三 住処
『ふむ…少し肌寒いがこのあたりが丁度いいだろうな』
『俺はまだアチィや…』
フェド、クラッドが降り立ったのは、少々南の方にある山の麓だ
周りは木に囲まれ、正に樹海のような場所、一箇所だけ木の生えていない場所があったが、空から覗かないとまず見えないだろう、雪山よりも人間はこなさそうな場所があるとは…まぁ、自さ…そういうのが望みな人間は来るかもしれないが
『とりあえず住処を用意しないとだな、洞窟を掘るか』
フェドはそう言い、魔力回路を起動し山の岩肌を弾け飛ばす、吹き飛ばした岩肌はその勢いで周りの樹木のいくつかに刺さり、クラッドは一種の弾幕ゲーになりつつあった
衝撃で土煙が吹き、視界を遮るというおまけ付きでだ
視界が開けると、そこには立派な洞窟が掘られていた
『うわぁ…』
クラッドはフェドの理不尽さを改めて理解した、もっと言えばドン引きしていた
『ん?何だその顔、貴様も特訓すればあれ位容易く行えるぞ?』
『いやそうじゃなくて…まぁいいか』
中は思ったよりキレイだな、なんて事はなく、このフェドという生き物、術式は丁寧なクセしてこういう所は大雑把なのだ、まぁ洞窟に大雑把なんてものも無いが…
『思ってたより汚いんだな、前の場所はかなりキレイだったが』
『洞窟にキレイも汚いもあるか、面倒だな』
フェドからしてみれば、術式はゴチャゴチャなクセに妙な所をキレイにしたがる生き物とクラッドは認識されてしまっている
色々と正反対なこの二人組み
『そうだ!ちょっと待ってろ…』
クラッドが外へ出ると、いくつかの木の板を持ち出してきた
『それどこから持ってきた?というか何するつもりだ…?』
まさか外から持ってきたとか?人間の家みたいに床や壁に貼り付けるとか言わないだろうな…?
『外の木から作ってきたんだ!俺こういう作業は得意なんだよ』
フラグとはこういう事なのだな、お祖父様の言っていたことがわかった気がする