ルーシアの門出と出会い
世界が変わります。
この世界に暮らす人々であれば知らないという人はいないとされる有名なギルド。神官ギルドにはれて加入することが認められたルーシアは確かに晴れ晴れとした表情で家を出たはずなのに……
「親の七光りで加入できたのずるくない?」
「そうだよ、お前なんかよりよっぽど俺のアビリティの方が優秀なのに、なんなんだよ」
「普通なら辞退するのが流れじゃないの?」
晴れ晴れとした表情で家を出た姿など既に想像もできないルーシアの表情には、怯えがうつっていた。学生時代の同級生。恋人同士の二人とそれを取り巻く男二人にルーシアは絡まれていた。
世界中には様々なギルドが存在する。商業や研究、冒険などなど。ただし、ルーシアが加入を認められたギルドは、唯一無二のギルドであり、誰でもノルマをクリアすれば加入できるギルドではないのだ。申請し、神様の判断に身を委ねるしかない、この世界の創造主である神様に。
「いい加減面倒くさいなぁ。遅刻しちゃうからもう無視するね?」
明らかにルーシアの声ではない声だがルーシアからその声は聞こえた。正確にはルーシアの背後から聞こえた。どうやらこの発言は彼らにとって油を注いでしまったようだ。
「あ?あんまりなめてると力で分からせてやろうか」
彼氏の方である男が拳にアビリティをまとわせて今にもルーシアに殴りかかろうとしていた。
もうダメだ。目をつぶり、殴られる覚悟をするルーシアだったが殴りかかられることはなかった。先程まで姿を表さなかった声の主がルーシアと男の間に割って入っていたのだった。
「もう。本当に遅刻しちゃうじゃない。せっかく同じ神官ギルドに向かう子見つけたから後ろつけていこうと思ったのに」
ということは、ルーシアが絡まれるよりも前にこの女性はルーシアの背後にいたのだろうか。そんな心の中の疑問を見透かしたのか女性は返事をする。
「そんなわけないじゃない。あなたたちの会話を聞いて、神官ギルドに向かっているのがわかったから、ついさっきよ。そんなことより、私迷子なのよ。連れていってもらえる?」
そういうと、女性はルーシアの返事を待たずに腕をとり、そそくさとその場をあとにした。その際にルーシアに絡んでいたうちの一人である彼女にそっと耳打ちをしていたみたいだけどそんなこと確認する術を持たないルーシアはあっという間に神官ギルドの前まで連行されていた。
「あ、あの。さっきはありがとう。助けてくれて。あなたは……」
ルーシアはようやく女性に声をかけることができた。そう、今までは一方的にこの女性が話していただけなのだった。
「私はメロージよ。感謝されるようなことはしていないわ。だって、私はただの迷子だったんですもの。あなたは……弱虫ちゃんね」
弱虫ちゃん……なるほど確かに弱虫の自覚はあるけれど第三者からそのように呼ばれると落ち込むルーシアであった。
……あれ?メロージは迷子だって言っていたけどここまで腕を引いたのはメロージだったから迷子というのは嘘なのでは?そう思ってもメロージに確認するほどの勇気は今のルーシアには沸かなかった。