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クマとトラと女 その1
先ずはゆっくりと
そしてじっくりと
ホラー探偵社 第一話 クマとトラと女 その1
ーーいや、そうじゃないわ! 確かにおなかが空くのはつらいけどおなかが空くのは私が自由でいる証拠。だからお腹が空いていることに腹を立ててイライラするようなことは分別のあるメスの熊のわたしにはあり得ないこと。
そのときクマの鼻を微かなにおいが捕らえた。クマの鼻がクンクンと微かに鳴った。
ーーオヤオヤ? これはなんの匂いかしら?
クマは匂いの正体を探ろうと後ろ足二本で立ち上がると空に向けて鼻を掲げて、宙をただよってくる匂いを嗅ぎながら足踏みしてら一回りしていた。
この匂いはクマのある種の警戒心を解くものであった。というかクマは今までのイライラをすっかり忘れてしまいこの匂いの突き止めたいという気持ちでいっぱいになった。