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第124話・仲良く混浴します


 ……え。


 いやいや。


 …………え?


「フェアネス殿下!? ちょっ!?」


 あまりにびっくりして反応が遅れてしまい、殿下がバスタオルをハラリと取ってバスタブに乗り込んでくるのを止められませんでした。


 一人用サイズで作ったバスタブは二人で入るには狭く、必然的に身体が密着します。


 殿下の柔らかくてスベスベしたお肌が僕の体のいたるところに当たっています。


「あぁ、良い湯加減だね……。きもちー……♫」


 ふにゃー、と蕩けるフェアネス殿下。


 いやいや、ちょっと。


「何してるんですか、殿下」


「んー? 殿下じゃないでしょ。ちゃんとフェアちゃんって呼んで」


 おっとそうでした。


「フェアちゃん。一番風呂が良いなら最初からそう言ってくださいよ」


「違うよ、ナナシとお風呂入りたかっただけだよ」


「フェアちゃん、皇女殿下の立場とやらはどうしたのですか?」


「大丈夫だよ。この階層に他の冒険者の人たちはいないし、他の皆は口が固いし。誰にもバレないって」


 そういう問題なのですか?


「うん。それに皇帝陛下(おとうさま)は、こういうことでも何でもして、ナナシともっと仲良くなれって言ってたし。……私も、もっとナナシとは仲良くしたいし」


 というかそもそも、とフェアちゃんは怪しい笑みを浮かべます。


「ナナシだって私のこと全裸犬にして、全身全部見たくせに。あれが誰かに知れたらどの道同じことだよ」


 うぐっ……。

 それを言われると、弱いですが。


「それに、私だってナナシの裸見てみたいもん!」


 それは堂々と言うことではないですよ!


「それにそれに、……メラミとか、イェルンたちとか、ロビンたちとは一緒にお風呂入ったことあるんでしょ?」


 ねぇ、メラミ?


 と、フェアちゃんが振り返って言います。

 脱衣所のほうから、「おう」と声が。


 って、メラミちゃん?


「任せろナナシ。ワタシが背中を流してやる」


 キャベ子さんの声までします。


 え、マジですか。


 まさかとは思いますけど、ロコさんとかフラーさんまでいるんじゃないでしょうね?


「いや、ロコッピとフラーシフォンは晩ご飯の準備してくれてるよ」


 あ、良かった。


 いや、現状は全然良くないですけど。


 そうこうしていると、メラミちゃんとキャベ子さんも浴室に入ってきました。


 二人とももちろん全裸です。

 タオルすら巻いていません。


 うわっ、お二人のお足がきらめいて見えます……!


「さすがに狭いな。おい、風呂場もっと広げろよ」


 と、メラミちゃんに言われ、僕は仕方なくバスタブと浴室を大きく(どちらも結界製なので伸縮自在です)しました。


 蛇口を捻って浴室の上の貯水タンクからお湯を下ろし、広くなった湯船にためていきます。


「よしよし、これで広々だな」


「ナナシ。湯船から出てくるといい。誠心誠意洗わせてもらう」


 ザバンと湯船に飛び込むメラミちゃんと、お風呂椅子の後ろにしゃがみ込んで洗体石鹸を泡立て始めるキャベ子さん。


「あ、ナナシの次は私も背中を洗ってほしいなー♪」


「良いぞ。フェアの背中も、丁寧に洗うとしよう」


 僕は、仕方なく湯船から出て背中を洗ってもらうことにしました。


 椅子に座るとモコモコの泡が背中に乗せられ、キャベ子さんのお手々が優しく背中を洗ってくれます。

 剣ダコでゴツゴツしていますが、それはそれで良い感じの刺激があります。


「ナナシ、力加減はどうだろうか」


 はい、とても気持ち良いですよ。


「そうか。……こうしていると、ナナシに仕えているという感じがして、良いな」


 そうですか?


「ああ。それにいつも、ナナシには助けられてばかりだからな。たまにはこうして、お返しをしたい」


 そんなことないですよ。

 僕だってキャベ子さんにはいつも助けられていますから。

 おあいこさまですよ。


 しかしキャベ子さんは、首を振りました。


「そもそもワタシは、ナナシに恩返しをするつもりでこの街についてきたんだ。だからこれは、せめてもの気持ちなんだ。ワタシの手で、ナナシには心地良くなってもらいたい」


 そうしてしっかり念入りに洗ってくれるキャベ子さん。

 なすがままに洗われている僕を、メラミちゃんとフェアちゃんの二人が湯船から見ています。


「な、アイツもツルッツルだろ」


「ホントだ」


 メラミちゃん、聞こえてますよ。


「だがな、アレだけはなかなかのモンなんだ。そこらのやつとはモノが違うぞ」


「す、すごい……!」


 フェアちゃん、せめてもう少し恥じらってください。


「よし。終わったぞナナシ。次はフェアだ」


 ザバーっと泡を流されて、僕は湯船に戻ります。


 入れ替わりで出たフェアちゃんの背中をキャベ子さんが洗い始めました。


「おいナナシ、後でアタシも洗ってやるよ」


 というメラミちゃんにこれでもかと髪を洗われたり(フェアちゃんが少しだけ残念そうな顔をしていました)、メラミちゃんとキャベ子さんに結界カミソリを貸したり、キャベ子さんの灰色の長髪を皆で洗ったり、


 あれやこれやとしてから、四人で並んで湯船に。


「ふぅ……。やっばりお風呂は気持ち良いですね」


 これでお風呂上がりには牛乳を飲んで、皆でカレーを食べるわけです。


 良いですね、至福だと思います。


「ねぇねぇナナシ」


 なんですか、フェアちゃん。


「今晩、私もナナシのテントに入っていい?」


 …………。


「メラミとキャベンシアには()()してるか聞いたし、ロコッピとフラーシフォンは見て見ぬふりするって言ってくれてるよ」


 …………お二人さん?


「いやだって、遅かれ早かれだろ」


「カレーか。楽しみだな」


 悪びれる様子のないお二人に、僕は唇を尖らせて無言の抗議をしたのでした。


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