ニ 同居人
『寒い』
フェドは昨日増えた同居人を睨みながら、体を燃え上がらせる
…昨日よりも火の勢いが強いように感じるのは気のせいだろう
『なー熱いんだけどー!止めてくれよー!』
『黙れ、私が凍死したらどうする…ただでさえ寒いのに…』
暑がりなクラッド、寒がりなフェド、正反対な属性の二人はもちろん耐えられる温度も正反対
クラッドは炎を止めてほしいと懇願するがフェドは譲らず炎を燃え上がらせる
『てゆーか!なんだってフェドはこんなトコに居るんだ?お前寒さにヨエーんじゃねぇの?』
クラッドは疑問をぶつけフェドの不可解な行動を理解しようとする
『…色々あったんだ、人のこないような…そんな場所だったからここに居る』
『どっちにしろここじゃアチーよ!別のトコ行くーとか…ないのかよ?』
しびれを切らしたクラッド、フェドは何か考える素振りを見せるが…
『ふむ…』
フェドはお祖父様の知識の一部を持っているのみで、外には一切出た事の無い引きこもり、そのような場所を知っている訳が無い
『そうだ!どっかに飛んでみようぜ!丁度いい場所が見つかるかもだぜ!』
…そう都合良く行くものだろうか?
◇◇◇
「失礼します」
執務室のドアが開き、秘書のような女性がそこから現れる
「どうかしたか?」
「上空に、ドラゴンと思われるシルエットを2体観測したと報告が」
高価そうな椅子に腰掛け、書類仕事を片付けていた人物は、ペンを置き、そっと席を立っていた
「分かった、動向をチェックしろ【フェード】」
「了解です、【ギルドマスター・アンジュ】」
その二人組は、そのドラゴンの目的が【安全で住みやすい土地】である事を、今は知る由も無い
◇◇◇
「グアァァッグズッ!!!!!!!」
空に爆音が響き渡る、かなり高度を飛んでいるから地上には届かんだろうが…
『どうした?くしゃみなんかして、噂されたか?』
『温度差で風邪引きそう…』
『寝てれば治るだろうよ』
『なら寝れる場所だな…お前の炎が熱くて寝れねぇよ…』
寒いのだから暖かくするのは当然だろう