表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡々三国演義  作者: ンバ
第十六回 呂奉先轅門に戟を射、曹孟徳師を淯水に拝す
114/135

三、劉備対呂布

 陳珪は一方で韓胤を許都へ送るよう提案したが、呂布は猶予いざよい、決断することが出来なかった。


 そこで、


「劉備が小沛にて軍馬を買い集めております。何をするつもりでしょう」


 との急報がもたらされた。


「それは将たる者の本分ではないのか? 何を怪しむことがあろう」


 呂布がそう述べる最中に、宋憲と魏続がやって来て、


「我ら両名、明公の命を奉じて山東まで軍馬を買い付けに行って参りました。かくて良馬三百頭余りを得られたものの、沛県の境に差し掛かった辺りで賊に遭遇し、購入した馬の半分を奪われてしまいました。聞けば、劉備の弟の張飛が、賊であると偽って馬を強奪したものであるとか」


 激怒した呂布は、張飛を討たんとして即座に兵を率いて小沛まで向かった。劉備は呂布が至ったと聞いて大いに驚き、慌てて軍を引率して出迎えた。


 両軍対峙の格好となると、劉備が下馬して、


「兄者、何故兵を連れてここまでいらしたのですか?」


 呂布は劉備を指差して罵倒した。


「この恩知らずめが! 俺が轅門に戟を射て大難から救ってやったというのに、何故俺の馬を奪った!?」


「私のもとには馬が少ないゆえ、人を遣って買いに行かせたのです。どうして兄者から馬を奪ったりしましょう!!」


「張飛を使って俺の馬を百五十頭も奪ったくせに、まだしらを切るのか!!」


 張飛は槍をしごいて出馬すると、


「てめえの馬を奪ったのはこの俺様よ! それで、どうしてくれるってんだ!!」


 呂布はいよいよ激昂した。


「おのれ、丸眼の賊めが! 何度もこの俺をこけにしおって!!」


「俺がてめえの馬を奪ったってんなら、てめえこそ兄貴の徐州を奪い取っただろうが!!」


 こうなるともはや和解はならぬ。呂布が方天画戟を振るって打ちかかると、張飛もまた蛇矛をしごいて応戦した。身の毛もよだつ打ち合いが百合余り続いたが、一向に勝負は決着を見ない。


 劉備は張飛にもしもの事があってはならじと、急ぎ銅鑼を鳴らして軍を撤退させた。呂布はというと、すぐ様軍勢を分けて四方から劉備の居城を囲んだ。


 劉備は張飛を叱り飛ばした。


「そもそもの発端は、お前が呂布の馬を奪ったからではないか! その馬は今、どこにおるのだ?」


 張飛はばつが悪そうな様子で、


「小沛のそこかしこの寺院だよ」


 劉備は呂布のもとへ人を遣り、馬は返すので兵を引くよう要請した。呂布は従おうとしたが、陳宮が諌めて、


「今劉備を殺しておかねば、後になって必ずや後悔する事になりますぞ」


 呂布はその言を聞いて考え直し、劉備の要求を撥ね付ると、更に激しく攻め立てた。


 劉備は孫乾そんけん麋竺びじくに諮った。孫乾の案としては、


「曹操は呂布に怨恨があります。この際、城を放棄して曹操に身を寄せるのに越した事はありません。軍勢を借りて呂布を破るのが上策かと……」


 劉備は尤もだと考え、


「誰か、先鋒として囲みを破れる者は」


 と告げると、張飛が名乗り出た。


「俺がやります。命懸けで挑んでみまさぁ」


 劉備は張飛を前、関羽を後に配置し、自身は老弱の者を護衛せんと中間に陣取った。かくて当夜の三更、月明かりを頼りに北門からの脱出を試みた。


 宋憲・魏続との正面衝突となったが、この第一陣は張飛が押し退ける。重囲を切り抜けた後、背面から迫ってきた張遼は、関羽が食い止めた。


 呂布は劉備が去り行くのを見て追い縋ろうともせず、すぐ様入城して民衆を安撫した。高順こうじゅんに命じて小沛の守備に就かせると、自身は徐州へと引き去っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ