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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「私がこのミステリーを没にした訳」

作者: 夕霧湖畔

※大ジャンル、恋愛。

  ◇◆◇◆◇◆◇◆



 私はある時ミステリー小説を書こうと思い至った。

 何故と問われても困る。無性に書きたかったからとしか言い様が無い。

 私は本を読むのが好きだが、物語を完成させるのも好きなのだ。


 取り敢えず最初に決めるべきは登場人物。


 主人公は何を考えているのか分からない不思議ちゃんw

 外見は何でも良いけど、取り敢えずは美少女って事にしとこうかな?折角性格を捻ったんだから、多少は読者の気持ちも意識しないと。


 探偵役は熱血少年にしとこうかな。この年代は少年って呼ぶべきかそれとも青年の方が良いのか結構迷う。

 でもまあ、殺人事件だしR18Gに属するんだから、青年にしておこう。

 熱血青年。いややっぱり語呂悪いな熱血少年でw


 後は犯人役と、登場人物を選んで。大体事件の概要を決めて。




 事の起こりは、やっぱり探偵役と読者の視点は揃えなきゃだよね。

 じゃあ導入は不思議ちゃんに誘われて、親戚の家に遊びに行くところから。


 不思議ちゃんと熱血少年は幼馴染なのです。

 まぁ有りがちだけど、しょうがないしょうがない。

 ココで変に捻って脚色過多にして、導入を分かり辛くするのは逆効果です。



 さて。物語が本格的に始まるのは、っと困ったぞ。

 考えてみれば不思議ちゃんを含め、登場人物は当然全員自分のロジックに従って動き回ります。


 となると心情描写が全て明らかになった不思議ちゃんって果たして本当に不思議ちゃんだと言えるんでしょうか?

 ムリだなwむしろロジックちゃんに改名されそうw

 だって内心含めて彼女のロジックだけは読者バレするもの。


 という訳で、もう彼女は色々隠す事にします。

 心情描写含め、行動で内心バレしないように視点も一部カットしましょう。


 この物語の主軸は、不思議ちゃんから見た熱血少年くんなのです。

 盛り上がりに欠ける要素は全部しまっちゃいましょうね~?



  ◇◆◇◆◇◆◇◆



 という訳で、書き終えた作品がこちらです。


 え?何で今どき紙かって?だってネット投稿したらもう完成じゃない。

 先ずは身近な人間に見て客観的な意見を貰わないと。

 ネット投稿なんて、誤字脱字修正が終わった最後の段階ですよ。

 ここに在るのは完成前、身近な友人に呼んで貰って先ずは感想を聞くのです。


 というか第一読者は既に決めているのです。

 むしろ彼が駄作だと断じたら、この作品は世に出しません。

 皆まで言うな、私にとって彼はそういう存在です。



 さてはて。

 とはいえこれを読んで貰うためだけに呼び出すのは、流石にちょっと色々と抵抗があるんだよね。

 なんていうの?乙女的な恥じらい、違うな。まあ何だっていいか。


 ある程度長くいても問題無い、図書館や喫茶店は無理か流石に。というか人気の無い場所で読んで下さるととても有難いですw

 じゃあ海は風が強いと困るので却下、というか野外は全般駄目だね。


 仕方が無いのであの市民プール跡はどうでしょうか?

 廃墟なのは頂けないけど、あそこなら日が明るいうちに行っても大丈夫だし。




「へぇ。ここ釣り堀になっていたんだ。」


「知らないで誘ってたのか?

 今は稚魚を育てているから、当分関係者か身内にしか入れないぞ?」


 季節が来るまで閉鎖中という事か、じゃあ私達は身内枠として入れたのか。


「まあ待ち合わせが出来て、待ってる間暇が潰せれば良かったからね。」


「廃墟でどうやって暇を潰す心算だったんだよ。」


 苦笑する彼に本題です。待合室で幸いにも稼働していた自動販売機で選びながら書き上げたミステリー小説の感想を聞かせて欲しいとお願いする。

 早く読み終わったら遊びに行くのも有りかも知れないが、そうか。

 考えてみれば読むのに手間取ったら、何時間と待ち惚けする私の姿が監視カメラに映る事になるのか。それはそれで間抜けかも知れない。


「ここ従業員区画だぞ。受付じゃないんだからカメラとかねーよ。

 この部屋金庫も無いんだぞ。」


 プールなら常時稼働中らしいが、流石にそっちまで行くことはあるまい。

 少し残念な気もするが、別にカメラで遊ぶ気も無いから関係無いか。


 彼も特に気にしなかったので、適当な席で読み始める。



  ◇◆◇◆◇◆◇◆



 導入が親戚の家に遊びに来たところからってのは伝えたかな?


 まあ事件の始まりはざっとで言うと、親戚達の集まりに不思議ちゃんと熱血少年が同行して現地に着いた後。

 まあ雑に言って、この集まりは不思議ちゃんの祖父が死んだからなんだよね。

 葬式は既に終わって、後始末のための会合な訳です。不思議ちゃんの祖父は所謂資産家、結構なお金持ちなのだ。


 ゆるふわお嬢様?残念ながらそうはならなかったのだ。何せ不思議ちゃんは幼い頃に両親を失って、親戚の元で暮らしてましたから。

 熱血少年との付き合いはそうして始まったのです。下手な家族より身近だよ!




 彼もどっかで聞いたような話だなと苦笑してましたが、私は一切気にしません!

 だってこれはギャルゲーじゃないからね。

 不思議ちゃんと熱血少年の関係に、特別なサプライズは必要無いのだ!




 閑話休題話を戻しまして。彼も再び小説を読み進めます。


 このミステリーは定番の殺人事件物です。ここは普通に王道だよ!

 親戚達は皆が皆、お金が欲しい理由ばかり。でも単純にお金だけあれば解決しない点に注意です。お金で何をするのかが全員違うのさ。


 それぞれに欲しいものを主張し、しかし資産の数は足らず。

 そんな事に少年少女達は関係無いんだけどね。


 とにかく。喧嘩別れに終わって次の日に冷静になってからまた話し合おうと一旦仕切り直したその次の日。


 熱血少年はあわや、第一発見者として事件に巻き込まれてしまうのです!


 まあ彼が真犯人という事は無いんだけどね。何せ彼が探偵役です。

 でも大人達には関係ありません。むしろ好都合とばかりに攻め立てました。

 何でかって?少年の父親が既に遺産の一部を受け取っていたからです。


 大人達は少年を犯人かその関係者扱いする事で遺産の再配分を要求し、自分達の取り分を増やそうと目論みます。

 熱血少年は自分への冤罪を晴らすため、そして続々と続く殺人事件の真犯人を己の手で捕まえるため、事件の解決に挑むのです!




 あらあら、あなたも少年の気持ちがすっごい分かる?

 感情移入して頂けて何よりです。え、違う?

 やり過ぎ?そうかな、そうかも。




 兎にも角にも彼らは大人達の目を掻い潜って手掛かりを探し。

 その間にも続く、第二第三の殺人事件。こうなってくると流石に真犯人が熱血少年説は無理があります。


 むしろ熱血少年だけは無罪だと、大人達は確信している御様子。

 不思議ですねぇ。冤罪を押し付けたのは大人達自身ですのに。


 熱血少年の疑問に答える様に、大人達は少年の監視を始めます。

 少年は一計を講じて不思議ちゃんの協力の元に彼らの監視下から逃れます。


 そして不思議ちゃんの一言から熱血少年は大人達の遺産への執着に疑問を抱くと彼らの言う遺産の調査を開始。

 実は真犯人の目的は遺産などでは無く、十数年前彼らが起こした殺人事件に端を発している事を突き止めて。


 遂に犯人のアリバイを見破り、殺人犯を突き止めるのです!




 彼も次第に手が震え、小説を食い入る様に読み進めて。

 紙をめくるペースがドンドンと上がっていきます。

 のめり込んでくれる作品になったようで何よりです。




 え?肝心なところを暈し過ぎだって?

 それは当然でしょう。何せこれは小説そのものでは無いのですから。


 真相が知りたいのなら、完成稿の発表をお待ち下さ~い。



  ◇◆◇◆◇◆◇◆



 え、それで終わっちゃダメ?他の作品との違いが全然判らない?


 しょうがないなぁ。じゃあグレーゾーンだけど微妙なネタバレを。

 実は事件の主犯は単独犯ではありません、複数犯です。


 但し共犯関係は全く無かったのは御存じの通り。殺人犯達はお互いを目的のために利用しただけなのです。

 ややこしかった理由は、彼らがお互いに自分のアリバイを確保するために真犯人達の痕跡を勝手に消していた所為かな。

 殺人犯達は、お互いを最後の標的に定めていたんだよ。

 だから彼らはお互いが真犯人だと思って、一切協力関係にありません。


 けれど彼らの目論見は、熱血少年に過去の所業を明らかにされた事で、全てが脆くも崩れ去ったのです。

 あわや二人の犯人は、そのまま警察の御用となって全てを失いました。




「……なあ。これって。」


「感想は最後まで読んでからにしてね?

 返答でネタバレは御法度だよ?」


「…………ああ、そうだな。」




 とまぁ、後は後日談的エピローグかな。

 え、ここも?良いけど、肝心なところは暈すからね?


 今回の連続殺人事件に加え、十数年前の殺人事件が明らかになった事で、彼らの親戚関係はボロボロです。

 遺産関係は唯一無罪と判定された、不思議ちゃんの元に全部一旦集められたね。


 でもまぁ、大部分は売却処分だよ。だって殺人事件塗れの不動産物件とか管理費だけでも膨大だしね。直接目にした物件なんて殆ど無いし。

 最終的には今の家を出る事になったし、新居と金銭以外は碌に残りません!

 しかも処分も基本弁護士任せです!だって事件現場だから、警察の調査が必要になるんだよ?ずっと関わるだなんて絶対出来ませ~~ん。



 そんな事はどうでも良い?でもそうなると難しいな。

 十数年前の真相は大体作中で全部明らかになってるしね。じゃあ今回の事件での殺人犯二人の末路かな。まあぶっちゃけるとザマァ案件です。


 一人は熱血少年の手で十数年前の被害者が生きていると知って裁判前に既にノイローゼになっていて、睡眠薬に偽装した毒薬を飲んで苦しみ抜いて死にました。

 事件前に自分で買った毒だったから、事件性は無しって結論になったよ。

 他に自殺出来る薬を持ち込めなかったんだろうね、因果応報です。


 もう一人は警察を振り切って逃げ出してるね。といっても逃げ切れないと悟って無理矢理妙な洞窟に逃げ込んで、古い神社の防犯設備を作動させてね?

 それが江戸時代のものだったからもう大変。彼は自分の悲鳴で警察に逃げた先を教える羽目になった挙句、警察に救助して貰おうと必死でした。

 でもまぁ。流石に間に合いませんでした。残念無念。そうでもない?



 他の関係者?それを教えちゃうと重大なネタバレなんだけどなぁ~~……。


 じゃあしょうがない。実はこの作品における関係者に、十数年前の事件と無関係な登場人物は存在しません。

 無関係な方々は警察関係者と同様、名無しのモブなのです。




「ねえ、あと少しだからちゃんと最後まで読んでよ?」




 え?本当にって?一人だけ名前が出てない登場人物がいないかって?

 それが居ないんだなぁ~~~~。




「ん?全部ちゃんと書いてあるよ?ミステリーだから暈してる部分はあるけど。

 ヒントは全部揃ってるでしょ?」




 そうだよ?十数年前の事件の中で。

 何も知らないで嘘を吐いて、二人を殺した事件を闇に葬ったある意味元凶。

 彼は自分が関係者だって、知る機会は一度も無かったの。

 自分で疑問に思って調べようとすれば、直に分かった筈なんだけどね?




「もぅ、最後の一ページじゃない。

 そこまで読んだら、読むのを止めたって同じじゃない?」





 しょうがないなぁ。手が震えてるんじゃ、紙が持てないか。










「『 う し ろ の 正面 だぁーーーーっ れ だぁ 。 』」





 みすてりー要素の補足ヒント。

 宣伝コメントの下にあるので、自己責任でご確認下さい。



 半宣伝作品wミステリーやホラーはネタが思い付いた時に勢いで書いてます。


 現在「ジュワユーズの救国王子~転生王子の胃痛奇譚~」を投稿中。

 代表作は未だ「ガラクタの学園」w。完結作2「炯目の刺繍鳥」。

 他「作者は疲れてるシリーズ 」「人よ持て成せ神様談義~四コマ風小説~」「 一つ目の白髪鬼は悪役令嬢に転生したようですよ?」「 これはあなたの友人からの懺悔です」等を投稿。



 作品を面白い、怖い、コノヤロウw等と思われた方は下記の評価、ブックマークをお願いします。リアクションや感想等もお待ちしております。



 以下、ヒント。


 1.十数年前、死んだのは?

 2.真犯人、犯人、殺人犯。違いは何?


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