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クマとトラと女 その11
「知っていたけどやってしまったんだよ。理由かい? それはわたしがそれはそれは不幸だったからだよ。そしてあの匂いがそれはそれはすてきに思えたからだよ。わたしはあの匂いが神様からの贈り物だと思ったんだよ。わたしにはそれを受ける権利があるんだよ。わたしはあんたたちにひどい目に遭わされっぱなしできていたからね。わたしはあの匂いを求めてあれから何日も何日も森の中をさまよい歩いた。そして禁断の地に足を踏み入れた。それは分かっていた。しかしわたしは何も見つけることが出来なかった。あの匂いの正体は分からずじまい。もちろん食べ物らしき物は雪ばかりの森では見つけることは出来ない。わたしは途方に暮れたのさ。そして最後には力尽きたのよ。それから……いや。それがすべてさ」