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第014話・お嬢様の実力


 おはようございます、ナナシです。


 現在夜明け前。

 いつもの起床時間より少し早めに目が覚めました。


 やはりアレですね。


 可愛い女の子のお足がすぐ近くにあると思うと、ついつい早起きしてしまいますね。


 まだお嬢様はお目覚め前のようなので、そっとベッドから起き出して、広場に出ようと思います。


「……っ!?」


 ベッドから降りてふとお嬢様のほうを見ると、な、なんと、お布団から足先がはみ出しているではありませんか。


 や、やばいです。


 あんな自然なチラリズムをされると、興奮して胸がドキドキしてきます。


 ああ、なんだかクラクラしてきました。


 お嬢様のお足、とっても美味しそうです……!


 ゴクリ……!


 ちょっとだけ、ちょっと(爪先)だけなら……。


「……うぅーん」


「っ!!」


 は! 危ない。寝返りを打ったお嬢様の声を聞いて僕は正気に戻りました。


 いけないいけない、また過ちを犯すところでした。


 昨日の今日で同じことを繰り返していては、僕を信じてくれたお嬢様に顔向けができません。


 僕は静かに家を出て広場に行き、気持ちが落ち着くまで広場の端から端まで全力疾走するのを繰り返しました。


 そして汗だくになってスッキリしたところで軽く水浴びをして結界服を着替え、神殿で礼拝をしてから朝ご飯の準備に取り掛かりました。


 今日はいつもより時間をかけてちゃんと朝ご飯を作ります。


 僕一人なら大量のお肉を焼いて食べるだけでもいいのですが、お嬢様にお出しするのにそんな独身野郎一人メシみたいなものを作るわけにはいきませんからね。


 ジャガイモみたいな地下茎を茹でて皮をむいてすり潰して岩塩を振り、円盤状にして両面を軽く焼きながら甘辛タレを塗り込みます。


 温めるとミルクみたいにとろける果実を火であぶってホットミルクもどきを作るのと、昨日採ってきた柑橘系の果物の残りを絞ってジュースにします。


 鶏卵みたいな果実をとき混ぜて焼いてスクランブルエッグ風にしたものと、プテラ君のお肉を薄切りにして焼いたもの。

 大きめのキノコもしっかり焼いてお皿に添えます。


 それと、あとは茹で山菜を少々。

 ほんとはサラダ風にしたかったのですが、さすがに生で食べるにはえぐみがありますので。


 うん、これぐらいあればいいでしょうか。


 そうこうしていると、お嬢様が家から出てきました。


 今日はきちんと身だしなみを整えてありますし、服も結界服ではなく、きちんと布の服を着ています。


 あの服は、昨日ここに落ちてきた時に着ていたものとも違いますね。


 たぶん収納空間にしまってあったものを取り出して着たのではないでしょうか。


 お嬢様が乗ってきた木箱の中には毛布やクッション等はありましたが、荷物らしい荷物は乗っていませんでしたので。


 今日のお嬢様は、白と薄緑のカラーリングの服で全身コーディネートしています。


 それに、昨日着ていた簡易ドレスみたいな脱がせにくい服じゃなくて、どことなく運動着っぽい作りの服です。


 銀色の髪も、今日は後頭部で縛ってポニーテールになっています。

 なんだかとってもスポーティーですね。


 お嬢様は僕を見つけて近寄ってくると、テーブルに用意された朝ご飯を見て頷きました。


「おはようございます、ナナシさん。今朝のご飯も美味しそうね」


「おはようございます、ハローチェお嬢様。今日も大変麗しゅうございますよ」


「ちなみに、本当なら、私が起きたときに顔を洗う水桶を持ってきたり、私の髪をすいて整えたり、私を着替えさせたりするのも貴女の仕事なんだけど」


 なんと、それはたいへんです。


 お嬢様が起きてくるのが遅いな、とは思っていたのですが、どうやらそれらを一人でやっていたので時間がかかっていたようです。


「申し訳ありません、お嬢様」


「いいわ。私もそのことを言ってなかったから、今日のところは咎めないわ。明日からは気をつけるように」


「御温情、まことに感謝いたします」


「ほら、せっかく温かいものが冷めてしまう前に、いただきましょう」


 僕とお嬢様は向かい合って座り、それぞれが食前の祈りをしてから食べ始めました。


 ぱくぱくもぐもぐ、ぱくぱくもぐもぐ。


 半分ほど食べ進めたところで、お嬢様がお口を拭きました。


「ナナシさん。昨日も言ったけど、今日は私も食糧調達に同行するわ。朝食後に少し身体を動かしてから行くようにしたいのだけど、よろしくて?」


「分かりました!」


 二人できれいにお皿を空にした後は、僕はテーブルを片付けて、お嬢様は昨日出した棒を持ってストレッチを始めました。


 お嬢様、身体がとても柔らかいです。

 百八十度開脚して地面にピタリと着くまで身体を倒せます。


 僕もスポーツを始めてから柔軟はしているのですが、なかなかそこまではいきません。


 お嬢様ならI字バランスとかも余裕でできそうですね。素敵です。いつか結界布製のレオタードを着てやってくれないでしょうか。


 さて、柔軟が終わったお嬢様は、長い木の棒を使って型稽古のような動きをしばらくした後、少しずつ、打ち込みのように鋭く棒を動かし始めました。


 その様子をみて、僕は感嘆の声を上げました。

 背丈よりも長い木の棒を、お嬢様はまるで自分の手足のごとく操っています。


「おおーっ!」


 これがスキルの複合使用というものの効果なのでしょうか。

 さながら中国武術の達人のような動きです。


 上段、中段、下段、からの足払い。


 長い棒の中心を自分の身体に添わせ、身体ごと回転しながら勢いをつけて打つ。


 大上段からの振り下ろしは、まさしく空気を切り裂くかの如くびゅおうと風鳴りがしました。


 さらに、お嬢様に言われて打ち込み用の的(丸太の杭を地面に埋め立てて、人間の頭と胴の高さに枯草を巻き付けたもの)を用意すると、お嬢様はさらに激しく棒を操り、的をボコボコにしていきます。


 踊るような、舞うような、華麗な動きとは裏腹に、遠心力を乗せた棒の打突は的に当たるたびに激しい音を響かせ、お嬢様の胴周りよりも太い丸太の的がギシギシとしなっています。


 そしてよくよく見てみると、お嬢様の身体の中を魔力が駆け巡っているのが分かりました。


 魔力を多く流したところは動きが重く鋭くなるので、やはり魔力によって身体能力を上げることができるのでしょう。


 最後に大上段の構えから槍投げの要領で、逆手で叩きつけるようにして棒を突き出すと、ドズンという音とともに丸太に棒の先端がめり込みました。


 お嬢様が棒を引き抜くと、的には丸い窪みができています。


 あれを顔面やみぞおちに喰らったとすれば、大の大人でも耐えきれずに昏倒することでしょう。


 すごい。お嬢様カッコ良い。


 そしてお強いです。


 残心から静かに元の構えに戻ったお嬢様に、僕は知らず知らずのうちに拍手をしていました。


「す、すごいですー! カッコ良いですー!!」


 見惚れるような美しさと荒々しさが共存した、まるで演舞のような棒捌きでした。


 お嬢様は、ふぅ、と前髪をかき上げます。


「ふふふ、それほどでもないわ。……けど、確かに今日はいつもより魔力の通りが良いし、スキルの効きも良いわね。なんだか不思議な感じ」


 お嬢様は自分の手をぐーぱーさせて、それを見つめています。


 僕は結界布製のタオルと冷たいお水の入った水筒をお嬢様に差し出しました。


「お疲れさまでした。とっても素敵でした」


「ありがとうナナシさん。けど、これはまだ準備運動よ。このあとは貴女と一緒に食糧調達に向かうのだから」


 おお、そういえばそうでした。


 お嬢様は自信満々な笑みを浮かべて、僕に言います。


「次は実戦で私の実力を見せてあげるわ! たくさん動いてたくさん狩って、今日も美味しいご飯をたくさん食べるわよ!!」


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