表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

第四章  研ぎ澄まされた刃の音色

 もうすぐ晩餐会が始まる。ガルオム王やカルメア女王、リリィクにユリアルに機械人形等々

両国のお偉いさんが並んでいる。


「機械人形も要人扱いになるんだな。」


 失礼なことを口に出して考えながら眺めていた。とりあえずいつものローブ姿じゃない、

ドレス姿のリリィクはとても綺麗だと思った。


「えー、挨拶とかめんどくさいんだけど……」


「ガルオム、王である貴方がしっかりしなくてどうするの。」


「あー、明日ちゃんとした挨拶するから今日は飲めや踊れやで大騒ぎしてくれ!

 以上!挨拶終わり!!」


「父上っ!」


「この大馬鹿者っ!」


「うごぇっ……」


 ……そんなこんなで晩餐会が始まった。カルメア女王・リリィク・機械人形に

壮絶なつっこみをされる王を見て誰しもが「うん、いつも通りだ」と笑った。


 しかし、こんな催しに参加するのは初めてだ。面白いくらい何をすればいいのかわからない。


「おう、少年、戸惑っているな。」


 ワイズマン隊長が通りすがりに背中をバンバン叩いてくる。


「あはは、こんなのに参加したことなくて……」


「緊張することないぞ。ほら、ガルオム王を見てみろ。」


 ……寝ている。立ったまま寝ている。


「気持ちよさそうですね。」


「ああ、いつも通りだ。お、そろそろ姫様が動くぞ。」


 リリィクが挨拶回りの道すがら、流れるような動きで魔道書を取り出し王の頭に放り投げた。


「うごっ!」


 そして何事もなかったかのようにさっと魔道書を拾い上げあいさつ回りに戻って行った。

なんでこんな時にまで魔道書を持参してるんだろうという疑問は心の奥にしまった。


「あそこまでリラックスしろとは言えないが、もう少し肩の力を抜け。この場じゃ損するだけだぞ。」


 隊長は来た時の様に背中をバンバン叩きながら去って行った。どうやらもう酔っているみたいだ。

とりあえず目の前にある料理を食べながら会場全体を見渡してみる。みんな楽しそうだ。


「姫、ラストダンスが駄目ならせめて一番最初に僕と踊ってくれないかい。」


「すみません、ゼオ。私、ラストダンス以外は踊るつもりはありません。」


 オーケストラ隊がダンスの曲の演奏準備を始めたあたりで妙にキザっぽい男が

リリィクに絡んでいるのが見えた。


「おお麗しの姫よ、そんなこと言わずに。僕と踊れば気持ちも変わるかもしれないじゃないか!」


 なんだこいつ。


「ああ、また始まったよ。」


「バスラ・ゼオのリリィク姫口説きか。」


「姫はああいうキザな奴が嫌いなのにな」


「ユリアル姫の護衛だなんだと足繁く通ってる割には冷たくあしらわれてるよね。」


「まったく、レイピアの腕では並び立つ者が無いと言われているのに、あれじゃあ台無しよ。」


 お互いの国で有名になるくらいの男らしい。良い意味でも悪い意味でも。


「おお、そんなに冷たくしないで。さあ、恥ずかしがらずに……」


「恥ずかしいのは貴方です。失礼します。」


「ああ、行かないで美しき……む!?」


 リリィクが去り際にチラリとこちらを見て手を振ったのをバスラ・ゼオとやらは見逃さなかった。

ずんずんとこっちに向かってくる。正直関わり合いになりたくない。


「そうか、君が噂のキリハラ・ユウト!僕の姫に手をだすとは恥知らずな奴め!」


「恥ずかしいのはお前だ。じゃあな。」


 リリィクの真似をして立ち去ろうとしたが肩をがっちりつかまれてしまった。


「ちょっと待ちたまえ。ポッと出の庶民が僕の姫のラストダンスの相手なんて納得いかない。

 僕と勝負だ!君が負けたら僕にラストダンスの権利を……」


「バスラ・ゼオ。」


 奴の後ろからリリィクの冷たい声が聞こえた。これは相当怒ってるぞ。


「私が小さい頃何と呼ばれていたか知っているでしょう?これ以上勇人を困らせることがあれば、

 誰とも口もきけなくしてしまいますよ。」


「うぐっ、すみませんでした……」

 ひどくうなだれて去って行った。彼女が小さい頃なんて呼ばれてかも気になるが、

それ以上に気になることがあった。今彼女は俺のことを……


「申し訳ありません、霧原。あの人も悪い人ではないのですが……」


「あ、ああ、そうなのか……」


 俺の気のせいだったのか?そう呼ばれたいと思う心が聞かせた幻聴だというのか!


「霧原、ラストダンス、楽しみにしています。」


 リリィクは微笑んで去って行った。正直それだけで他のことはどうでもよくなった。


「うむむ、羨ましい、羨ましいぞキリハラ・ユウト。ここはひとつお互いのことを

 よく知ろうじゃないか。そう、まずは敵のことを知るべきなんだ!まずは僕から!

 僕の名前は『バスラ・ゼオ』。剣の国ガルマンドではレイピアを最も上手く扱える者

 として知れ渡っている!」


 そして、リリィクを追い掛け回していることでも有名である、と。


「む、何か失礼なことを考えているね?まあいい、さあ、次は君のことを教えてくれたまえ!

 さあ!さあさあ!!」


 限りなくうざいんだけど……。っていうかいつの間に戻ってきてたんだ?まあいいか、

正直時間も持て余してるし付き合ってやるか。


「霧原勇人、魔道砲使い、リリィクのラストダンスの相手になってます。」


「……君は僕をバカにしているのかい?」


「ああ、そのつもり。」


 拳を握り締めてわなわなと震えている。この反応を見るに、プライドは相当高いらしい。


「もう許さないぞユウト!僕は誰が何と言おうと君に勝負を……」


 言い終わるか終らないか、その出来事は突然起こった。


「何だ!?」


 ガラスの砕ける音、一呼吸置いてバルコニー側に居た人達が一斉にこっち側に押し寄せてくる。


「リリィク!」


「はい、ここに居ます!」


 リリィクが人込みをかき分けて駆けてくる。彼女の無事を確認して安心した直後、声が上がった。


「ソ、ソリ・アリだっ!」


「は、早く逃げろぉっ!」


 人々の混乱がますます大きくなる。無差別殺人鬼が飛び込んできたんだから人々の反応は

当然のものだ。俺には納得いかないが……


「霧原、行きましょう!」


 そう言って彼女が指さしたのは出口ではない。


「ソリドの所に行くんだな?」


「はい。」


 きっと彼女は俺の心を汲み取ってくれたんだろう。俺に会ってから彼女が変わってきていることも

知っているから、俺が行かなくてはならないんだと、そう言ってくれているんだ。


「ちょっと待ってよ。ソリ・アリってあのソリ・アリなんだろう?そんな危険なところに

 姫を連れていくっていうのかい!?」


「行かなければなりません。もし本当に彼女なら霧原が行かないとまともな話はできないかも

 しれませんから。」


「だったらユウト一人で行けばいいんじゃないかい?何も姫が一緒に行くことなんて……」


「霧原が行くのなら私も行かなければなりません!」


 言葉を遮るようにリリィクが怒鳴った。あまりの剣幕にゼオが言葉を飲み込んだだけでなく、

周囲も静まり返ってしまった。


「う……おう、ユ……ウト……ユウト……早く……逃げるのだよ!」


 ボロボロになっているソリドが立ち上がってこちらに歩いて来る。

だが、それを遮るように小さな影が立ちふさがった。


「ユリアル、何を……!?」


「…………」


 リリィクの声に耳を貸さず、彼女は背中に装着している大剣に手をかけると、

無言でそれをソリドに叩き付けた。正確には斬り付けたと言うべきなんだろうが、

彼女の剣はあまりにも大きく叩き付けたという方が正しく思えた。一方ソリドは

蛇腹剣を絡ませて辛うじて剣を止めていた。しかし、その衝撃は凄まじく、

周囲の床に亀裂が走るほどだった。


「う、ぐぅ……この……娘も……操られて……!?ユウトだけじゃない……みんな……

 皆逃げるのだよ!」


 ソリドの叫びで我に返った人々が我先にと出口へ殺到する。


「くそっ、少し荒っぽいが仕方ねぇっ!」


 そう言って王が出口側の壁の前に立った。


「壁の向こうにいる奴らも聞こえるな!?しっかり下がってろよ!!」


 王の力強い声に辺りが再び静まり返る。


「耳を塞いでください!」


 リリィクの声にハッとしたように全ての人たちが耳を塞いだ。


「霧原も早く!」


 何が何だかわからなかったが俺も耳を塞いだ。ソリドは器用に蛇腹剣で耳を塞いでいた。


「我が咆哮は全てを平伏す獅子の咆哮!震え、砕け、破壊を紡げ!デストロイ・ハウル!」


 王が呪文の詠唱を終え一気に息を吸い込む。そして一気に吐き出すように咆哮した。

全身がビリビリと震えるほどの凄まじい音量。正面にあった壁は耐えきれずに崩れ去った。


「女性や体の弱い奴らはこっちからだ。バスラ・ゼオ、誘導してくれ!」


 ゼオは無言で頷き駆けて行った。


「よし、男たちはバルコニーに走れ!緊急用のラダーがある。そっちを使って…………」


 不意に王の言葉が途切れた。そして、誰もが王の方を見て戦慄した。





「カルメア様……どうして……」




 リリィクの顔が驚きと戸惑いで青ざめる。俺にも信じられない。


 王の言葉が途切れたのはカルメア女王が剣を突き刺したからだった。


「カルメア……そうか、俺たちは遅すぎたんだな……そうなんだろう、ストリア!!」


 その問いに答えるように床に魔法陣が出現した。魔道書に乗っていた転移の魔法のようだ。

そこから現れたのは不敵な笑みを湛えたストリア大臣……


「ククク、ウククク、いやいや、先に剣の国を支配するのは容易かったぞ。

 何せ素敵な協力者がいたからなぁ。」


「傀儡の魔法か、えげつねぇな。」


 王は気丈に振る舞っているものの、剣の突き刺さっている場所が非常にまずい。

心臓の位置だ。


「そうだ、ストラー様が掛けてくださったのだ!いや、正しくは新しくストラー様と

 なった御方だなぁ。」


 そこに大臣の後を追うように魔法陣から人が現れた。


「そんな……嘘でしょう……」


「ちっ、冗談だと言ってほしいもんだな……」


 それは会場に向かう前に見かけた少年だった。


「さあ、ストラー様、あなたの望む世界を作るため、その手始めとしてこの国を掌握しましょうぞ!」


「ぼ、僕が……せ、世界を手に入れるんだ……」


「さあ、さあ!その男に刺さっている剣を抜くのです!」


 その言葉に促されるようにカルメア女王が剣を手放し少年が柄を握る。


「ぼ、僕が!」


 少年は一気に剣を引き抜いた。


「くそっ……」


 王の胸から鮮血が溢れ辺りを赤く染めていく。そしてその体は力なく地面に倒れ伏した。


「やった!やったぞ!!カルメアを封じガルオムの息の根を止めたぞ!

 これで後は『ウルリット・スピアラ』の娘、お前を殺し、カルメアと子供たちを殺せば

 復讐は完了だなぁ。」


 フードを脱ぎニヤニヤと笑いながらリリィクの方を見る。


「何故母の名を……貴方は一体……」


「この男なら答えてくるかもなぁ?まあ、傷を癒せるような奇跡の魔法でも使える奴が

 ここにいればまだ間に合うかもなぁ?ウクク、守護龍の娘以外にそんなことができる奴が

 いるかなぁ?呼びに行くか?間に合わないだろうなぁ、クククククク。」


「さあ、どうかしら?ねえ、ソリド?」


 今まで黙っていた機械人形が不敵な笑みを浮かべて何故かソリドを見ている。


「貴女になら分かるんじゃないかしら?」


 ソリドは剣を支えたまま機械人形を見、目を見開いた。


「あ……ああ……ストラーと……同じ臭いなのだよ!」


「少しは思い出せたかしら、貴女のこと。」


「お嬢さん、通してもらうのだよ。少し痛い思いをするのは勘弁してほしいものだね!」


 そう言ってユリアルを指さす。それと同時に彼女の正面を埋め尽くすほどの大小様々な

魔法陣が出現した。


「轟流、撃ち抜き潰せ!ジェットブラスターッ!!」


 彼女が叫ぶと同時にすべての魔法陣から凄まじい勢いの水流がユリアルに向かって放たれた。

一瞬障壁で弾いたように見えたが、あまりの勢いに耐え切れずソリドに絡め捕られていた剣から

手が離れ遥か後方の壁に叩き付けられ意識を失ったようだ。

 ソリドは奪った剣を放り投げると機械人形の所へ駆け寄った。そして、迷いなく二つの蛇腹剣を

突き刺した。


「お見事。でも私は……ストラーじゃない……わ……」


「機械人形!」


 剣を引き抜かれると同時にその体が力なく床に崩れ落ちる。


「臭いが移った……上から!」


 ソリドが天井を見上げる。同時に機械人形が天井を突き破り降り立った。


「替えの身体は作っておくものね。戦闘用に改良したものよ。少し遊ばないかしら、ソリド?」


「……水を使えること、今思い出せたのはこれだけなのだよ。」


 倒れて動かなくなった方の機械人形からずるりと剣を引き抜くと、

降りてきた機械人形のもとへと近付いた。だが、ある程度の距離を保って足を止めた。


「ユウト、もう手遅れかもしれないのだよ。本当は君を手助けするためにここに来たのだけれど、

 君よりも強い記憶の臭いを感じてしまったのだよ。」


「ソリド……。」


「それに、その男、ガルオムの臭いが嫌いなのだよ。きっとエーテルに好かれすぎているのだね。」


 ふっと振り返り王を指さして言う。王の手が動いた気がした。


「……はっ!おのれ、カルメア、もう一度その男を……」

 一瞬誰よりも早く大臣が我に返ったが、その言葉に応えたのはカルメア女王ではなく

ガルオム王の咆哮だった。その衝撃で大臣も女王も少年も吹き飛ばされた。

立ち上がった王の胸の傷は塞がっていた。


「そうか、お前もウルリットと同じ……!」


「くっそ痛かったぞ。それにお前の顔、忘れるわけがない!」


 王が何かを指で弾いてリリィクに渡した。それは小さなブローチだった。


「それはスピアラの紋章、リリ、お前の母さん、ウルリットが持ってたものだ。

 そしてこいつは『トーマ・ボルスト』、俺とウルリットとカルメアの三人で討伐したはずの

 星啜りの使者だ。」


「私も知っているわ。かつてストラーに生み出され、その野心に惹かれ妄信していた

 質の悪いやつよ。」


 王と機械人形は正体を知っているらしい。


「ククク、そうだ、ストラー様の望む世界を作るため、私はそのためにあの方に生み出されたに

 違いないなぁ。こうして世界を掌握すればいずれは本物のストラー様が帰ってきて

 くれるはずさぁ、ウククククク。」


「そ、それまでは、ぼ、僕が、ス、ストラーとして、せ、世界を……」


 少年はどもりながら大臣、いや、トーマの言葉に続く。


「で、四人だけでなんとかなるとでも思ったのか?」


「まさか、さっき自分で言っていたじゃないか、遅すぎたとなぁ。」


 その言葉に呼応するかのように外ら悲鳴が上がった。一つだけじゃない。

いくつもいくつも悲鳴が上がった。


「リリィク!」


 気が付けばリリィクがバルコニーの方に走っていた。外を確認しに行ったんだろう。

慌てて後を追った。


「これは……っ!」


「ひどすぎます……」


 眼下には信じられない光景が広がっていた。瞳に生気のない兵士たちが人々の退路を塞ぎ

襲いかかっている光景だ。その兵士たちは魔法を使う者もいれば剣を使う者もいた。


「逃げ場はないなぁ。両国の兵士のほとんどが我が手の内だぁ、ウクククク。

 さあ、カルメア、あの二人から先に始末するんだ。」


 あまりにも素早かった。気付いた時には俺たちの真上に居た。双剣を根元で合わせ、

刀身を削るように外側に向けて斬り払うのが見えた。


「アクセラレート!」


 俺は迷わずリリィクを抱き寄せると加速の魔法を使って屋内へと駆け込んだ。

だが、踵の先に何かが触れバランスを崩して左肩を床に擦りつけてしまった。

加速の空気抵抗を防ぐために張った障壁がいくらか衝撃を和らげてはくれたものの、

肩の部分の布地は擦れて無くなってしまった。


「何が……」


 起こったかはすぐに分かった。さっきまで立っていた場所が斬り裂かれていたのだ。


「ほう、音速で飛ばされる粒子をかわすとは魔道砲使いの名も伊達じゃないのだなぁ?」


 その言葉に耳を傾ける余裕はなかった。着地したカルメア女王が即座に振り向き

もう一度剣を構えたからだ。


「させるかよ!歪め、歪め!ひたすらに!!ディストーション・ボイスッ!」


 女王が斬り払うと同時に王の放った音の嵐が吹き荒れ、放たれた音速の衝撃波を掻き消した。


「ここは俺が何とかする。お前たちは逃げろ!」


「逃げるってどこに!?」


「それに父上は……!?」


 王は女王を睨みつけたまま目を逸らさない。後ずさりしたくなるような緊張感が辺りを包んでいる。


「『森の大賢者』の所へ行け。アリスにも緊急事態にはそこへ行くように言ってある。」


「クク、逃げるのか?ウクク、逃げ切れるかなぁ?まあ、私は手を出さないでいてやろうぞ、

 ウククククク。」


「ありがたいお言葉だな。さあ、行けっ!」


「だがっ……」


 行くべきではないと思った。


「俺のことなら気にすんな。さっきも見たろう?ちょっとやそっとじゃ死にはしねぇよ。」


 俺にも何かできるはずだと思った。


「ストラーの理想を掲げるなら人々を殺すことはしないはずよ。死にかけでも生きていることが

 重要だから。今は貴方達が森の大賢者とやらに会うことが重要なのよ。さあ、行きなさい。」


 でも……


「霧原、行きましょう……」


 リリィクは俺の手を引いた。その手も声も震えていた。

彼女の方が俺よりもずっとここに残りたいはずなのに……

 それでも彼女は俺の手を引いて、迷う俺に向かってもう一度言った。



「霧原、行きましょう!」


 さっきよりも力強く、まっすぐに俺の目を見て言った。


「……ごめん、行こうか!」




 俺はリリィクを抱え上げて走り出した。お姫様抱っこってやつだな。そうでもしないと

彼女はドレスのままでうまく走れないだろうと思ったからだ。




 抱え上げた彼女が震えていた。それがとても印象的だった。
















「エーテル特異体、難儀なものね。」


「お前も同じようなもんだろ。」


「ふふっ、そうね。」


「さあ、お前たちも行けよ。」


「ええ、そうさせてもらうわ。行きましょう、ソリド。」


「おう……おう……」


「どうかしたのかしら?」


「名前、そう…………ハーシュ……ハーシュなのだよ!」


「あら、思い出してくれたのね。」


「それだけ……なのだよ。」


「そう、それじゃあ遊びましょうか?もしかしたら、もう少しぐらい思い出せるかも……」


「……おう、了解なのだよ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ