↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡々三国演義  作者: ンバ
第六回 金闕を焚きて董卓凶行し、玉璽を匿して孫堅約に背く
PR
53/135

四、英雄を創る男達

 曹操が観念したそこへ、一人の将が馬を飛ばして颯爽と現れ、刀を振るって両個の歩兵を斬り倒した。下馬して我が身を助け起こそうとする男の顔を見やれば、これぞ族弟の曹洪《そうこう》。


「子廉《しれん》よ、今日は私の命日のようだ。私に構っていては助からぬぞ、急いでここから立ち去るのだ!」


 と曹操が述べると、曹洪は奮然として、


「何を仰います、急いで馬にお乗りください! それがしは歩いて随行します」


「賊兵がすぐそこまで迫っているのだぞ⁉︎ 私に馬を与えてしまったら、お前はどうなる!」


「天下にそれがしがおらずとも何も問題はありませぬが、天下は殿を、曹孟徳を必要としております!」


 曹操は感じ入った様子で、


「……もし私が今日を生き延びられたならば、それは、お前のお陰に他ならない」


 かくて曹操が馬に跨ると、曹洪は衣服と鎧を脱ぎ、刀を引いて付き随った。


 四更過ぎまで駆けた頃、曹操と曹洪の行手を阻むかのように一條の大河が現れた。前方に河、後方からは喊声が漸近しつつあり、退路を絶たれた曹操はぽつりと呟く。


「天は我を見放したか……。もはや、再起は叶わぬ」


 そこで曹洪は急ぎ曹操を馬から下ろし、戦袍や鎧を脱がすと、そのまま主を背負って河を渡り始めた。


「子廉、無茶だ……。もうよいから、私を置いて逃げよ」


 曹操の制止の声を意にも介さず、曹洪は前進を続けた。数時間の全力疾走と相俟って体力の限界が近付きつつあったが、それでもどうにか向こう岸まで辿り着く。


 対岸へ至った追手の兵がそこへ矢を射かけてきたので、曹操と曹洪はずぶ濡れの体でなお走らざるを得なかった。夜が明け始め、更に三十里余りを我武者羅に馳ける。


 さすがに両者ともに精魂尽き果て、たまたま通り掛かった土岡の下で一時休息を取ろうとしたそこへ、出し抜けに吶喊とともに一団の兵馬が去来してきた。徐栄の軍勢が上流に従いて渡河し、とうとう追い付いてしまったのである。


 もはやこれまでか──という所へ、十数騎の新手が駆けつける。


「徐栄よ、我が君を傷付けるのは許さぬぞ!」


 曹操と曹洪が勇ましき声の主を見やれば、これぞ夏侯惇《かこうとん》と夏侯淵《かこうえん》! まさしく地獄に仏である。


「しゃらくさい! 曹操のついでに片付けてやる」


 徐栄は即刻馬に鞭を入れて夏侯惇へ襲い掛かった。夏侯惇はこれに槍で応戦、数合の打ち合いの後、徐栄の体に深々とその穂先が突き刺さる。そのまま徐栄はしたたかに落馬し、二度と動くことはなかった。


 大将が討ち取られた事で壊乱した余勢を夏侯兄弟が蹴散らすと、やがて曹仁《そうじん》・李典《りてん》・楽進《がくしん》らもそれぞれ兵を引き連れて参集してきた。


 一時は生還を諦めた曹操、臣下の頼もしさに悲喜交々の表情を見せる。我が身は決して我一人のものにあらず。敗残兵の五百名余りを纏めると、河内へと帰還していった。


 その一方で、董卓の兵団は綽々と長安へ歩を進めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。