないが今は平和なんだ。自由に生きていけばいいさ。なぁ、聞きたいことあるんだけど魔道具ってことは魔法ってあるのか?」


 「はい。正確には魔法ではなく魔術ですね。物語にあるような物はありませんが、様々なものがあります。黒魔術なら精神を混濁させるものとかもあります。ちなみにキリュシリア様は黒魔術、白魔術もお使いになりましたがあの方のもっとも得意だったのは錬金術でした」


 「錬金術ってたしか卑金属を貴金属に変える学問だったよな?その末でフール達を作ったのか?」


 「はい。しかし、錬金術だけでは私たちを作ることは出来ません。キリュシリア様は人間では珍しい複数の異能の持ち主であり、その全てと錬金術、黒魔術、白魔術の集大成が我らなのです」


 「なるほどな。おっと、もうこんな時間か。悪いなフール。続きは明日聞くから、今日はカードに戻ってくれるか?」


 「分かりました。また呼び出すときは私の名を呼んでください」


 その言葉を告げて、フールは消える。

 彼方がタロットカードが入った箱の中を見ると、一番上にフールが顕現して無くなっていた愚者のカードが戻っていた。

 彼方はそれを確認すると、自室に戻り眠りについた。

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