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あなたはここにいて  作者: 木犀
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 やわらかい世界観にしていけたらと思ってます。初心者なので温かい目で読んでくれるとうれしいです。

 物心がついた時から私はその家族の一員だった。家族というか仲間のようなものだけど。そこ、私の家と呼べる場所は都市の中心部に近い所にある。建物内には賭け場や楽器の並ぶ部屋、本の並ぶ部屋、屋内訓練場など色々な部屋があり、とても広く、快適な場所だった。


 メンバーは六人くらいだ。少なくとも私はそうとしか聞いていない。母親がわりのアリー、父親がわりのジル、私の他に12、3の子でルーカとウラン、そしてロキだ。ロキは私にとって兄のような存在でもあり、好きな人でもある。ロキは背がとても高く、血のような赤黒い長髪を艶やかに流したとてもかっこよくて色気もある20歳くらいの人だ。ずっと一緒に暮らしているうちに私にとってロキはなくてはならない存在になってしまった。


 「ロキ!ねーえ、ご飯食べよう!」


 「おい、ユアン、腕にぶら下がんなって言ってんだろ。重てえ。」


 「別にいいじゃん。ロキはめっちゃ筋肉あるから、これくらい。一緒に行こうよー。」


 「仕方ねえなあ。」ロキは私を腕に抱えなおして一緒にお昼を食べに向かった。ロキはわかってない。そうやって毎回仕方なさそうに、けれどやさしく笑ってなんでも許してくれるから、私は甘えてしまうのに。ロキのことは最初から結構好きだった。だけど、構ってくれと私が話しかけるたびに最初は眉を顰めながら相手にしてくれていた。でもそのうち、今のように仕方なさそうに笑ってたくさん話してくれるようになった。その間に私はロキの優しさを好きになっていった。アリー達はいう。外には怖い人もいるから誰かに付き添ってもらって出るんだよ、と。ロキに守ってもらいな、と。だからだろうか、ロキの側は居心地が良く、何も不安がないように思える。


 「今日、別の場所に移動することになったよ。」


 「アリー⁉︎急になぜ?」


 「ここはライバルというか敵が来やすそうだからね。大丈夫だよ、移動するところも内部はここと変わらないからね。」


 「でも・・・」


 「いいから。とりあえず、荷物は輸送装置で送って。皆、出るよ。電車で移動する方と車移動の方に分かれるからね。」


 「りょーかい。」「「「はーい」」」


 外に出て複雑な道をしばらく歩くとそこに駅がある。当たり前のようにロキと一緒かと思って同じ方向に歩こうとしたけど、「あんたはこっちだよ。」とアリーに引っ張られ、連れられた。あっという間に電車に乗ったアリーとルーカそして私はドア近くにまとまって立っていた。周りに人がいるため、声を上げるわけにいかず、静かにしていたが、私は不安で仕方なかった。あっというまに心が曇っていってしまう。


 「こら、そんなに不安そうな顔をするんじゃないよ。」アリーがそんな私を見て言う。


 「アリー、ロキは?何で一緒じゃないの?」ささやくように聞く。


 「向こうで合流することになってるんだよ。何も起きないから大丈夫だよ。」


 「だって、敵がいるかもしれないじゃない。ロキは大丈夫かな。」すごくすごく不安だ。いつも見ている赤い髪も広い背中も見えないのが。声も聞こえないのが。


 「ユアン、ロキお兄ちゃんは大丈夫だよ。ただ移動するだけだもん。」ルーカが声をかける。


 「うん・・・・・・」


 アリーは俯いたまま不安そうなユアンを見ながら心の中でため息をついた。ユアンがロキを頼っているのも好きなのも知っている。また、ユアンがロキ以外の自分達も信用していることもわかっている。だけどそれ以上にユアンにとってロキは自分を守ってくれる存在なのだ。不安になるのも無理はなかった。


 「ほら、着くよ。そろそろ降りるからね。」


 駅を降りると、そこは道路の近くから住宅地が広がっていた。そこをアリーの後をついて通り抜けていくとまあまあ歩いた所に二階建ての綺麗な白壁の大きめの家があった。その前にはもう車が一台止まっている。


 「ここだよ。」


 「ここ?」


 「そうだよ。不便もないし、住宅街に紛れれば逆に見つかりにくいだろ。もうジル達は着いてるみたいだね。」


 その言葉にユアンはハッとなり、慌てて駆け出して家の中に入り、ロキを探した。アリーの言った通り、内部は前と変わらず、ある部屋も同じだった。そこを片っ端からのぞいていくと、一室で荷物を片付けている赤が見えた。


 「ロキ!」大きな声で呼びかけ、同時に背中に抱きつく。


 「うっ。なんだよ、驚かせんなよ。」


 「ロキ、大丈夫だった?何もなかった?」


 「なんでそんな心配してんだ?特に何もなかったぜ。ユアンも移動で疲れたんじゃないか?休んどけよ。ユアンの部屋は2階の一番奥の右手側だからな。」


 「・・・うん。」そう言って2階に上がっていくユアンをロキはしばらく眺めてから片付けを再開した。




夜、子供達が寝た後、アリーはリビングとなっているところでロキを呼び止めた。


  「ロキ、今日あんたに言いたかったことがあってさ。」


「なんだ?」


 「ユアンが随分とあんたに心を傾けてるね。今日だってあんたと一緒に移動しないだけでものすごく不安そうに、心細そうにしてたよ。」


 「だからなんだ、アリー。」


 「ユアンはもう戦い方を学んでいて、自衛もできる子で、しかも優秀だよ。頭も良い。けど、あんたから離れただけで頼りなくなるのは困る。あんまり依存させないでくれるかい?」


 「依存させてるつもりはない。第一、最初に仲良くなろうとしてきたのはユアンだ。もしユアンをそうしたくないなら俺から離さなきゃ良いだろ。」


 「ロキ、あんたはそうじゃないかもしれないけど、ユアンにとってあんたは特別なんだよ。だけどユアンがあんたといて幸せになれてないなら、あんたが距離を置いてくれなきゃ。」ロキがアリーの言葉に目をすがめる。


 「アリー、俺がいつユアンを大切じゃないって言ったよ。」目をわずかに険しくしてロキは言った。仄暗い空間でロキの琥珀色の目が熱を帯び、光を発しているようだった。


「ロキ、本当かい?だってそんな雰囲気さえ一度も出さなかっただろう?」


 「俺がああやって言うことを聞くのはユアンだけだ。・・・まあ、あいつは気づいていないみたいだけどな。じゃあ、俺はもう寝る。おやすみ、アリー。」


 「あ、ああ。おやすみ。」






 ロキは自室に入って着替えると、息をついた。ユアンが自分の特別になったのはいつからなのか。それは自分にもわからなかった。ユアンは最初から自分に結構話しかけてきていた。自分は、ユアンが年下なこともあって、相手をするのが少し面倒だったのを覚えている。だけど、ユアンは良く違和感や相手の気分に気がつく子で、だんだん一緒にいるのが楽と感じるようになった。アリーがロキに対して、「ユアン達を守るように。」と言っていたのもあるが、自分がユアンという存在を失くしたくなかったのもあり、自分が守るものだと思うようになっていた。しばらくそうして一緒にいるうちに、ユアンが甘えて飛びつくのも、わがままを言うのも、一緒にいようと寄ってくるのも、自分だけだと言うことに気づいた。それに気がついた時、ものすごく内心嬉しかった。ユアンが大切だと気づいた。それ以来、ずっと今のような感じだ。あまり、そういう感情を見せないようにしてきたが、なぜアリーにああ言ってしまったのかと、自分で少し後悔した。けれど、ユアンへの態度は明日からも変わらないし、変えない。自分はユアンと一緒に過ごせれば良いのだから。


 「俺も結構やばいかもなあ。」そう呟いて、ロキは目を閉じた。  



 更新は不定期になることが多いと思います。それから、それぞれ話次第で同じ組み合わせの人の話が続くこともあれば、一話で終わって次の話に移ることもあります。

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