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Battle・Frame・Combat《バトル・フレーム・コンバット》

作者: 真田 蒼生

閉ざされた中でモニターに囲まれている椅子。それに座り、モニターに映し出される映像を眺めながら、椅子に取り付けられている操縦桿(スティック)を握りしめる。モニターに表示されている映像は、円形の囲いの中心に十字の線があるもの。FPSファースト・パーソン・シューティングゲームをやったことのある人ならわかるであろう。光学照準器(スコープ)の画像。その十字の中心を、狙うべき対象に合わせ……


「もーらい」


操縦桿にある引き金(トリガー)を引いた。


///-///


「――ぬあー! 負けた!」

「へっへー、やりぃ」

「くっそもっかいだもっかい!」


対戦で負け、リベンジを要求する少年。快く了承する少年。そんな二人をほほえましく見ながら、放置された空き缶などを回収する。ここのゲームセンターはそこそこ規模が大きく、その分清掃が大変である。しかしこれは仕事、サボるわけにはいかない。ゴミ袋片手に、センター内を歩き回る。

やがて、周りより少しだけ人が集まっている場所へ着く。そこは、ドーム状の筐体が4個並んでいる場所。

Battle(バトル)FrameフレームCombatコンバット通称BFC。それがこのゲームのタイトルだ。4人以上からの対戦または協力型のゲームで、プレイヤーは筐体の中に入り、そこにある操縦桿等を操作し、Frame(フレーム)と呼ばれるロボットの操縦を行う。完全にロボットを操縦している感をだすためか、コントローラではなく操縦桿や足元のペダルを使っての操作なので慣れるまで操作はかなり難しい……が、慣れると超楽しい。操作が楽しくなる段階まで行ったプレイヤーたちからの絶大な人気のおかげか7年ほど前の稼働開始から現在まで、アップデートなどを通してまだまだ現役のゲームである。ちなみに俺もその操作が楽しくなっているプレイヤーの一人である。まぁそれはそうとして、


「なんの騒ぎ?」

「おお、ロックオンの兄ちゃんか」

「そっちの名前で呼ぶんじゃない」


バイトを始める前からこのゲームセンターに入り浸っていたためか、知り合いも多い。今回はその知り合いに何があったのか尋ねてみた。……ちなみにロックオンというのは俺のプレイヤーネームだ。岩代いわしろ 音哉おとやが俺のフルネーム。そこから岩と音の文字を取って、ロックオン。あとはゲームスタイルから某ロボットアニメのキャラクターを意識したというのもある。自分からつけておいてなんだが、あまり人から呼ばれたいものではない。なのに面白がって呼んでくる奴らがほとんど。知ってるぞ、お前のプレイヤーネームの両端に(まんじ)や十字架使ってるの。


「で? 何してるんだ?」

「あれみてみ」


そういって、4つの筐体の中央に設置してあるモニターを指さす。モニターには戦闘中という文字とともに、対戦中のライブが表示されている。


「店内対戦か」

「そ、ロックオンさんの身内とその他さんが」

「ん? あぁほんとだ」


いわれて再度モニターを見れば、見知ったプレイヤーネームが表示されていた。『セリア』と『リヒト』。あれ? でも……


「お互いに対戦してんな。片っぽの相方は……初心者か?」


知っている名前の二つは、お互いに別々の陣で対戦となっている。セリアの方の相方は名前すらついてない。表示されている機体が初期装備で、移動がぎこちないことから初心者であろうことが推測される。リヒトの方の相方はまぁ中級者かな?


「……ハンデ戦でもやってんの?」

「うーん、最初は四人で一緒にやろうってなってたんだけど……初心者さんが断ってリヒトさんの悪い癖が出たというか」

「オッケー察したわ」


リヒトとセリアは俺の幼馴染だ。そしてリヒト、井原いはら ひかるは普段は普通の奴なんだが、なんというか短気というか変なところでキレることがある。そしてそのキレた後がめんどくさい。やり返すときなどがかなり悪質なことになるのだ。今回は共闘を断られたところで怒り、輝と初心者が対戦することになり、見かねたセリアが初心者、もう一人が輝の手伝いをすることになったってところだろうか。

ここで再びモニターを見る。


「あらら、思いっきりカモられてら」


対戦内容は終始、リヒトが初心者を襲撃。セリアがその助けに気を取られもう一人に襲われる。という内容だった。まぁ、完全に初心者だし熟練者であるリヒトに狩られるのはしかたない……が、


「大人げねぇ~」

「だよね」


お互いに苦笑し合う。何もあそこまでフルボッコにすることないじゃんなぁ?


「っと、仕事しねぇと。それじゃな」

「ういういー」


ここで俺は仕事に戻り、またセンター内を歩き回った。


///-///


「お疲れさまでした~」


バイトの時間が終了し、着替えたのちにBFCの筐体のもとへ向かう。てっきりあの騒ぎも終わっているものと思っていたのだが……。


「……まだやってたの?」

「あーロックオン、バイトお疲れ。うん、そだね……でももう……あっ終わった」


ちょうど対戦が終了し、四名が出てくる。輝以外は全員女子だ。


「も、もういっかいよ!」

「なんどやっても無駄だよ。亜理砂は僕には勝てない」


リベンジを要求しているのは幼馴染みの犀川(さいかわ) 亜理砂(ありさ)。勝ち気な性格で、かなりの負けず嫌い。んで偉そうなのが輝だ。


「あ、あの……セリアさん。もういいですよ」

「よくないわよ! 貴方あんな一方的にやられてて悔しくないの!」

「それは……悔しいですけど」


亜里沙に話しかけてるのが初心者の子かな? まだ中学生くらいか。


「犀川先輩。もう諦めたらどうですか? いい加減可哀想なんですけど……まぁ可哀想なのは最初からですが」


あいつは……だれだろうな? 新しいチームメンバーか?


「おーい亜里沙。落ち着け」

「何よ! ……って音哉。居たの」

「今来たんだよ……んでもっかい言うが落ち着け。当事者の意思無視しちゃダメだろ。ヒートアップしすぎ」

「うぅ……そうだけど……悔しくて」


少し落ち着いた様子の亜里沙。えっと、俺がここ通りかかってバイト終わるまで一時間半くらいか。今見てたペースで考えると結構な回数負けてんなぁ。負け越しで終了ってのもなぁ……よし。


「なぁ君」

「は、はい?」


初心者の子に声をかける。……しまった名前知らないや。


「あ、ミナっていいます」

「ご丁寧にどうも。俺はロックオンだ」

「ろ、ロックオンさんですか?」

「あ、めんどくさければロックとかオンとかでもいいから」

「あ、じゃあクオンさんで」


そこで区切りますか。おっと脱線してた。


「んじゃミナ? もう一戦だけやらない? 今度は俺と組んで」

「えっ……」

「ラスト一回だけだから。これ以降は亜里沙……セリアにも何も言わせねーから」

「……」

「ダメか?」

「……いいえ、わかりました」


よっし決まりだ。輝の方を見てみれば、やれやれといった感じだ。こっちがやれやれだよ。そのまま輝は一足先に筐体の中に入り、その相方の子がこちらへやってきた。


「えっと、君は?」

「先代さんですかね? 私は輝先輩のチームにあなたの後見としてはいらせてもらったランっていいます」

「あぁ……俺は――」

「――亜里沙先輩から聞いてるから大丈夫です。それで……いいんですか? 彼女と組むなんて」


また負けるだけですよ。と言外に告げられた気がした。ふーむ……。


「大丈夫大丈夫。勝てるかはわからないけど、楽しめるように(・・・・・・・)はするから」

「楽しめるよう……ですか?」


そそ。楽しめるように。

そう告げれば、彼女は釈然としないような様子で筐体の中に入った。


「俺たちも行こうか」

「は、はい」

「頑張りなさいよロックオンさん」

「へいへい」


亜里沙に見送られながら筐体の中に入る。中にある椅子に座り、百円玉を投入。モニターが起動したあとにICカードを読み込む。そうすればモニターに俺の愛機が表示される。店内対戦を選択、チーム分けを選んだあと、読み込みが始まる。やがて準備画面が映し出され、俺の愛機ともう一機、ミナの機体が表示された。


「ミナ、聞こえる?」

『あ、はい聞こえます』


BFCの筐体にはマイクが搭載されていて、このような通信が可能だ。


「見てのとおり俺は狙撃機(スナイパー)だから、ミナには前衛を頼むことになる」

『ぜ、前衛ですか……』


BFCには大きく分けて三つの型がある。前衛をこなす格闘特化のアサルト、中衛で射撃特化のブラスト、そして完全な後衛のサポートだ。そんでこの三つの中にさらに区分があるのだが……長くなるから割愛しよう。狙撃機はその名のとおりもっとも射程が長いSR(スナイパーライフル)を使う機体だ。


「大丈夫。しっかり支援するから」

『は、はい』


不安そうな彼女にそう伝え、準備完了を選択する。ミナも準備完了を選択すれば、対戦フィールドへ転送される。フィールドは市街地。大したギミックもない、建物に囲まれたフィールドだ。まもなく戦闘が開始されるというアナウンスとともに、カウントダウンが開始された。


「うわぁ、いやなとこ選択されたなぁ」

『だ、大丈夫ですか?』

「大丈夫大丈夫……んじゃそうだな。試合始まったらこの場所までダッシュしてくれ」

『え、あ、はい』


チーム共通のマップの一部分に点を打ち、試合開始を待つ。そして、試合開始のブザーが鳴った。


「ようし、いってら」

『は、はい!』


ミナは指示された通りのポイントへ向かう。……その間にっと。


「あそこがいいな」


適当なポイントを見つけて、機体を操作して登らせる。登り切ったらすぐに武器を構え、備え付けのスコープを覗き込む。スコープの先に……ミナの機体が見えた。


「おっけーおっけー。んじゃそこに待機しておいて」

『は、はい』


待機を指示して、スコープ越しに彼女の機体の周囲を観察する。


「お、きたきた」

『え、どこ! どこですか!』

「落ち着いて」


建物の間から、二機そろって行動している輝たちを発見。動揺するミナを落ち着かせながら伝える。


「君の右側の建物の少し後ろだね」

『えっ、えっ!』


動揺して行った操作により、機体がぐるぐる動き回るのは見てて面白い。まぁとりあえず落ち着いてもらわなきゃ話にならない。


「落ち着いて、深呼吸して」

『はい……』

「大丈夫?」

『はい』


落ち着いたならオッケー。そうこうしているうちに2機がよさそうな位置へ近づいてきた。


「うっし、俺が指示したら前に飛び出してすぐ左に向けて発砲。おっけー?」

『わ、わかりました』


よし。それじゃやりますか。

敵機を監視しながら、スコープの十字をとある一点に合わせる。そのまま引き金を引くのではなく、タイミングを見計らう。


「建物に囲まれてるからって油断しちゃだめだぜ」


引き金を引く。発射された弾丸は建物の隙間を縫って、敵機の片方、その脚部に着弾した。脚部に損傷を受けた機体は、そのまま倒れこむ。


「今!」

『は、はい!』


合図すれば、ミナの機体が飛び出し、言われた通りの方向へ弾をばらまく。大して狙いをつけてない弾だが、狙われている対象は動けない。彼女の弾丸がみるみる敵機の耐久値(HP)を削っていく。……が、もう一機の方がミナに向けて発砲しようとする。


「させるかっての」


再度発砲。狙いを定めている敵機の腕部に弾着。敵機の武器は腕ごと吹き飛ばされた。そうしているうちに、ミナの弾丸が片方の耐久値を削り切った。耐久値のなくなった機体はその場で爆発。


『や、やった!』


そういう彼女の声は嬉しそうだ。クスリと笑いながら、指示を出す。


GJ(グッジョブ)ミナ。それじゃ一旦下がって」

『はい!』


素直に従って、ミナはこちらの方へ下がってくる。


「うっし、もう一方も手負いだ。ちゃちゃっとやっちまおう」


そうして、再びミナに指示を出し、前に出す。スコープを覗いて敵の位置を確認し、ミナに伝える。片腕を失った機体なら初心者でも何とか倒せる……そう考えていれば、なぜか敵機が狙撃のしやすい開けた場所に出てきた。よく見ればあれは輝の機体か。損傷してない方の腕には近接武器である剣を装備している。何してんだ? 不思議に思っていれば、携帯に着信。輝からだ。


「ごめんミナ。ちょっとまって」

『え? は、はい』

「……もしもし?」

『音哉、僕と一対一で勝負しろ!』


ふむ。そうきたか……。


「いいぞ。んじゃ今からそこ行くから待ってろ」


まぁ受けない理由はないな。このまま負けたんじゃ向こうも面白くないだろうし。電話を切り、ミナに伝える。


「ごめん、勝手ながら一対一させてもらう」

『あ、大丈夫です! 頑張ってください!』

「ん、じゃあ審判役として来てくれるかな?」


そうして、ミナを伴って輝機の前へ。使用する武器はメインのSRからサブのナイフとHG(ハンドガン)


「うっし、それじゃミナ。好きなタイミングで空に向けてうってくれ」

『は、はい……それじゃいきます。よーい』


俺と輝。お互いに武器を構え、その合図を待つ。


『ドン!』


ミナの発砲と同時に輝機が飛び出す。俺はそれに向けてHGを連射。直撃を受けるが、輝機は止まらない。突撃(カミカゼ)かこいつ。安全策で一旦距離を取るか? ……いんや、ここは。


「前だろ!」


こちらも前へ飛び出す。タイミングがずれたのか、振りかぶった剣が振り降ろされる前に懐に飛び込むことに成功。そのままナイフを突き刺し、HGを連射する。そして、輝機の耐久値が0に。戦闘終了っと。


///-///


「お疲れさん」

「お、お疲れ様です」


筐体から出て、顔を合わせて労いあう。まぁ労うより重要なことが一つ。


「楽しめたか?」

「はい! 初めて敵が倒せてうれしかったです!」


ん、それはよかった。


「……あの」

「んあ?」


同じく筐体から出てきたランが話しかけてきた。


「なんで輝先輩の要求を受けたんですか?」

「あぁ……ぶっちゃけると断ったらめんどそうってのがあった」

「あぁ……」


そういうとひどく納得されてしまった。もう苦労してんだね君。


「まぁ、それだけじゃないんだけどな」

「え?」


一番重要な事なんだが、


「そっちの方が面白そうじゃん?」

「あ……」

「せっかくのゲームなんだから楽しまないと損だろ?」

「そう……ですね」


はにかんで同意してくれるラン。うんうん、わかってくれたようで何よりだ。


「また一人落としてる……」


ん? 亜里沙? なんか言ったか?


「音哉!」

「ん?」


こんどは輝か。なんぞや。


「一対一を受けてくれてありがとう!」

「どういたしまして」

「それで物は相談なんだが、僕たちのチームに戻ってこないか?」

「え?」

「やっぱり音哉がいてくれた方がいい。そうすれば僕たちはずっと強くなれる」

「んー」


悩むふりをして考える。輝のチームとは以前俺が所属していたBFCのチームのことだ。まぁチームといっても俺と輝と亜里沙の三人。大会の上位を狙うことを目的にしていたチームだ。高1まではやってたんだが、なんというか楽しむとかいうのなしでひたすら勝つことを目的にすることに嫌気がさしたため、高2になってバイトを始めたことを理由にやめた。


うーん、また入るってのもなぁ……でも輝がめんどそうだし……さてどう切り抜けようか。


ふと、俺の様子をおろおろとした感じで見ているミナの姿が目に入った。……ちょっと手伝ってもらうか。


「……悪いな輝」

「え?」


ミナの肩に、ポンと手を置く。


「おれ、この子とチーム組むことにしたんだ」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」


え? ミナと輝はわかるがなんでランと亜里沙まで疑問符? ま、まぁ続けよう。


「いやうん、お前んとこ完全に勝ちにこだわるチームにだったじゃん? それが悪いとは言わないけど、やっぱ俺はゲームを楽しみたいんだ。だから、みんなでわいわいできるようにチームを作ろうかなって」

「そ、そうか……」


怒らない限りは普通の奴なので、まぁ納得して引き下がってくれた。よしミッション完了。わるいなミナ、協力してもらって、あとでアイス買ってやろう。


「ねぇ音哉」

「音哉先輩」

「ん?」


ランと亜里沙に話しかけられた。なんぞや?


「そのチーム」

「私たちも入れてください」

「え?」


なぜに? 


「いや、輝のチームはどうするんだよ」

「抜ける」

「抜けます」

「なっ!?」


輝かわいそす。しかしなんでまた……。


「音哉と一緒がいいげふんげふん……私もゲームは楽しくしたいし」


今前半なんか言ってなかった?


「音哉先輩と一緒にやりたいです」

「なっ、この……」


おおぅ直球。そして亜里沙、なぜランをにらむ。


「しかしなぁ……」


チーム云々はウソなんだけど……。チラリとミナを見る。


「よ、よろしくおねがいしますクオンさん!」


あれー? これもう決まっちゃったパティーン? ……ま、いいか。


「わかった、よろしくな」


ゲームはみんなでやった方が楽しいしな。

ぶっちゃけ戦Oの絆です。

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