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クマとトラと女 その7


珍しいお客さんのせいであろう、手の空いた農産物集積場の職員たちがゲートに飛び出してきた。この職員の数はたちまちのうちに増え年代物のオンボロトラックを取り囲んだ。するとトラックの中から年老いた原始人という風貌の男が姿を現した。


伸びっぱなしの髪は肩まで届き、髪を整えるのに使っている獣脂はそれはそれはひどい匂いを彼のまわりにふりまいていた。濃い口元のヒゲは定期的に剃られている様子ではあったのだが1センチほどの無精ひげとなっていた。しかし彼の容貌をこまかく観察するものは彼の顔が作り出す表情が意外に若く二十歳を越えたばかりなのをしるのである。男は大きくて底の厚い長靴をはいていた。そして肌にじかに泥と獣脂にまみれたオーバーオールを着ておりそこに自作の毛皮のコートを着込んでいた。


トラックの荷台には大きなおりが載っていた檻にはシートがかけられており中が見えなかった。男が振り向くと農産物集積場の職員たちが何人か彼のトラックの荷台によじ登って檻のシートをめくり檻の中の獣の正体を確かめようとしていた。そのとき不意にウオーーという咆哮ほうこうがトラックのあたりで響き渡った。トラックをまわりを取り囲んでいた職員たちは悲鳴を上げトラックのまわりから飛び退き逃げ場を求めおもいおもいに走り出した。トラックの荷台にいたものは転げ落ちるように荷台から降りた。


このひと騒動でトラックから農産物集積場の敷地の隅々にまで緊張が走り抜けていった。


そして、農産物集積場にいた職員たちの全ての視線がトラックの荷台の檻に向けられることになった。


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