戦いの翌朝、友人との会話
達也との一戦の翌日、彼方は八重の屋敷に泊まり一緒に登校していた。
「卯木……昨日の怪我大丈夫だったか?」
八重は昨日の交戦でいくつかの傷を負ったが、幸い制服を着た状態で見える分は手の甲だけだったのでそこを治療していた。
もちろん服の中は鉄のゴリラの一撃を食らったせいでできた傷痕もあった。
「大丈夫ですよ!これでも鍛えてますからね!」
「そういえば、あの男はどうなるんだ?」
彼方はあの男……達也の行く末を気にしていた。
いくら自分を襲いかかった奴と言えど、それが拷問にかけられたり、処刑されるなどになれば彼方にとってとても気分がいいとは思えなかった。
「彼は近いうちに機関に移動させ、それから組織の情報を吐かせるつもりです。安心してください。私たちは彼等と違って拷問なんてしませんよ……ただその分拘束を外されることはありませんが」
彼方の気持ちを察したのか八重は安心させるようにほほえんで答える。
「そうか……教えてくれてありがとう。それに昨日は俺と泊めてもらったし、卯木や氷室さんには世話になってばかりだな」
「別に大丈夫ですよ。私も御空くんに助けてもらい貰いましたし、氷室さんも気にしてないといってましたか「あー!また二人で登校している!」
後ろを振り替えると後ろには真琴と遼太郎が立っていた。
「よう。二人とも朝から元気そう……じゃねぇな。彼方、お前らなんか疲れてるみたいだが何かあったのか?」
「そうだよ。八重ちゃんも手に怪我してるし……」
「そ、それは……「み、御空君は家で勉強会してたの。ほら、確か再来週には中間テストがあるじゃない!それで御空君に勉強を教えてほしいって言われて教えてたの。でその帰り転んじゃって……」そうそう!俺の成績の悪さは二人がよく知ってるだろ?俺は徹夜で寝不足なだけだしな」
「確かに彼方は成績は良い方じゃないけど赤点は回避してなかったっけ?いきなり勉強にやる気だすなんて……怪しい」
慌てて取り繕う彼方に真琴は疑惑の視線を向ける。
「いやいや、来年は進路の兼ね合いもあるし勉強して損はないだろう?それで図書室で自習して時に卯木から声をかけられてな」
「ふーん。そこまでいうなら信じてあげてもいいけど……ていうか勉強会するなら私も呼んでよ!私も二年生になってからの勉強が不安なのに!」
「え?あぁ、真琴も俺と同じぐらいの成績だったよな」
「なっ!?そんなことないよ!彼方よりはいいよ!……数点だけだけど」
「それってほとんど俺と変わらないよな」
「むー!ちーがーうー!」
言い合う二人に八重は心配そうな顔で二人をみる。
「卯木さん、いつもの事だからあんまりしなくて大丈夫だぞ」
隣にいた遼太郎が八重の様子を見て声を掛ける。
幼い頃から彼方と真琴と一緒にいた遼太郎からすればいつものことであり心配など全くする必要がなかったのだが、本当に喧嘩してるじゃないかと思っていそうな八重に教える必要があった為教えることにしたのだ。
「そうなんですか?」
「あぁ、いつもの痴話喧嘩だな」
「「痴話喧嘩じゃない!!」」
話が聞こえていたのか彼方と真琴は同時に遼太郎の方を向き声をあげる。
「ふふ、みなさんは仲が良いんですね。私は今まで短期で何回も引っ越しばかりで今まで仲のいい友達が作れなかったからみなさんのような関係は羨ましいですね」
遼太郎から聞いた内容を理解した八重は彼方達のやり取りを微笑ましそうに見ていた。
その表情に彼方も真琴も毒気が抜かれたのかいつの間にか言い合うのをやめて八重を見ていた。
「八重ちゃん、そんなこと言わないほしいな。私達はもう八重ちゃんと友達だよ!だから遠慮なんていらないからね!」
彼方から離れた八重のもとに駆け寄り、手を取って握り締める。
「えっ、あ、ありがとう!そういってもらえて嬉しいよ!」
真琴の急な反応に驚きつつも八重はすぐに微笑み返事をする。
そんな光景を目の前でみていた彼方と遼太郎はというと……
「彼方……やっぱり百合っていいよな!」
「また真琴に怒られるぞ……はぁ」
遼太郎の言葉に彼方はため息をついていた。
「よーし!せっかくだから今度のテスト対策に今度の休みに彼方の家で勉強会しよう!」
「「「えっ!?」」」
突然の真琴の発言に三人は驚きの声をあげる。
「八重ちゃんは授業の感じから勉強良くできるみたいだし、遼太郎はなんだかんだテストの点高いしね!
この二人がいるなら私と彼方の成績は爆上がりだね!」
「いやいや、何で俺の家ですることが決定してるんだよ。他はダメなのか?」
「八重ちゃんのところはまだ良いか確認してなかったし、私の家はお父さんの仕事があるから邪魔になるかもしれないし、遼太郎の家は大家族で四人でいくと小さい子の相手で勉強所じゃないでしょ?」
「ぐっ……」
真琴の言葉に彼方は押し黙る。
「確かにうちのチビ達がいると勉強に集中するのは難しいな」
「私も少し家の事情で勉強に不向きなので別の所だと助かります」
続けざまに言う遼太郎と八重の言葉に彼方は何も返せない。
八重は機関の関係があるし、遼太郎に小さな弟妹達がいることは幼馴染みである彼方がよく知っている。 真琴の家は昔からその両親に良くしてもらっていることもあり、迷惑掛けてまで断るわけにもいかなかった。
「はぁ、わかったよ。次の土曜日でも良いか?テスト週間に入るのは今週末だし、それまでは遼太郎は部活で忙しいだろ?」
「まぁ、そうだな。俺としてもその方がありがたいな」
「私もいいよ!」
「私もそれで大丈夫ですけど、御空君の家は大丈夫なんですか?いきなりお家の方に行っても迷惑ではありませんか?」
彼方の言葉に遼太郎、真琴、八重は順に答えていき、八重は心配そうに訪ねる。
「あぁ、それなら問題ない。俺の親は二人とも仕事で海外に出てるから俺一人だからな」
「そうなんですか……一人だと寂しくとかないですか?」
「特にはないな。こっちには遼太郎や真琴達がいるし、たまにふらっと帰ってくることがあるから寂しいと思ったときはないな」
「そうそう!たまに私も遼太郎や家族と彼方の家に遊びにいくんだけどおじさんとおばさんが時々帰ってきてお土産くれたりするだ!今回はどこだっけ?」
「確か……イタリアだったか?」
「いいなー。海外行ったことないからいってみたいなー。美味しい料理に綺麗な景色、現地の人達との交流……憧れるな~」
真琴はうっとりとした顔で遠い異国の情景に思い馳せていた。
「まぁ、その為には言葉を覚えたり色々勉強しなくちゃいけないけどな。俺とお前は絶望的だな」
「ぐっ……確かにそうだけど、言い方ぁ!」
さっきまでのうっとりとした顔から一転し、真琴は彼方に食って掛かる。
自分の成績のことは自分でわかっている為かさっきのような勢いはなかった。
「なぁ、お二人さん。痴話喧嘩も結構だがいい加減歩き始めねぇと流石に遅刻するぞー」
「「だから、痴話喧嘩じゃないって(ば)!」」
遼太郎の声に二人の息の合った声で返事をする。
「でも、確かに少し急いだ方がいいかもしれないから、行こうよ?ね!真琴、御空君!」
八重もこのままでは進まないのが予想できたのか二人の背を押して、歩くように促す。
そんな風に言われ、流石に遅刻はヤバイと思ったのか二人は言い合いを止め、学校に向かい歩き出した。




