表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡々三国演義  作者: ンバ
第二回 張翼徳怒りて督郵を鞭ち、何国舅宦豎を殺さんと謀る
15/135

八、忠臣無惨

 さて、権勢を掌握した十常侍は、相協議して逆らう者を誅殺。趙忠ちょうちゅう張譲ちょうじょうは黄巾討伐で名を成した将のもとへ人を遣って賂を要求し、従わぬ者は上奏して免官に追い込むという非道が罷り通った。黄巾討伐で一等の武功を挙げた皇甫嵩こうほすう朱儁しゅしゅんですらも、趙忠に靡かなかったために官職を剥奪されてしまっていた。


 帝は一方で趙忠らを進封させて車騎将軍に任命し、張譲ら十三人はみな列侯に封じられた。朝政はいよいよ崩壊し、民衆の怨嗟の声が四海に渦巻いた。


 こうして、長沙ちょうさの賊の区星おうせいが乱を為し、漁陽ぎょよう張挙ちょうきょ張純ちょうじゅんが反逆。張挙は天子、張純は大将軍と称した。かくて危急を告げる上奏文が舞い散る雪の如くに届けられたが、十常侍はすべてを秘匿して帝の耳に入れようとしなかった。


 ある日、帝は後宮の庭園にて十常侍と宴会を催していたが、そこへ諫議大夫かんぎたいふ劉陶りゅうとうが罷り出でて慟泣した。帝がわけを尋ねれば、


「天下の危機が旦夕に迫っておりますというのに、陛下はどうして閹官えんかんどもと酒など飲んでいらっしゃるのですか!!」


「国家は安泰であろうに、どこが天下の危機だというのだ?」


「四方で盗賊が蜂起し、州郡を侵略しております! こうした禍は、すべて十常侍が官職を売り、民を害し、虚偽を申して主上を欺かんとしているがため! 朝廷における正しき人々は皆去ってしまいましたが、禍は、もう目の前にも迫っているのです!!」


 十常侍は全員で冠を脱ぎ、帝の前に跪伏きふくして、


「劉大臣に受け容れられぬとあっては、我々は生きてはおれませぬ! どうか命だけはお救いください。我々を郷里を帰し、召し上げられた財産を全て軍備に充てられますように」


 と悲痛な様子を装って述べたので、感化された帝は劉陶を怒鳴りつけた。


「貴様にも近侍者の一人や二人おろうに、朕には一人の側近を置くことも許さんと申すのか!!」


 帝は衛士を呼ばわり、劉陶の処刑を命じた。


「私は死んでも構いませぬが、ただ惜しむらくは、漢王朝の四百年の天下が、今たちまちに終わろうとしている事なのです! 陛下! 何卒ご熟慮を!!」


 必死の訴えも虚しく衛士にしょっ引かれていく劉陶、まさに刑が執行されようとしたその時、一人の大臣が声を荒げた。


「手を下してはならん!! 私が陛下をお諌めしよう」


 人々が見やれば、彼の者は司徒の陳耽ちんたん。三公の一角が帝を直諫せんと参内したのである。


「劉諌議(劉陶)は一体何の罪があって処刑されるというのです」


「近臣を誹謗し、朕を貶めたがためだ!」


「天下人民は十常侍の肉を食らいたいと考える程に恨んでおりますのに、陛下は彼らを父母の如くに敬われ、一寸の功績すら無いにも関わらず、彼らを皆列侯に封じられています。況してや、封諝ほうしょらは黄巾と結託して内乱を起こそうとしておったではないですか! 陛下が今自らを省みられなければ、社稷は立ちどころに崩壊いたしますぞ!!」


「封諝が内乱を企てておったと言うが、証拠など無いではないか! 十常侍の中に、どうして一人も忠臣がおらぬと言い切れる!!」


 叩頭して諌めるも頭に血が上った帝は聞く耳を持たず、陳耽は劉陶ともども獄に下された。そしてその夜、十常侍は投獄された両名を直ちに殺してしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ