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第132話・天下無双のラーメン


 虚空蟲からは、非常に大きくて綺麗な魔石と、なんかウネウネヌルヌルしたもの(どうやら虚空蟲の尻尾の先みたいです)がドロップしました。


 皆で八十階層のリトライクリスタル部屋に入ってそれぞれ回復に努めている(ソウ兄ちゃんとキャベ子さんは僕の三重回復結界内にいます)と、フェアちゃんが僕の近くに寄ってきました。


「ねぇねぇナナシ。この気色悪いウネウネなんだけど」


 はい、なんでしょうか。


「これ、分類が()()()扱いになってる。これを食べると空間系スキルの適性が高くなるらしいんだけど……」


 お、本当ですか。

 じゃあ食べます。


「…………ほんとに?」


 はい。

 ちょっと軽く炙ってみましょう。


 僕はフラーさんに薪を出してもらい、焚き火をして虚空蟲の尻尾を炙りました。


 うん、見た目は紫色のタコ足ですね。

 どれどれ。


「うわっ……、ホントに食べてる……!」


 んー?

 うん、味もタコです。

 お醤油があれば良いんですけど、ないので塩でいきましょう。


「ひええっ……」


 軽く塩をふってモグモグ食べました。

 ごちそうさまです。


 さて、と。


 僕は、ぐるりと周囲を見回してみます。

 ……あー、これは確かに。


「先ほどより、このダンジョン内という空間への理解力が高まりましたね。これならここから下の階層でも、今まで以上に結界を活用できそうです」


 とりわけ、侵蝕結界はより強力になると思います。

 このダンジョンという空間を形作る、ラスボスのものと思わしき魔力の流れと構造が、ハッキリと理解できますので。


 それでは皆さんでリトライクリスタルに冒険者証をタッチして、と。


「一応、八十一階層をチラ見していきますか?」


 ということで、皆さんの回復(キャベ子さんには残っていた食糧の大半を食べさせました。ソウ兄ちゃんは耳元で「お兄ちゃん♡」って感じで囁くと目を覚ましました)を待って階段を下ってみると、


「…………」


 全員、言葉を失いました。


 次の階層からは、どうやら峻険な山脈のようなフィールドで、そこかしこを、バカデカい()()が飛び回っていました。


 翼竜は、森にいたころに狩っていたプテラ君たちとは、また別種の存在感を持っています。


 存在感というか、魔力の圧というか。

 そういうものが、非常に強いです。


 あちらが恐竜みたいな爬虫類だったとすれば、こちらはまさしく竜種なのではないでしょうか。


 八十階層代は、どうやら竜の棲家を進むみたいです。




 ◇◇◇


 地上に戻って冒険者ギルドに報告して、お家に帰りました。


 お家に帰ると、イェルン姉さんが笑顔で出迎えてくれました。


「皆おかえりなさい! あぁ、良かった、今日も無事に帰ってきてくれた」


 なんのてらいもなくそう言ってくれるイェルン姉さんを見ると、お家に帰ってきた感じがしますね。


 僕はちょっと思い立って、「ただいまです!」と言いながらイェルン姉さんに抱きつきました。

 イェルン姉さんが驚きます。


「あらあら、ナナシちゃんどうしたの?」


「さすがに八十階層まで進むと、ちょっとたいへんでした。もしよければ、優しく頭を撫でてほしいです」


 僕がお願いすると、「分かったわ、よしよし」と頭を撫でてくれます。


 はあぁ、気持ちいいです……。


 僕は気がすむまで頭を撫でてもらったので、元気いっぱいになりました。


 さぁ、皆さん。

 次回はあの竜たちをビシバシ倒していきましょうね!


「いや、お前……。まぁ、いいけどよ」


 メラミちゃんがなんだか呆れたような表情です。


 ふむ。イェルン姉さん、メラミちゃんも今回の探索で頑張ったので、メラミちゃんのことも同じようにヨシヨシしてあげてください。


「はっ!? おま、何言って……!」


 まぁまぁ、遠慮せずに。

 イェルン姉さん、お願いします。


「ほら、メラミちゃんもおいで?」


 そう言ってイェルン姉さんが腕を広げると、メラミちゃんはなんかめちゃくちゃ逡巡したあと、おずおずとイェルン姉さんに抱きつきました。


 そして優しい声で「メラミちゃんも頑張ったのね。よしよし、お姉さんが褒めてあげるね」と言われて頭を撫でられると、ぶるりと身体を震わせたあとは、されるがままになりました。


 うむ。さすがイェルン姉さんです。

 優しさと包容力にかけては天下無双ですね。


 あ、天下無双といえば、あのめちゃくちゃ濃いのにあっさりしてるラーメンを思い出しますね。


 思い出したらラーメンが食べたくなってきました。


 試しに明日ちょっと作ってみましょうか。

 ラーメンの作り方と材料を、クッグ(お料理レシピ投稿サイトCookin' goodのことです)で検索してみましょう。


 そんなこんなとありながら、この日は皆でタマゾン姉貴(ネキ)たちの作ってくれたご飯をたらふく食べ(キャベ子さんが桃色の悪魔みたいな勢いで食べるので厨房担当班が死にかけていましたが)て、ゆっくりお風呂に入ってからベッドに入りました。


 すやぁ……。




 翌日。

 攻略開始から七十七日目です。


 この日の僕は朝から町中を動き回り、お肉やお野菜や小麦粉をたくさん買い込みました。


 そしてタマゾン姉貴(ネキ)がご飯を作ってくれてる横で大きな結界鍋を使ってコトコト具材を煮込み、最後に具材を結界ミキサーにかけて特濃スープを作ります。


 さらに強力粉をかんすい(重曹を混ぜてアルカリ性にした水です)と混ぜてこねこねし、伸ばして切って中華麺もどきを作ります。


 他にもなんちゃってチャーシューとか煮卵とかを作ってから、麺をゆがいてスープに入れて具材を乗せて、と。


 てってれー。


 異世界天下無双ラーメン(試作その一)の完成です。


 では実食を。


「……んー?」


 うーん。一応ラーメンなんですけど、なんか想像とは違う味ですね。


 やっぱりお醤油がないのを別の調味料で代用しているのがネックでしょうか。

 要改良ですね。


 結局この日はスープの改良と中華麺の増産で一日が終わりました。


 なお、深夜にはいつもの三人が部屋にやってきて、少しだけ夜更かしをしました。


 しかし、最近僕が皆さんのお足を舐めてる時間より、皆さんが僕のことをあれこれしてくる時間のほうが長いような気がします。うーん……?




 さらに翌日。

 攻略開始から七十八日目です。


 今日もラーメン作りに精を出していると、厨房にフェアちゃんがやってきました。


「あ、いたいた。ナナシ、はいこれ」


 フェアちゃんは僕に折り畳まれた紙を手渡してきました。

 これはなんですか?


「それ、ナナシのことを真名看破した情報と、ナナシの結界術を真名看破した情報を転写した紙だよ」


 おや、いつの間にそんなことを?


「いや、ごめん。ダンジョン内を移動中で時間が空いた時にパーティーメンバー全員のことを真名看破してたんだけど、ナナシだけは異常に時間がかかっちゃってさ」


 そうでしたか。

 わざわざありがとうございます。


「他の皆にはそれぞれもう渡しているから。ナナシもあとで読んでみなよ。自分のスキルの理解度が上がるとスキルの効果がアップするかもしれないよ」


 そうですね。

 これがひと段落したら自室で読んでみます。


「そうしてー。……ところで、とっても良い匂いがするんだけど、昨日からナナシは何を作ってるの?」


 これですか?

 ラーメンですよ。


「ラーメン? 美味しいの?」


 はい。

 まだ試作中ですけど、よろしければ食べてみますか?


「わぁ、やった。食べる食べるー♪」


 そうしてフェアちゃんに、異世界天下無双ラーメン(試作その十五)を食べさせてみたところ、


「……っ!? …………っ!!」


 と、言葉にならないほどお喜びになり、スープの一滴も残さずあっという間に完食してしまったのでした。


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