クマとトラと女 その6
それどころかこのところヒトミは二十四時間体制で監視を受けていたのた。もちろんヒトミは監視のことを知らされてはいなかった。
夕刻、偉そうな壮年の男がダークスーツ姿でモニタールームに現れた。このモニタールームは農産物集積場からずーっと離れた街中の大きなビルの中に作られていた。男は長身でいかにも屈強そうに見えた。男の子の立ち姿は背筋がピンと伸びしっかりと立っている。何かの理由でスーツ姿ではあるがこの男はおそらくは軍人であろう。髪は短く切られ視線は正面を常に向き顎を引いたこの立ち姿は軍隊式である。
この男に伴われて若い男がついてきていた。この男もスーツを着ており短髪であったがこの男は少し優しい印象を与えている。
若い男はモニタールームの物々しさに圧倒されている様子であった。若い男はもの珍しげにモニタールームの様子を見わたした。しかし若い男は自分の前にあるもの、部屋の状況どうしても納得できない様子である。
「不躾でありますが……」
「何だね」
「これほどの施設や人的資源を投じる必要があるのでしょうか? つまりヒトミという小娘のために」
「そうだな。わかりやすくいうと君のいうヒトミとかいう小娘は消えるかもしれないということなんだ。少なくともわれわれはそう考えているんだ。そしたら困ることになる。僕も、君も、国民も。だから……」