reunion
そこからが不思議である。
今朝、朝食を済ませ部屋着に着替えてまた例の机がある部屋で大学の参考書でも読もうと考えていたら、また違和感がそこにあった。
デジャヴである。朝の光を受けつつ控えめに反射するクリームの髪色と、白衣に包まれた装いは確かにあの異邦人さんのものであった。
そうか、確か昨日見た人だ、とうまく現実と結びつかない頭で思う。
ドアノブに手を掛けたまま、ぼうっとしてその髪を遠目で凝視しているうちに、昨日の出来事が頭を再び駆け巡り、さあっと血の気が引いた。
―彼は幽霊じゃなかったのかしら…?
あまりにふわりと窓から飛び降りた昨日の来訪者の姿を思い出し、恐る恐るドアノブから手を離す。
ゆっくりと、一歩だけ小さく彼の方に歩を進め、向かい側の壁に背を預け座り込んで首をもたげる彼に視線を合わせようとする。
自分の部屋であることも忘れ、なるべく静かに、物音を立てぬようしゃがみ込む。
彼と私の間には、恐らく4~5メートル程の距離はあるだろうしここからではあまり彼の表情は窺えなかった。しかしこれ以上近づく勇気ももう私には無かった。
・・・その時、彼がぴくりと動いた。
心臓が止まりそうだった。一瞬息の仕方を忘れてしまった。
意識を集中させていた対象本人が突然動いたのだから無理はない。ただ、ここまで霊だか人だか分からない人物に対し神経を使っていた自分に気が付き、呆れて気が抜けてしまった。
昨日のような小さな声を漏らし、顔をそろりとあげて、私の姿をその瞼の開ききらない視界に入れたかと思うと、相槌だか溜息だか区別の付かないような曖昧な音を口にして、嗚呼、と額に手の甲を当ててまた瞳を閉じつつ下を向いた。