日記
今日はまた春についての気持ちを書いてみようと思う。
春には桜が咲き、暖かい陽気に誘われ虫たちが遊び出す。
小鳥は歌い、魚は踊り動物達も幸せに見える。
世界に楽しさや優しさを教えてくれる季節。だと僕は思っている。
でも、僕が生まれてから18年、一度も春は来ていない。夏や秋も。
僕は冬しか知らないけど、昔の本や教科書で春や夏、秋の存在を知っている。
教科書で見た桜の写真は綺麗だった。
夏には大きな休みがあって、家族で出掛けたりするらしい。楽しそうだ。
秋は食欲や芸術の季節らしい。
信じられるかな。
こんな季節があるなんて。
今日で春については10回目の日記だったと思う。僕は春が好きだ。
でも一番興味があるのは夏なんだ。
夏については20回以上書いている。
一度でいいから夏も見てみたいな。
でも今はずっと冬。
僕のおじいちゃん、おばあちゃんも冬しか知らないって言ってた。
ずっとずっと前から冬のまま季節は止まってる。
僕はどうしても冬の先が見てみたい。
そもそもなぜ冬しか来ないんだろう。
テレビでは毎日同じ事を言ってる。
春がくるのはもう少し。なんて事をね。
もう待ち疲れたよ。
生きてるうちに見れるかな。
テレビといえば反乱軍が負けそうだとニュースで伝えていた。
長い戦争が終わるのかな?
いつの頃からかわからないけど、もうずっと戦争してる。
何のためにしてるのか僕にはわからないけど戦争は嫌いだな。
人が死んだりするのは悲しい。
そろそろ疲れちゃったからこの日記も終わらせようと思う。
思えば季節の事だけを書いてきた。
書いている時はすごく楽しかった。
僕はこの日記を誰かに読んでもらいたい。
そしてその誰かにお願いだ。もし春や夏、秋がきてるのならこの日記にたくさん書いてほしい。
僕よりももっとたくさん。
いつかこの日記を読む誰かへ。
冬の僕より。
そこで日記は終わっていた。
それは誰もいない街、都市、国にあった。
風だけが彼のページをめくっていた。
日記は一人だった。
戦争の代償を受け誰もいなくなった国でその日記はずっと一人だった。
それでも日記は満足している。
彼だけは知っているのだ。
いつかの少年が伝えてくれた。
四季の織りなす美しさを。