表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は無敵の結界術士 〜素敵なお足の女神様に頼まれたとあっては、転生するのもやぶさかではないです(ぺろぺろ)〜  作者: 龍々山 ロボとみ
第6章・帝国帝都から迷宮都市・Aランク冒険者ナナシのゲヘナダンジョン攻略編
111/158

第100話・ゲヘナダンジョン攻略初日


「おお、広い」


 と、思わず呟いてしまうぐらいには、広々とした空間に出ました。


 青い空、白い雲。

 足元に広がるのは大草原。

 遠くのほうには森が点在しています。


 ゲヘナダンジョンの第一階層目は、なんだかのどかな様子の原っぱでした。


 ここ、ほんとにダンジョン内ですか?


「ええと。資料によればゲヘナダンジョン内の空間は、十階層ごとで大きく雰囲気が変わるそうです。第一階層から第十階層までは広大な草原地帯になっていて、この空間のどこかにある下層への階段を下れば、第二階層に行けるようですね」


 ほほう、さすがロビンちゃんです。


 ミーシャ姉さんが取り寄せてくれていたゲヘナダンジョンの資料をきちんと読み込んでくれているようです。


「ただ、ダンジョンに突入した際の初期位置はパーティー単位のランダム配置で、階層間の階段の位置も定期的に変更になるそうです。一応、今までの階段位置の記録と、それを元にした階段位置予想地図はありますが……。ゲヘナダンジョン初心者の大半は、エネミーの強さというよりはこの広大さに圧倒されてしまうのだとか」


 そうなのですか。

 けど、毎回そんな調子では深いところに潜るのはたいへんなのでは?


「十階層ごとのフロアボスを倒せば、リトライクリスタルというものがあるそうです。そこに冒険者証を触れて登録すると、次回以降は登録したクリスタル前から再開できるようで、十層ボス攻略とリトライクリスタル登録で初心者卒業と言われていますね」


 なるほど。

 よく分かりました。


 それならまずは、十層のリトライクリスタルを目指しましょうか。


「え? あの……?」


「で、どうすんだナナシ。真面目に歩き回って階段探すのか?」


 いえ、まさか。


「結界作成」


 さっそく僕は、僕たち六人を包む結界を張りました。


 そしてまずは試しに、結界を変形させて上に上に伸ばしてみます。


 そーれ。ぐにょーん、と。


 ……。


 …………。


 ………………。


「……………………お、ついた」


 五分ほど上空に向けて伸ばしてみたところ、この空間の上端に結界が届きました。


 ふむ。高さはだいたい一キロメートルぐらいですかね。


「この青空、実際は空間の天井に描かれたもののようですね。結界壁で触れてみましたが、天井から上には空間がないみたいです」


 つまりここも、結界によって閉じられた空間である可能性があるということです。

 それならまぁ、いけそうですね。


「あの、ナナシさん? 先ほどから何を?」


 上の限界は分かったので、次は横を確認しましょうか。


 今の結界のすぐ内側に別の結界を作り、外側の結界を解除します。

 そしてまた外側に、地面に接する位置から十五センチメートルぐらいの高さまでのドーナツ型の結界を作り、同心円状に広げ伸ばしていきます。


「ナナシの結界が、この空間を喰らい尽くしているのか?」


 お、キャベンシアさん鋭い。

 そうですね。表現としてはそれが近いのかと。


 もっとも今回は、以前のように空間全てを覆い尽くすつもりはありません。


 この空間内には強い敵がいるとき特有のピリピリした感じがありませんし、他の冒険者の皆さんもたくさんいるようですので。


 他の人には当たらない設定にした結界壁で地面を撫でていって、広さの確認ついでで下への階段の位置を探すだけにします。


 出てくるエネミーも弱っちいのばっかりみたいですし、獲れる魔石もしょぼければ拾えるお宝も安っぽいものしかなさそうです。


「お、階段あった」


 今僕が向いている方向を十二時として、ここから七時の方向に七キロほど進めば下りの階段があります。


 そしてそれとは別に、上に向かう階段がいくつかありました。

 たぶんこれを上がるとダンジョンの外に出られるのですね。第一階層で安全仕様になっているのか、ダンジョン脱出用の上り階段はこの空間内に等間隔でたくさん設置されているようです。


 そうこうしていると空間の端にドーナツ型結界が届きました。

 さらに待ってみると、反対の端にも届いたことが分かります。


 おそらくこの空間は、高さ一キロメートル、半径十五キロメートルほどの円柱形をしています。

 かなり広いですね。

 なんの事前準備もなしに突入しても、すぐに体力が尽きてしまうことでしょう。


「結界変形・カベコプター」


 僕は他の冒険者たちの邪魔にならないように上空百メートルぐらいに浮かび上がり、下り階段の位置までカベコプターを向かわせたのでした。




 ◇◇◇


「はい、タッチ」


 十層のフロアボス(大きな体躯の緑色の肌の鬼でした)とやらを取り巻きともども結界で包んでまとめて押し潰したところ、フロアボス部屋の出口が開き、その先で大きなクリスタルが浮かんでいました。


「ほらよ」


 僕の身長よりも大きな薄い青色のクリスタルで、少し地面から浮かんでゆっくりと回転しています。


「ん。これで良いのか?」


 僕、メラミちゃん、キャベンシアさんの順に冒険者証(キャベンシアさんもEランクのカードを持っていました。護衛依頼などを受けるのに冒険者ギルドを挟んだほうが手続きが簡単だったからだそうです)をクリスタルに触れさせ登録を済ませます。


「ロビンちゃんたちも、どうぞ」


 僕が促すと、ヘリーちゃん、ユニ子ちゃんの順にタッチしていきます。


 最後に残ったロビンちゃんも、なんだか困惑したような様子でカードをクリスタルにタッチしました。


「……いや、うん。ナナシさんほどの方なら、挑戦初日で十層攻略なんて全然あり得る話ですよね……。ほとんどの戦闘とか探索をスルーしてここまで来たのも、別にいけないことをしたわけではないですし……」


 僕はロビンちゃんの様子に首を傾げるも、まだお昼にもなっていない時間帯なので水分補給だけしてから下りの階段に向かいます。


「あ、あれ!? ナナシさん、このクリスタルにもう一度触れれば外に出られますよ!?」


「? いえ、まだ出ないですよ? お昼のお弁当も用意してもらってますし、今日は夕方ぐらいまで攻略を進めようかと思います」


 というわけで、キャベンシアさんにハチミツと果糖とバナナと牛乳を混ぜた特製ハイカロリードリンクを渡して飲ませてから、皆で階段を下ります。


 第十一階層からは、先ほどの草原地帯より森林部分の割合が増えたような地形になりました。




 ◇◇◇


 はい、タッチ。


 上階でしたのと同じように下りの階段を侵蝕結界壁で探してどんどん下り、第二十階層のフロアボス(二足歩行で武器防具を身につけた大きな狼でした)を倒してリトライクリスタルにタッチしたところでお昼休憩に。


 階段前のクリスタルが浮いているだけのスペースでお弁当を広げて皆でもぐもぐ。


 二十一階層からはゴツゴツした岩場の多い丘と盆地が連続する地形になりました。




 ◇◇◇


 はい、タッチ。


 上階でしたのと同じように下りの階段を侵蝕結界壁で探してどんどん下り、第三十階層のフロアボス(身長三メートル近い、二足歩行で武器防具を身につけた筋骨隆々の猪でした)を倒してリトライクリスタルにタッチしたところで小休止。


 このまま次の三十一階層に向かおうとしたところで。


 グゴゴゴゴォォォオオオオオオオオオオオーーー……。


 と、地鳴りのような腹の虫が。


「すまない。お昼ご飯のお弁当が、とても美味しくて完璧な味付けだったと思うのだが、少しばかり、量が足りなかった……」


 キャベンシアさんが悲しそうな目でお腹を押さえたので、仕方なく、少し早いですが帰還することにしました。


 まぁ、初日からそんなに無理をする必要もないでしょうし。


 明日以降は食料をもっと多めに持ち込んで挑むようにしましょうか。


 そんなわけで、ゲヘナダンジョン攻略初日は三十階層クリアまでで終了となったのでした。ちゃんちゃん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ