第126話・ロイヤルなお味を楽しみます
その日の夜。
僕は自室のベッドの上に座って、堂々と部屋に入ってきた三人(三人とも寝巻き姿です)を出迎えました。
「よ、来たぞ」
「今夜も素敵な夜にしよう」
「ナナシの部屋って、なんだかゴチャゴチャしてるね」
入ってくるなりフェアちゃんは、部屋の中を興味深げに見回します。
まぁ、広さが全然足りてないですからね。
ダンジョン内で拾ってきたドロップ品とか魔石とか、結界箱に入れて壁際に積み上げていますし、
メラメライオンの毛皮から作った大量のコートやマントが、天井から吊るしている結界ハンガーにかかっていますし、
机の上は天上鋼の王冠作りをしている都合上、ほかの物を置けませんし、
「あ、けど、その箱に入ってるのってどれも深い階層で獲れた魔石じゃないの? その一箱だけで、帝国の国家予算の何割かを賄えそうな量なんだけど」
ああ、でもそれは、僕が魔力を込めたらすぐにいっぱいになるぐらいしか魔力の貯蓄可能量がないんですよね。
だから基本的には、キャベ子さんに渡している過剰蓄魔石にする用です。
僕が魔力のバッテリーとして使うのは、もっと深い階層のものにしたいところですね。
九十階層代なら、いい魔石が獲れるんじゃないでしょうか。
「ははは。そこまで潜って獲った魔石だと、私たちじゃ値段を付けられないかもしれないね」
まぁ、使えるモノなら売る気はないですし。
「ちなみにその天井からたくさん吊っているコートとか、真名看破したら灼熱獣の革外衣ってなってるんだけど、これはどうするの?」
それは、数を揃えてダンジョン攻略に協力してくれている皆さんに渡そうかと思っています。
今一番深く潜っているところの次の階層からは、外の寒さよりも寒い極寒サムサム空間に……、
って、……えっ?
「相変わらずだねナナシって。灼熱獣の毛皮を使ったコートなんて、本来は皇室秘蔵の一品みたいな扱いになるものなのに。そんな気軽に仲間に配ろうとするんだもんね」
いやいや、フェアちゃん。
「えっ、メラメライオンって、灼熱獣なんですか!?」
「なにその名前。このコートとかの毛皮の元は、灼熱獣って名前だよ」
わーお……!
マジですか!
えっ、じゃあ、このマント型のこれってどういう名前が付いてますか?
「それ? それは、灼熱獣の革套になってるよ」
……。
五つの至宝のうちの一つを、知らない間に作ってしまっていたとは……。
「フェアちゃん」
「なぁに?」
「ありがとうございます。おかげでとても助かりました」
「そうなの?」
はい。
「じゃあ、今日は嫌がらずに私も混ぜてね?」
仕方ありませんね。
ちなみに一応お聞きしておきますけど、どうしてこの場に混ざろうと思ったんですか。
「一番は保険をかけるためかな。その次は覚悟を示して引き出すため」
まぁ、それはそうですよね。
僕の考えたプランがうまくいく保証はないですし、ご自分としても打てる手は打っておきたいと思うのは、当然だと思います。
「そのうえで……、私がナナシに対する興味を持ち出したのも、ホント」
ほんとですかー?
「ホントだってば。いやまぁ、信じてくれなくても別にいいけどさ」
まぁ、最大限好意的に捉えましょうか。
僕も、フェアちゃんとワイワイしながらダンジョン探索するの楽しいですし。
僕の中の身内かそうでないかの線引きでいえば、フェアちゃんたちはもうこちら側ですからね。
「最後の最後でまた皇帝陛下におもねって話をひっくり返したりしないなら、いいですよ」
「しないしない」
分かりました。
それならもう僕も、これ以上とやかく言いませんとも。
「やった。それで、普段はどんな感じにしてるの?」
僕は自室を結界で囲うと、結界製のベッドを大きくして皆さんをベッドの上に乗せます。
「あらためて言いますけど。僕、女の子のお足を舐めるのが大好きなんです」
「……らしいね。メラミに聞いた時は、ちょっと信じられなかったけど」
けど、事実なんですよ。
昨日も一緒にお風呂入ったと思いますけど、何が一番ドキドキしたかって、狭いバスタブでフェアちゃんのお足が僕の体に当たってたことですからね。
「ふーん……。たとえば、こっちとかは興味ないの?」
フェアちゃんは襟元を緩めて前屈みになり、自身のお胸を寄せて谷間を作ってみせました。
「いや、コイツマジでそっちは興味ねぇんだよな」
と、メラミちゃんが答えました。
「アタシはともかく、キャベ子の裸見ても脚ばっか見てるし。ロビンに顔を抱きしめられても苦しそうにするだけで全然嬉しそうじゃねーし」
「そっか。筋金入りなんだね」
「だが、嫌がるわけでもないぞ。脚以外も舐めてくれたりするし、こっちが舐めても怒ったりしない。気持ちよくなってくれているときもあるしな」
皆さん、僕のヘキのことで盛り上がられても反応に困るんですけど……。
「あ、当然だけどコレはダメだからな」
メラミちゃんは、左手の親指と人差し指で輪を作り、その中に右手の人差し指を入れながらコレと言いました。
「さすがに私も、婚前でそこまで行く気はないけど……」
「それにコイツ、コイツのお嬢様と婚約してるらしくてな」
「……ほほう? 続けて」
「なんだよ、急に目の色変えるなよ……。いやそれで、お嬢様に操を立ててるっぽいから、なおのことな」
「それとフェア。口同士でチューするのもダメだ。なぜなら子供ができてしまうからな」
メラミちゃんとフェアちゃんが、顔を見合わせました。
「なぁ、キャベ子。お前歳いくつだっけ?」
「? ちゃんと数えていないが、たぶん二十五だ」
「口同士でキスすると子供ができるって、誰から教えてもらったの?」
「教会の聖歌隊の人からだな」
「お前、ナナシのソレから出るやつ毎回飲んでるだろ。あれはなんだと思ってるんだ?」
「毎回飲んでるの……!?」
はい。いつもちゅーっとされてます。
「あれは、とても濃いナナシの味がして、とても濃い魔力が混ざった、とてもすごい汁だ。あと、あれを飲むようになってから肌と髪のツヤが良くなったと言われるようになった」
キャベ子さんが自信満々に言います。
まぁ確かに、お肌もお髪もツヤツヤになりましたよね。
「……キャベ子、ちょっとこっち来いよ」
そう言って、メラミちゃんはキャベ子さんとヒソヒソ話を始めました。時折キャベ子さんが「なに、そうなのか!?」とか驚いていますが、それはさておき。
「ええーっと、フェアちゃん」
「うん」
「最後の確認なんですけど。今から僕、フェアちゃんのお足をペロペロ舐めるんですけど、」
「う、うん。あらためて言われると、なんだかドキドキしてきた」
「その、嫌なら嫌って言ってくださいね? やっぱりやめて、とか、それ以上はダメ、とか。僕、嫌がる女の人のお足を舐めたいわけではありませんので」
「分かった。じゃあ、……はい、どうぞ♪」
そっと僕の前に差し出されたフェアちゃんのお足を、僕は恭しく手に取ります。
ツルツルで、スベスベで、柔らかい。
今まで鍛錬らしき鍛錬など一切してこなかったであろう、高貴なお足です。
僕はまず、右足の甲に優しく唇を付け、それからペロリと舐めてみました。
「んっ……」
ぴくっ、とフェアちゃんが反応します。
伺うようにお顔を見てみると、無言でコクリと頷かれました。
僕はさらにぺろりぺろりと舐めてみて、それから今度は爪先のほうに移ります。
親指と人差し指の間の、股になっているところにちゅっちゅと吸いつき、それからベロリと舐めてみます。
うん、美味しいです。
やっぱり、ここが一番味が濃いと思いますね。
ぺろぺろ、ぺろぺろぺろ……。
「ほ、ほんとに舐めてる。しかも美味しそうに……」
爪先をちゅぱちゅぱ吸ったり、足の裏をじゅるじゅるねぶったり、くるぶしを舌先でちろちろ舐めたり。
せっかく(事ここに至ると今後の展開次第ではどう足掻いても何らかの責任を取る必要がありそう)なので、しっかり味わいます。
フェアちゃんのお足って、新鮮なフルーツとミルクで作ったミックスフルーツジュースみたいな味わいがありますね。
酸いも甘いもほのかな苦みも、全部混ぜ合わさった感じがします。
けれどもしっかり絞ってすり潰して裏ごしして、口当たり滑らかでまろやかな味わいです。
「その評価って、喜んでいいの……?」
はい、もちろん。
とっても美味しいですよ。
「……えへへ、そっか♪」
その後。
メラミちゃんとキャベ子さんも混ざり(キャベ子さん、なんだか顔が赤かったです)に来ました。
結局この夜は、夜明け近くまで皆で夜更かしをしてしまいましたとさ。ちゃんちゃん。