鳥の詩
二月の最初に投稿したと思っていたら一月の最後でした。
切腹
ここは……?
目が覚めると河原で寝そべっていた。
こんなところで寝るわけが無い。しかし寝るまでの記憶が無い。
自分の体をよく見る。普通に普段着を着て……でも何も持っていなかった。
土手に上がりしばらく散策する。暫く歩くとベンチに座った老いた女性の姿が見えた。人影が全くなかったので尋ねてみる。
「あの〜。すいません。ここがどこだか分かりますか?」
急に話しかけたがしっかり答えてくれた。
「あら。人に会えるなんてね。ふふふ。でも、ごめんなさいね。私もなんとなくでしか分からないの。」
「あ。ありがとうございました。」
立ち去ろうとしたとき、
「少し待ってくれない?多分これが最後だから迎えが来るまで話し相手になってくれないかしら?」
まぁ断る理由もないし。もしかしたら何かが分かるかもしれない。
「あぁ。大丈夫ですよ。」
そしてベンチに腰掛ける。
「ありがとうね。それであなたはお幾つ?」
……只々他愛を無い話をする。
女性の話的には俺は死んだのかもしれない。違う点が記憶の有無。もしかしたら頭を強打して死んだかもしれないし、生きてるけど三途の川を渡りかけているだけかもしれないが。
「私にとっては幸せな死に際だったよ……家族に見守られながら苦しみなく……」
「でも私の代で呪いを解くことは出来なかった……家名の呪い。私にとっては幸せな死に方だけど……」
「呪いですか?」
「そう。あの呪いは恐らく解かれることは無い。深く世界に根ずいてしまっているから……そうね。神様の力でもない限り。
私の唯一の心残り。やり残したこと。」
神妙な雰囲気になったとき、汽笛が聞こえる。
いつの間にか正面の川岸に停泊していた。今初めて川をしっかり見た。霧がかっているのもあるが対岸は見えない。
老婆の手を引いて舟に向かう。
「やっぱりあの人にそっくり。もし転生したら嫁か娘にしてもらいたいものね。」
と冗談?を飛ばす老婆。
「私の孫娘はどうかい?可愛い子だよ。」
「もし生き返られたらじゃないですか?」
「あら。そうだったわ。」
軽い戯言を交わしていると舟にたどり着く。簾で中が見えない屋形船、のような形ではあるが大きさはボートほどしかない。
船に近づくと紙を顔の前に垂らしてお面のようにしている女性が降りてきた。
面には墨汁で描かれたよく古式な術を使う隠密師が顔に貼り付けているような顔のようなデザイン。そのものだった。
老婆を手招きし、舟に乗らせる。
そのまま自分も船に乗ろうとしたが、女性の持つ大鎌で前を塞がれてしまう。
多分乗るなということだろう。
耳では無い何かで確かに声を捉える。
“あなたはまだ乗らなくていい。そのまま……!?”
老婆には聞こえてはなさそうだが……
“ッ…何故ここに貴方様が……?こんな場所にわざわざおいでなすったのは何故でしょうか?”
と聞こえると共に女性が跪く。
こういうのは声に出して返答して良いものなのか?
一応脳内で話すように言葉を思案する。
“気がついたらここにいたのだが……ここは一体?”
“ここがどこかですか?なにをっ!?”
突然女性が恐れおののいたように跪いているはずなのに後退ったように思えた。すると女性は冷や汗をかき始め、大鎌を首に当てる。しかしちょっとすると大鎌を下げる。
そして立ち上がり。
顔を覆う紙を上げると……
あら美人♡
俺を凝視すると悔しがるような表情を見せる。
そして女性が手を陣夢に向けてかざす。すると陣夢に激痛が走る。立っていられないほどの激痛。痛すぎて股間を抑えて小さく縮こまってしまう。ちらりと女性が舟に乗り、舵に手をかけるところまで見えた。
そのまま痛みで思考が止まった。
──────────────
ふと気が付くと目の前に銃口があった。
(あ、死ぬわこれ)
しっかりトリガーに指がかかっていた。
何も出来ないと思った矢先、聞いたこともないぐらいの破壊音と共に2人とも窓に体を打ち付けられる。
地面となった窓に。
またしても銃口が向けられる。しかし列車が急停車し、天井だった板に打ち付けられる。先頭車両の方から爆発音がすると、それが脱線横転してボロボロになった列車にとどめを刺すことになった。壁が崩れて落ちてくる……。
崩れた壁の下敷きになっていた。とても暑い。どうやら火災が発生したようだ。なんとか脱出しようと瓦礫の下から逃れ、出口を探す。
上を見ると反対側の窓が見えた。しかし届きそうにない。
とても足をかけられるとは思えないほど炭化した骨組みに足をかければ届くか。
その方法しかないならチャンスは一度きりだ。
開いた窓に引っかかっている死体を掴めば……
意を決して飛ぶ。
しかし足首がなにかに引っかかり死体の足を掴む前に落下する。
足首に引っかかったもの。それは
人間の手だった。
その手はしっかり足首を掴んでいた。
手の持ち主は瓦礫に下敷きになったアーシタ。
「まだかよ!しつこいな!」
運良く持っていた拳銃を振り向きざまに向けて撃つ。しかしアーシタもこちらを狙っていた。燃え盛る列車のせいか緊迫した雰囲気のせいか、互いに頭ではなく拳銃を持っていた手の手首に当たり、2人とも拳銃を落とす。2人とも怯む。
そのとき、内ポケットから何かが落ちる。それを見て一瞬思考が止まる。落ちたのはグレネード。脳内でその結論を導き出してすぐ遠くに蹴飛ばそうとした。拾う前に取られる。
しかしアシータが掴むが早く。ピンが引き抜かれる。
詰みだ。もし拾って外に投げ捨てようとしても拾う前に落ちている拳銃で撃たれて終わりだ。じゃあ爆発前に脱出できるか……
足首を掴まれている以上無理だろう。ならば一か八かにかけるしかない。特大級のギャンブル。
あまり飛べない中なんとか死体の足を掴む。そして引きずり落とし。肉壁に…………
グレネードが爆発する。
肉壁を立てたとはいえ衝撃は強い。しかも掴まれた右足首は隠せずにもろに爆発を食らう。
膝から右足は千切れ、身体は吹き飛ぶ。
勢い良く、壁を突き抜け外に放り出される。千切れた足を断面に添えればくっつくはず。急いで中を見るがほかのグレネードに誘爆したのか大爆発しても解いた車両が粉々になる。右足が吹っ飛んだことに血の気が引いたのか、出血が多くて物理的に血の気が引いてるのか。
眠い。
貧血か・・・・
気づくと出血は収まっていた。
武器を持っている、自分が犯人ではないが冤罪をかぶせられそうだ。
立ち上がろうとするが右足で体を支えられなく転倒する。
そうだ、右足がないんだ。痛みと現実感のなさにあまりショックを感じなかった。
歩きにくい。義足がここにあるわけないだろうし瓦礫と化した木材を削って義足に…
でも作り方は知らないからなんとなくで削ってつくる。まだ血が少なく手元が不格好にしか動かせない。
うまく力も入らない。なんとか形にできれば…
ちょっと長すぎたか、傾く。しかも頼りがたい。
この線路を辿ればドイツか…
鉄道で数十分。あと何kmか。これ以上遅くなるわけにはいかない。
急がなくては。
陣夢君身体機能失う予定なかったのですが・・
かわいそう
ちなみにMGSVの義手的なのは作れるけど四肢まるまる作ってくっつけたりはまだ神経科学がまだ未熟なので中枢神経系は治したりとかはまだって感じ。