序章
「そっちはあぶないわ」
手を掴まれ振り返ると、同い年くらいの女の子がそこにいた。
咄嗟のことに驚いて何も反応できない僕に女の子は少しまばたきをすると、腑に落ちたようににこりと笑った。
「パーティーに行くのがいやなの? なら、わたしと一緒に遊びましょう。あっちにだれも来ない場所があるの。ひまわりがとてもきれいなのよ」
きみはそれで大丈夫なの?
僕の言いたいことがわかるかのように、彼女は続ける。
「だいじょうぶよ、わたしも人が多いところはにがてなの。よかったら一緒にいてほしいわ」
そう言って軽やかに、踊るように僕の手を引いた。
二人だけで過ごす時間は、生まれて初めて心から楽しいと思える素敵なものだった。
女の子はここの常連なのだろう。次から次へと遊び場を提供してくれる。魚がいる小川、蝶々が沢山舞うところ、それから、ひまわり畑。
ひまわりの橙と緑に女の子の落ち着いた赤い色の髪が良く映えて、眩しい。
ねぇ、どうして僕の言いたいことがわかるの。僕はまだ、一度も声を出していないのに。そう思っていると、女の子はにこっと笑って。
「――わたし、魔女なんですって」
思いがけない彼女の言葉に、一瞬時が止まる。
「だからわたし、十六になるところされてしまうの」
その先の人生を含めても、この言葉以上の衝撃を受けたことはなかった。
初めて投稿いたします、藤由囲と申します。
愛されるヒロインが書きたくて連載を始めました。
どうぞよろしくお願いします!
このあと婚約編1を更新いたします。