§青司君の気持ち§
渚ちゃんと青司君は時間がたつにつれ仲が良くなってきた。
明日こそは浜拾いに行く。と決意しながら朝起きれなくて落ち込む日が続いていた青司君。
けど昨日は、浜拾い俺も絶対いくから起こしてくれって頼まれた。そんな青司君の寝起きの悪いことといったら…
「青司君。僕そろそろ…いくよ…?」
「…………。」
何とか青司君を連れて海辺にきたけど。絶対あれ立ったまま寝てるよ。
「おはようございます。青司君。テンチョ。」
「おはよう〜。今日は僕らの方が少し早かったみたいだね。」
「ちょっと忘れ物をしてしまって、取りに帰ったら遅くなっちゃいました。」
「そっか。僕なんか、青司君を起こすのに10分くらいかかったよ。」
「青司君、まだ眠いんですか?」
青司君はこっくりと首を縦にふる。どうやらまだ目がはっきり覚めてないらしい。
「テンチョ。どうしましょう。青司君、まだ夢の中ですよ。」
「そこら辺に座らせとこうか。そのうち起きると思うし。」
「アバウトですね。」
「あ、みてみて。おっきい流木発見!」
「あ、テンチョ。待ってくださいっ。」
高い防波堤と浜を繋ぐ階段に青司君を座らせて僕らは浜拾いを始める。さっき拾った流木は青司君に持たせてみた。
「……で。なんで俺こんなん持ってるわけ?」
「他の人に流木拾われないようにキープキープ。」
「なんで持たせんだよ。」
「寝てたし。丁度いいかなぁって。」
青司君のイライラゲージが上がっていくのが見える。この前から渚ちゃんと仲が良いし、ちょっとした意地悪をしてみたんだけど、渚ちゃんは青司君がイライラしてるのがわかってあえて違う話題をふる。
「あ、あのっ。せっかく早起きしたんですし、青司君も浜拾いしましょう?ね?」
ふんっとそっぽを向いて僕と距離をおく青司君。そんな彼と浜拾いする渚ちゃん。ちょっと仲間外れになった気分で寂しくなる。
「なに拾えばいいの?」
「なんでもいいですよ。好きなものを好きなだけ。」
「僕も仲間にいれてよ〜。」
しゃがんでる青司君にのしかかる。
「おもてーよ。総司っ。」
「えー。これでも僕、細身なんだけど。」
そんなやりとりをしていると横でクスクス笑ってる渚ちゃん。
そんな笑顔の渚ちゃんを見つめる青司君。
青司君は、もしかして…渚ちゃんに恋してるのかもしれない。
「青司君…。」
「なんだよ。」
「……髪の毛跳ねてる。」
ぷふーっと笑ってやると青司君は急いで髪の毛を手櫛でなおす。
「どしたんですか?」
「いや。寝癖が…。治った?」
「ふふっ。まだありますよ。」
「え。どこ。ここ?」
違いますよって言いながら渚ちゃんは青司君の寝癖をちょいちょいと直す。くすぐったそうにする青司君。
この感覚。知ってる。前に味わった…。僕だけ違う世界にいるような。
ドクンって脈が大きく波打つ。
僕はその場から身を翻した。後ろから青司君や渚ちゃんに呼ばれた気がしたけど、僕は振り返らず、店に戻った―。