表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を越える物語  作者: 大川魚
1/15

神様のいない世界

 この世界を創造したとされる神様はもうどこにも存在しない。その理由を知っているものもいない。神様の側近であった二人も例外ではなく。ただ、側近であった二人は知っていた。神様がいなくなってしまった世界には滅びという未来が待っていることを。


 「これでしばらくは寒さをしのげると思うわ」

 そういうと彼女の手から火の鳥が生まれ、大きく羽ばたき空を飛び回った。火の鳥が飛び回るだけで凍えそうだった空気感が穏やかな温もりに包まれた。

 「ありがとうございます。この世界の救世主、カロナ様」

 集団を代表して、カロナと呼ばれる人物の前に立っていた若い男は何度も何度も頭を下げていた。その後ろで女、子供達が喜びの声をあげていた。

 「神様はもう、この世界にはいらっしゃらない。それでも神様から与えられたこの力は残っている。ならば、私たちが出来ることをするのは当然のことですよ」

 カロナは凛とした姿でそれでいて優しい笑顔を見せた。


 「いつまであれでしのぐつもりだ?」

 カロナの隣を歩くもう一人の救世主ジュンマが口を開いた。先程までは一言もしゃべらず少し離れた場所からカロナを見守っていた彼。

 「この世界が救われるまで」

 ジュンマの顔を見るでもなくカロナは言い切った。歩くスピードも変えずに。

 「そうか」 

 ジュンマは小さな声で返事をした。

 「おそらくこの世界にはもう時間という概念は存在しなくなっているのね。太陽も月も久しく見なくなってしまった。それでも今まで適温でいられたのはこの世界の神様がいた名残みたいなものよね」

 ジュンマはカロナの話を黙って聞いている。続けるカロナ。

 「でも、それだけではもう限界を迎えてしまった。幸いにも私たちの力はまだこの手に残っている。だったら、私たちが出来ることってこういうことじゃない?」

 こういうこと。この世界が救われるまで力を使い維持させること。

 「俺はお前がやりたいことを全力でサポートする。それは変わらない。何があっても」

 神様の側近にカロナが選ばれたときから決めている。神様がいなくなってしまったとしてもこの約束は決して破れることはない。

 「ありがとう」

 ようやくジュンマの方を向いたカロナはとびきりの笑顔を見せた。反射的にそっぽを向いてしまったジュンマであるがその顔にも笑みが浮かんでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ