§浜辺での日課§
ピピピッピピピッピピピッ
頭の上で鳴る目覚ましを止めると布団から出る。
ぐっと伸びをしてから洗面所へ向かう。着替える為に再び部屋に戻ると青司君がベッドの上でモゴモゴ動いてる。どうやら起こしてしまったみたいだ。
「んぅ〜〜。まだ6時じゃん〜。」
「あ、おはよう。僕7時過ぎたら海岸に行くけど。青司君も来る?」
「いや。いいよ〜。遠慮しとく。」
青司君は布団をかぶり直し寝始めた。僕はクローゼットの中から適当に服を選んで着替える。
「……じゃあ。朝食はテーブルの上に置いとくから。あと、気が向いたら海岸においで。」
青司君は手をヒラヒラさせてた。僕はキッチンに向かい軽めの朝食を作る。
「ごちそうさまでした。」
朝食を食べ終わると時刻は7時半を過ぎていた。僕は急いでジャケットを着ると一階に降りて勝手口の方から家をでる。
実は僕の家の一階が喫茶店で二階が僕の部屋なんだ。一階と二階をつなぐ階段が、僕らが休憩する部屋に繋がっている。
歩いて10分。太陽が大分出てきているけどちょっと冷える。そんな浜辺につくと僕よりも先客がいた。
「な・ぎ・さ・ちゃん♪」
「あ。テンチョ!おはようございます♪」
「おはよう。なにかお宝あった?」
「いえ。お宝というほどではないんですが…。小さな色つきメノウを2つほど見つけましたよ。」
そういって僕に手のなかにある小さな石を見せてくれる。メノウは宝石の一種で海岸をよく探すとたまに見つかる。
「色つきメノウも珍しいよ。」
「いえ。私、もっと大きいメノウを見つけたいんです!」
ぐっとガッツポーズをして決意を語る渚ちゃんが少し可愛くて笑顔になってしまう。
「それとですね。あ、あれ?」
キョロキョロと周りを見渡す渚ちゃん。
「どうしたの?」
「バケツが…。あ!あんなところに!」
どうやら浜拾いに夢中になっていてバケツを置いてきてしまったようで。急いでバケツを取りに戻る渚ちゃん。僕も渚ちゃんの後をおう。
「ふぅ〜。いけない。いけない忘れてました。テンチョ今日はビーチグラスが沢山とれましたよ。」
まだ水に濡れていてきらきら輝くガラス達。ビーチグラスは割れた空き瓶が海や海の砂浜で角が丸く削られたもののこと。ビーチグラスは濡れている間はきらきら輝いているけど水が乾くと不透明の欠片になる。
「色んな色があるけどやっぱり茶色の方が見つけやすいね。」
「そうですね。さしずめ栄養ドリンクでしょうか。」
海にゴミを捨てるのはご法度。でも、そう言っても人はゴミを捨てる。そんな浜辺にあがるゴミで渚ちゃんは色んな雑貨を作ってしまう。
「テンチョ。あっちの方も探して来て良いですか?」
「そうだね。開店まで時間あるし。探そうか。」
大きな砂浜の中から小さな小さなお宝を探しだす。そんな地道な作業だけど、僕らにとってはとっても楽しくて、大切な行動なんだ―。