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淡々三国演義  作者: ンバ
第三回 温明に議して董卓丁原を叱し、金珠を贈りて李粛呂布を説く
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九、李粛の秘策

 明くる日、丁原が城外に兵を連ねて戦いを挑んできたとの報せがもたらされると、怒った董卓は李儒を帯同して即座に迎撃に出た。


 かくて両陣営相対の格好となると、呂布が束ねた髪に金の冠を戴き、百花繚乱の戦袍・唐獅子の甲冑に身を包み、また獅子の意匠の帯鉤たいこうを締め、愛用の方天画戟を手に取り、馬に跨って陣頭に躍り出てきた。


 丁原が董卓を指して罵倒して言うよう、


「国家の不幸は宦官どもが権力を弄んだゆえに起こり、天下万民は塗炭の苦しみに喘いでおった! 董卓、貴様は尺寸の功も無しに廃立などと妄言を抜かしよって、朝廷を再び混乱に陥れるつもりか!」


 董卓の返答を待たずして、呂布が馬を飛ばして襲い掛かる。董卓は慌てて逃れたが、その手勢は丁原と呂布の率いる軍に蹴散らされた。呂布は聞きしに勝る剛勇であり、配下の将兵が方天画戟の一閃にて紙のように千切られていく様には、さしもの董卓も戦慄を覚えずにはおれなかった。


 見事に出鼻を挫かれた董卓は三十里ほど退いて幕営を張り、諸将と善後策を協議した。


「呂布、あの男は常人ではない。彼を手に入れる事が出来れば、天下に何を憂える事があろう」


 帳の前に進み出た一人が進言した。


「主公の憂いを無くして差し上げましょう。それがしは呂布と同郷の身で、やつの性格については熟知しております。呂布には勇はあれど無謀であり、利益を見て義を忘れるような男です。それがしにおまかせくだされば、舌先三寸で呂布をこちら方に引き入れてご覧に入れます」


 董卓大いに喜びかの者を見やれば、これぞ虎賁こほん中郎将ちゅうろうしょう李粛りしゅく。かくて董卓が方策が問うと、


「それがしは公に『赤兎せきと』という名の駿馬が有ると聞き及んでおります。日に千里を駆けるといわれる赤兎馬と金珠を差し出し、利を以て呂布の歓心を得、更に馴染みのあるそれがしが説き付ければ、間違いなくやつは丁原を裏切り、主公の下へ馳せ参じましょう」


「赤兎馬か……。それで本当に成功するのか?」


 李儒が言う。


「主公は天下を取ろうとしておられるのに、どうして馬一頭を惜しまれるのですか!」


 董卓はそこで思い切って赤兎馬を李粛に委ね、更に黄金一千両、珠玉数十、玉帯一つを与えて、呂布の懐柔へ向かわせた。

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