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淡々三国演義  作者: ンバ
第十九回 下邳城に曹操兵を鏖にし、白門樓に呂布命を隕とす
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六、水計

 さて、下邳の城を攻めていた曹操だが、二月が経過しても下す事ができずにいた。そこへ俄かに報せがあって、


「河内太守の張楊ちょうようが呂布の救援のために東市へ兵を出しました。部将の楊醜ようしゅうが彼を殺害して丞相に首を献じようとした所、張楊の腹心の将である眭固すいこに殺されました。眭固は反転して犬城へと去っていったようです」


 報せを聞いた曹操は即座に史渙しかんを遣って眭固を追撃させ、これを斬った。この事から諸将を集めて言うには、

 

「張楊は幸いにも自滅してくれたものの、北には袁紹、東には劉表・張繍という憂患を抱えておる。下邳を包囲する事久しくして落とせないとなると、わしとしては呂布を一旦放棄して都へ戻り、暫しの間戦は控えたいと考えておるのだが、如何であろうか?」


 荀攸じゅんゆうが慌てて諫止する、


「なりませぬ! 呂布は幾度も敗れて鋭気を已に失っております。軍隊は将を主体とするもので、将が衰えればすなわち軍隊も戦う気をなくすものです。かの陳宮は智謀を有してはおりますが、実行に移すのが遅い。呂布が鋭気を取り戻しておらず、陳宮が謀を定めていない今にこそ速攻を仕掛ければ、呂布を虜とする事ができましょう」


 郭嘉が言う。


「それがしには、下邳を立ちどころに破り、二十万の軍勢に勝利を収める一計がございます」


 荀彧が、


「それは、沂水・泗水を決壊させるのではござらぬかな?」


 と口を挟むと、郭嘉は笑って言った。


「まさしく御尊意の通りです」


 曹操は大いに喜び、即座に兵士らに命じて両河の水を決壊させた。挙って高原へと移った曹軍が目の当たりにしたものは、下邳の一城が東門を除いて全て水没していく様であった。


 諸軍は飛ぶように呂布へ報せたが、呂布は、


「俺には、水をも平地の如くに渡る赤兎馬がいる! また何を懼れる事があろう!」


 と述べ、やはり日がな一日妻妾と美酒を痛飲するのみ。酒色に溺れてだんだん見た目にも衰えが現れるようになった。

 

 ある時、鏡を手に取って自身の姿を見た呂布は驚いて、


「俺は酒や色に溺れて体を損なってしまった。今日から飲酒は慎しむとしよう」


 と述べると、かくて城内に禁酒を命じた。



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