#03 降り出す雨、謎の女
コンビニを後にした達也にまるで襲いかかるかのような雨が降っていた。コンビニの出っ張った看板の下で困惑しながら雨宿りをしていた。雨が止む気配はなかった。達也はため息をついて取り敢えず自分の家に帰ろうと足を一歩踏み出すと、目の前に傘をさした女性が立っていた。その女性は健康そうな身体つきに胸に濃い赤色を帯びたリボンをつけ、紺色のフレアスカートを身に付けていた。
達也「うわっ、びっくりした〜...」
達也は不測の出来事に思わず声が漏れた。
女性「あらっ、ごめんなさい。驚かすつもりはなかったの。。。あなた、さっき500円玉の件で店員さんと揉めてたよね?」
そんな達也の姿を見てその女性は少し微笑みながらそう言った。
それを聞いた達也は女性にこう尋ねた。
達也「え?なぜそれを知ってるんだ??」
女性は困惑した様子の達也に笑みを浮かべながら答えた。
女性「あなたが店員さんと揉めてる間に後ろにどれだけの人が待ってたか。みんな困ってたよ。その中の一人に私が入ってて、なんか珍しい人がいるなぁっと思って興味が湧いてね。で、レジを済ませて外に出ようと思ったらガラス越しにあなたが写ってたって訳だ。」
達也「それはすまなかった。まさかあんな事になるなんて思ってもなかったからな...。」
コンビニの外で立ち話をする二人に風が吹き付けた。
達也の腕に鳥肌がたつ。雨も伴っているせいか、少し冷んやりとした風だった。
風が止んだ頃、女性は指を指しながらこう言った。
女性「ねぇ、ここで話をするのもあれだし、車の中に入って話さない?」
達也は指の先にある物を見た。そこにあったのは、やはりフェンダーミラーでバンパーが黒色で少し出っ張った正に赤色って感じの車だった。
達也「まっ、そうしようかな。」
達也は傘を持ち合わせていなかったのでちょうど良いと思い車に乗せてもらう事にした。
達也の心の声(ちょうどこの機会に昭和についても聞いてみるかな?)
二人は車の方に向かった。女性は運転席側に、達也は助手席側に。
すると、女性はドアの取手を持とうとした瞬間に思い出したかのようにこう言った。
女性「あっ!忘れてた!私の名前は下中 名波だよ。よろしくね。」
女性はそう言うと傘をたたみ後部座席に乗せ、そそくさと運転席に乗り込んだ。突然の名乗りで唖然としていた達也も、少しの時間差で助手席に乗り込んだ。