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狩人。

黒尽くめの男達が慌てて逃げようと、散り散りに動きだしたけれどもそれよりも早く女の人の方が動いた。

銀色の光る物を幾つも男たちに投げつけていくと、それが見事に男たちの足に命中していた。

その光る物体の正体は、細身のナイフだった。それが幾つも男たちの足に刺さっており、足が使えなくなっている。


「あらあら、わたしくから逃げられると思って?」


リーダー格らしき黒尽くめに近づくと、片足を上げた。

深紅の深めのスリットドレスから白い足と高いヒールの付いた編み上げ靴が見えたとたん、その足が男を踏んづけた。


「ふふっ……じゃあ、知っていることを洗いざらい話していただこうかしら?」

「だ、誰がっ……喋るかっ……ってんだっ、ぐぁぁっ」


女性はナイフが刺さっている足を何度も踏みつけ、そのたびに男がうめき声を上げる。


「下っ端の割りには、よくがんばるわねぇ……そういうの、好きよ。だからね、もう話してしまいなさいな。貴方達の組織と、上の人間の名を」

「へへっ……馬鹿が、俺らはなぁ……」


女王様が居ると思ってしまうような光景を半場呆然と見ていると、ゾクリとした寒気が背筋を伝った。

そう、悪寒が走るとはまさにこの事だと思う。微かに感じる、水独特の湿り気を帯びた気配。

けれども、そこには清涼さはなくて、どことなく淀んだ感じがする。そう、禍々しいだけの気配。


「危ないっ!その男から離れてっ!」


ほとんど直感だった。叫ぶと同時に、女の人が不思議そうな顔で一瞬こちらをみて、そして見事な反射神経でかなり後方へと距離を下げた。

そして間髪いれずに、男が……爆発した。


「に、人間が……爆発、した?」


濃厚な、血の臭いがあたりに充満する。血と、肉の塊になった人間だったモノを見て、愕然とした。これはさっきまで、動いていた人間で……。

目の前に現れた光景に、急に体のそこから恐怖が浮かび上がる。体の奥底、お腹の辺りから自然と震え始め、その震えが止まらなくなる。

腕を手で押さえて、必死に震えを抑えようとしても、無駄だった。いきなり肩から引っ張られる。視界が急に真っ黒になって、そこで誰からに抱きしめられていることに気づいた。


「シャルさまっ!」

「カ、カルア……?」


どうやらカルアが目の前の光景を隠すために、抱きしめてくれたらしい。

目を瞑るとカルアからベルベットの微かな香りと、仄かな暖かさが伝わってくる。それに酷く安心した。


「シャルさま。怖かったら、見なくてもいいんです。それに、必ず僕が守って見せますから」

「……うん」

「だから、怖がらないでください。大丈夫ですから……」

「うん……ありがとう、カルア」


安心させるように上から降ってくるカルアの声に、だんだんと体の震えが収まってくる。

そろそろ離れないといけないのに、カルアの腕の中が思ったよりも居心地が良くて、なかなか離れなれない。

ふいに、リリムの声で名前を呼ばれて、自分の状況を自覚して慌ててカルアから離れた。


「シャルさま。わたし……命に代えて、シャルさま、守り……ます」

「ありがとう、リリム。でも、命に代えてもなんて悲しいことは言わないで欲しいな」


なんとか笑顔を作れるところまで、大分気分が落ち着いてきた。

そっとリリムの頭を撫でると、安心させるように微笑む。


「わたくし、お邪魔だったかしら?」

「ご、ごめんなさいっ」

「ふふっ、その反応。お嬢様育ちの子には刺激が強すぎたようね?わたくしに着いてらっしゃいな。」


ふと気づけば、私達を追っていた者たちが地面に転がっていた。

ピクリとも動かない様子から、事切れていることがわかった。

その場に居ることもできずに頷くと、女の人が歩き始めた。その後に着いていく。


「わたくしは……裏の世界で、"狩人かりびと"と呼ばれるものよ」

「狩人?カルアは知ってるの?」

「いえ。はじめて聞きます」

「そうね。知らなくて当然かもしれないわ。こういう風に、人攫いや人身売買に係わる非人道的な行いをするもの達を、文字通り狩るのよ。別に変な正義感があるわけじゃないのよ。ただ、人を探しているの」


さっきの戦っている最中とは違い、静かに語るようすはどこか感情を抑えてるようで、


「その探している人は、攫われたんですか?」

「ええ、もう2年ほど前になるかしらね。ちょうど貴方と同じような年齢だったと思うわ……世間知らずなのに、1人で外になんて出るから」


世間知らずという言葉が耳にとても痛かった。

それに考えてみれば、私もさっきはかなり危なかったような気がする……。

ふと気づくと隣にいるカルアが、これ見よがしに溜息を吐きながら視線を逸らした。

ずいぶんな態度に少しだけイラッとしたけれど、文句を言える立場じゃないので耐える。


「その人……見つかるといいですね」

「ふふっ、ありがとう。きっと探しだしてみせるわ」


ついさっきまで戦っていたのが嘘のように、深緑の瞳を緩やかに細め、とても優しげに微笑み返してくれた。



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