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クマとトラと女 その4



頭はねじ切られる寸前のところまできていた。顔は執拗な打撃を受けたらしく裂傷が頬と額に数カ所走り擦り傷は顔全体を覆っている。顔は誰と見分けがつかなくなるほど腫れ上がり内出血のために皮膚は青黒く噴き出した血は血糊となって顔を汚している。


頭から飛び出した二つの目玉がおもいおもいあらぬ方向を見つめている様子は滑稽でさえある。


そう。わたしは仔細に自分の死にザマを観察している。


「こんなになるまでわたしのことを痛めつけるなんてよほどの憎しみを抱いていたのかもしれない」


わたしは他人ごとのように感情を添えることなくぽつりぽつりとつぶやく。わたしの心には確かに悲しみも憎しみも存在してはいない。


わたしははじめっから物陰からこちらに視線を送る眼差しに気がついているのだ。


この視線は肉体を失い魂となった自分に向けられている。魂は誰の目にも見えるはずがないのだがその視線は魂となったわたしのちょっとしたことにも反応する。この視線からは深い憎悪が感じられる。


ーーこの視線の主。魂となったあともわたしに害をおよぼそうとわたしをつけねらうあの視線の主。それは村人がいや国のあらゆる人間が恐れてやまない『あれ』に違いない。子供の頃わたしは家人が『あれ』について語るたびに心底震え上がったものだった。


ーーコワイ……


ーー……!


魂のわたしは子供の頃のように心底恐怖を感じている。そしてこれが単なる悪夢に過ぎないことを願っている。


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