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朔夜と彼方の再会

「えーと、土曜にあったから三日ぶりですよね?こんなところで会うとは思いませんでした!その制服……高校生なんですか?」


 朔夜は嬉しそうに微笑んでいると彼方の制服を見る。

 休日に会ったときは彼方も私服だった事と彼方が自分のことを話してなかった為、朔夜は少し驚いていた。


 「はい。近くの高校で二年生です。えーと、東雲さんはどこかの帰りですか?」


 「はい!この前教えてもらった商店街で買い物を少し……結構買ってしまいました。あはは……」


 そういうと朔夜は手に持っていた袋を見せる。

 マイバックと思わしき大きめな袋に肉や野菜、その他雑貨が入っており、外から見てもわかるほどパンパンになっていた。


 「本当にたくさん買ったんですね……重くないんですか?」


 女性が持つには重そうと思った彼方は朔夜の手を見る。

 真琴や八重よりも華奢に見える朔夜の腕にはその荷物の量は多すぎると思ったからだ。


 「えぇ、なので途中途中休憩しながらいこうかと思っています。あはは……」


 考えなしで買っていた恥ずかしさをごまかす風に笑う朔夜に彼方は少し考えると軽くため息をつくと朔夜にある荷物を奪った。


 「み、御空くん!?」


 「俺、このあと別に予定ないし家まで持っていきますよ。てか本当に重いな……こんなに重いのに放っておいていけませんよ」


 「御空君……ありがとうございます!それじゃあこちらにお願いします!」


 いきなり彼方の行動に呆気をとられながらも朔夜は胸を押さえながら微笑み、彼方を誘導するように前を歩きだす。


 「ありがとうございます。まだここから少し歩かなきゃ行けなかったので助かりました!」


 「いえ、これくらい大丈夫ですよ。東雲さん、これ全部一人で食べるんですか?結構な量だと思いますけど……」


 「はい。先にいくつか作りおきにしておけば後々楽ですから。……そういえば御空君、さっき高校生っていってましたけど部活動とかしてないんですか?」


 「してないですけど、どうしたんですか?」


 「ほら、部活動があるなら帰りが早いと思うし、この荷物簡単に持ち上げちゃうので運動部なのかなって」


 荷物をもつ彼方の腕をつんつんっとつつきながら聞く。


 「俺は帰宅部ですよ。帰るの早いのはテスト期間に入ったからで、筋肉に関しては中学の時友達と剣道してた時期もありましたからその時に付いた筋肉だと思います」


 そういうと朔夜は納得したのかなるほどと頷く。

 彼方はそういっていたが要因は他にもある。

 彼方が組織に狙われることになったことで自衛のために始めた八重とのトレーニングである。

 八重との走り込みや鬼ごっこによる下半身の強化、館内にある機材を使って筋トレ、氷室監修のもとに行われる食事で彼方は鍛えられている。

 それでもたった数日で効果が出るわけではないので彼方が言っていたことの方が今回は正しいだろう。


 「へー、彼方は成績は良い方?」


 「あー、察してもらえると助かります」


 朔夜の言葉に彼方は苦笑いしながら明後日の方向を見て誤魔化す。

 それを見て朔夜も察したのか手のひらをポンっと合わせる。


 「そうだ。なら荷物を持って貰ったお礼にうちで勉強教えましょうか?そのくらいなら私にもできますから!」


 「えっ!?そんなの悪いですよ。俺が好きでやってるんだから気にしないでください!」


 朔夜の提案に彼方は遠慮の声を上げる。

 彼方としては早く帰って新しいアルカナ達を確認したいというのと単純に勉強嫌いな彼方としては勉強したくないと思っており、朔夜の家で勉強するとなるなら長居することになる。

 それに彼方とて美人の大学生の部屋で二人きりでいることに気恥ずかしさを感じているからであった。


 「そんなこと言わずにお願いします!……迷惑でしたか?」


 「うっ……わ、わかりましたよ。それじゃあ教えてください……」


 少し瞳を潤ませ朔夜は彼方の顔を見る。

 朔夜は彼方よりも背が小さく彼方の顔を見ようとすると上目遣いになってしまうのである。

 懇願されるような目で見られて彼方も少し考えたが断れないと悟ったか軽くため息を吐くと了承するのだった。


 「はい!」


 お願いが受け入れられ嬉しかったのか朔夜は満面の笑みで答える。

 道中そんな事もありながらしばらく歩くと目的地の場所につく。

 最近まで工事中だったらしい見上げるほどの高層マンション、そこが朔夜の住居だった。


 「ここの八階が私の部屋です。あと少しお願いします」


 そう言われ彼方は言われるがままに案内されマンションの中に入り、備え付けられたエレベーターに乗り八階に移動する。


 「家賃が高そうな所ですけどいくらくらいなんですか?」


 「月に八万くらいですかね。ここ少し立地が悪いので多少安めにはなっていますよ?これくらいなら仕送りとバイトで稼いでるお金とかなんとかなりますから!」


 高校生の彼方にとって八万とは大金ある。

 それを安いと言ってしまえる朔夜に彼方はおぉーと声を洩らしてしまう。


 「さぁ、ここですよ!少し散らかってると思いますけど気にしないでもらえると助かります」


 少し苦笑いしながらドアを開ける朔夜に対して彼方は今更ながら緊張していた。

 なんせ何年ぶりかの女性の部屋の訪問なのだから。

 彼方が覚えているだけでも小学生の頃に真琴の部屋に行ったくらいで、思春期に入ってからは女性の部屋に入ったことはない。

 しかし今回は年上で可憐な容姿を持つ朔夜の部屋であり緊張しない理由などなかった。


 「お、おじゃまします!」


 彼方が少し声を震わせながら部屋の中に入ると、目を奪われたものがある。

 白、黒、水色の布……つまり朔夜の下着であった。


 「……っ。あ、あの……すいません。先に入ってもらっていいですか?その……洗濯物が……」


 顔を真っ赤にしてしどろもどろになりながら彼方は朔夜に伝える。

 朔夜は一瞬なんの事かわからなかったが部屋の中を覗くと自らの下着が干してあることに気づいた。


 「ご、ごめんなさい!今日、中に干しているの忘れてました。お見苦しいもの見せてしまいすいません」


 慌てて干していた下着を回収すると朔夜の顔は彼方と同じ様に顔に真っ赤になっている。

 


 「い、いや。だ、大丈夫ですよ。別に見苦しい訳じゃないですし……」


 「あ、ありがとうございます。そ、それじゃあ私これを置いてお茶の用意しますね。そこのソファーに座っててください」


 そういうと朔夜は持っていた物を持ったまま隣室に消えていった。

 そして言われたままに彼方は部屋の中央にあるソファーに腰掛けて鞄の中に入っていた教科書を取り出してソファー前の机に置く。


 「び、ビックリした……まさか下着が干してあるなんて思ってなかった」


 朔夜が行ったのを確認した彼方は今起きたことをぼそりと呟いた。


 「く、黒とか穿くんだな」


 思春期真っ只中の彼方は先ほどの下着のインパクトが強かったのかそればかりが脳内によぎっていた。

 そんなことを考えていると……


 「御空くん?」


 「は、はひ!?」


 紅茶を淹れた朔夜が帰ってくる。

 その手にはまだ湯気が出る程暖かいであろう紅茶を乗せたお盆を持っていた。


 「あの、大丈夫ですか?」


 先程の事もあり、恥ずかしさからか彼方は朔夜の顔を見れなかった。

 一方、朔夜はまだ多少顔が赤いがそれでも冷静を装いながら彼方の前に淹れた紅茶を置くと彼方の右隣に座る。


 「し、東雲さん?」


 「御空くん。出来れば今見たもの気にしないでもらえると助かります。今から勉強するのにぎくしゃくしたままじゃ教えにくいですし……ね?」


 見られた彼女も恥ずかしいのだろうがこのままだと進まないと思い朔夜は提案する。

 意図を察した彼方はまだ少し顔を赤らめながらも頷いた。


 「ありがとうございます!それじゃあ勉強はじめましょう!御空君は何が苦手ですか?」


 「えーと、それじゃあ数学を……」


 そうして二人の勉強会は始まった。

 最初は先程のこともあり集中できなかった彼方も朔夜の教え方がよいのかあっさりと集中することが出来た。

 それから二時間ほど経過し、彼方は数学の他に国語のテスト範囲まで進めていた。


 「あ、もうこんな時間なんですね。夕飯作りますけど御空君もどうですか?」


 「あ、えーと、すいません。うちの冷蔵庫に今日までに処理しないといけない食材があるので今日は帰ります」


 「そう……出来れば食べていって欲しかったですけど仕方ないですよね。もしあれなら送っていきますか?」


 少し残念そうに朔夜が答え、提案をすると彼方は首を横に振り、提案を断った。


 「大丈夫ですよ。ここからだと少し遠いですし、最近物騒ですから女性の一人歩きは避けた方がいいですから」


 「そう……ですか。なら御空君明日も是非うちに来て勉強会しませんか?」


 「えっ、けど連日家に来るなんて迷惑じゃないですか?」


 彼方は少し考えながら答える。

 今回、勉強を教えてもらって朔夜の教え方が上手だった為、勉強が苦手な彼方もサクサクと出来たが一人で勉強することを考えると結果は愕然の差だろう。

 しかし、連日女性の部屋に入ることは彼方も流石に遠慮してしまう内容だった。


 「大丈夫ですよ!周りに知り合いが出来なくて困ってたんです。御空君が来てくれるなら嬉しいんですけど……駄目ですか?」


 「うぐぅ……」


 眉をハの字にして首をかしげながら不安そうに聞く朔夜。

 その姿を見て彼方は心が動かされそうになる。

 元々善人気質の彼方は誰だろうとも悪人でなければ困っているなら手を差し伸べてしまうタイプである。

 そんな彼方に困っているというセリフを言ってしまえばどうなるかは一目瞭然だった。

 朔夜のように華奢で小柄な女性から懇願されたのならなおさらである。


 「わ、わかりました。明日の夕方くらいに来ますから!……それでいいですか?」


 「はい!楽しみにしてますね!」


 ちょっと前までの不安そうな顔が打って変わって満面笑みで朔夜は答えた。

 対する彼方は少し疲れたように息を吐いた。


 「今日はありがとうございました。それじゃあまた明日よろしくお願いします」


 「いえ、こちらこそです!明日待ってますね!」


 ぱぱっと荷物を鞄に詰め込むと彼方は朔夜に向かい、礼を言い出ていき、朔夜はそれを手を振りながら見送った。

 そして彼方は出ていき、一人になった朔夜は部屋の時計を見る。


 「さて、約束の時間までまだ少しありますね。今のうちに夕飯と御空君が来た時用にお菓子でも焼いておきましょうか」


 そう言い朔夜はキッチンに向かって歩き出した。


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