頑張れルーシア
第三回戦はルーシア達だった。ルーシアはもちろんバトルなんてしたこともなく、ましてや自身のアビリティを親の手伝い以外に使用したことがないためどのようにアビリティを使えばいいか頭を悩ませていた。そもそもルーシアのアビリティは浄化魔法であり、使うことが極端に少ない。
「アビリティの使い方なんて本当に自由でいいと思うけど。弱虫ちゃん」
珍しくメロージが声をかけてくれていたが、自由というのがまた難しい。
キャノンは武器にアビリティをまとわせて攻撃するタイプの男性だった。相手が武器を使用しているためルーシアも護身用の短刀で立ち向かう。アビリティがまとっているため攻撃の一つ一つに迫力があり、受ける度にルーシアの体力を奪っていく。どうやらそれが目的らしい。じわじわと追い詰める戦法。壁際まで追い詰められたときにルーシアはひとつだけ思い浮かんだ。それは目眩ましだった。身構えた瞬間にキャノンの一撃が向かってくる。キャノンの一番強い踏み込みのタイミングで空間はホワイトアウトした。観客席にいるものも大会進行役を担うトラビジョンも眩しく目を背けた。
再び目を開けられる状態になった際にルーシアはキャノンに一撃を与えた。確かに攻撃は成功した。しかし、キャノンはそれだけでは倒れず、すかさず攻撃を繰り出し、ルーシアは応えることが出来ず戦闘不能となった。
「勝者はキャノン、皆拍手を」
会場内に拍手が広がった。
「ルーシア頑張ったね。あとちょっとだったのに」
「目眩まし作戦さすがだよ。自由っていいね」
帰ってくるなりニーナとムーマが励ましてくれた。メロージとは行き違いになってしまって彼女の反応をみることが出来なかったルーシア。少しだけだけど頑張ってみたから、メロージは見直してくれたのではないかと密かに思っていたのだが。
第四回戦はメロージ達だった。相手はどうやら一人で観客していた男。
「第三回戦の彼女、このギルドにいつまでもつか心配だな」
ジュンマの方からメロージに話しかけていた。第三回戦の彼女とはルーシアのことであろう。いったいジュンマは何をもってルーシアのことを心配に思ったのか。それでもメロージは興味無さそうな表情で返事をしない。
「あのアビリティ、カタルシスだろうな。アビリティそのものの偉大さと本人の弱さ、特に心の弱さが不均衡を生じさせている。」
なおかつ、この神官ギルドでの使命が加わればますます彼女は耐えきれなくなるのではないかと危惧しているのだった。彼女自身が壊れてしまうのではないかと、ジュンマは心配したのだった。やはりメロージは応えない。
「だから、あの子はこのギルドに縛られず、別の道を進むべきだ」
先程まで無視を決め込んでいたメロージの顔が一瞬だけ歪んだ。本能的に反応してしまった。その事にメロージ自身も気がつき、ため息の後に口を開く。
「弱虫ちゃんは確かに弱虫よ。だけどね、あの子の行く道はあの子が決めること。口出しはさせないわ」
数秒の沈黙。ジュンマはたった一言「そうか」と残し、メロージに攻撃を仕掛けてきた。
決してジュンマは嫌がらせでルーシアのことを語っている訳ではありませんからね!笑
第四回戦は次話に続きます。