#01 突然の始まり
戦国時代をテーマにした物語等はよく目にすると思いますが、今回は昭和をテーマにしています。とは言っても、昭和前期ではなく昭和後期をテーマにしてみました。すごく昔だなと言うよりは懐かしいなと感じる時代設定だと思います。
時は2020年(令和2年)。世界中で新型コロナウイルスが大流行。緊急事態宣言が出される程にまでになった。日本では外出の自粛により、家にいる機会が増えている。そろそろ嫌気がさしてくる頃だ。
僕の名前は坂野達也、20歳。高くそびえる山々と、清く広がる壮大な海に囲まれた街に生まれ、今も住んでいる。僕が住んでいる街では新型コロナウイルスの感染者はそんなにいない。しかしながら自粛ばかりの毎日だ。僕が働いているラーメン店はとっくに臨時休業。ただでさえあまり外に出ないのに、外出する機会はますます減っている。スマホやテレビで見るニュースはほぼコロナ関連だ。
僕は築47年のオンボロのマンションに住んでいる。生活スペースは一部屋しかない。この一部屋にベッド、薄型液晶テレビ、高校3年生の時に買ったノートパソコン、一世代前の据置きゲーム機、そして最近買った空気清浄機が置かれているのみで、生活するのに不便は感じず、特に変わった所はない。強いて言うならば、3階に住んでいて階段を登るのが少し億劫なくらいだ。
僕はソファーに横になりながら雨漏りでしみの出来た天井を眺めていた。
テレビの音声)))「新型コロナウイルスの感染は止まらず、都内での感染者数が過去最大の数値を記録しました。」
達也「またコロナの事言ってるよ。毎日毎日うんざりだなぁ。」
テレビの音声)))「国民の皆様には引き続き自粛を要請します。」
達也「自粛自粛っていつまで自粛すればいいんだよ。」
達也は自粛疲れを通り越してとっくに呆れていた。
テレビの音声)))「新型コロナウイルスの感染は一体...い...まで続......でしょうか?」
達也「あれ?なんかテレビの音声が途切れ途切れだなぁ。そんなに古くないんだけどな。」
達也は重たい体を起こし、ソファーに寄りかかりながらテレビの画面に目を向けた。
テレビの音声)))「専...家により......と、新............ウイ...スは夏でも感...が続...のではないのか....................」
テレビの音声は完全に止まり、画面には《入力信号がありません。》の文字が映っていた。
達也「あれ!?おかしいなぁ〜。テレビも自粛か??それにしてもなんでこのタイミングなんだよ。電波の障害でも起きてるのか?」
何も映らないテレビを目の前に困り果てる達也は、全国的に発生している電波障害なのかもしれないと思い、机の上に置いてあるスマートフォンを手に取り調べてみる事にした。
達也はスマートフォンを持ち、顔認証を済ませホーム画面へ進んだ。すると更におかしな事に気付く。
達也「あれ〜!?はぁ〜??なんだよこれ、、。圏外になってんじゃん!!スマホも使えないのかよ。」
達也は更に困り果て、もしかしたら自分の部屋だけ電波がおかしいのかもしれないと思い外に出てみる事にした。
達也「築47年経ってるしなぁ。障害の一つや二つは仕方ないよなぁ。」
達也は妥当であろう理由を自分に言い聞かせ、軽装で家のドアを開けた。
達也「外の様子は何も変わらないっか。うん?いや待てよ。何かいつもより排気ガスの匂いが濃い気がするなぁ。」
少し下に降りてみようと廊下を歩いているとお隣さんの部屋の窓が少し空いている隙間から、何やら昭和歌謡が聞こえて来る。
達也「もう令和だって言うのに昭和歌謡かよ。お隣さんって確か24歳だったよな?ちょっと前に引っ越して来たんだよな。少し綺麗なお姉さんなのに昭和歌謡って渋いな。」
そんな事を思っていると流れていた音楽が止まり、カラカラと鈴の音が聞こえて来る。
達也「お?お出かけかな?ま、いいか。」
すると部屋から出て来たのはお姉さんではなく、少し腰の曲がった団子結びのお婆さんだった。
達也「え?お婆さんが出て来た?確かお姉さんは一人暮らしだったはず...。それにしても服装まで昭和っぽいとは。まるで昭和だな←」
達也は下へ降りようと足を進めようとした時に異変に気付いた。
達也「はえ!?掃除でもしたのか?塗り替えでもしたのか?いや、自粛ばかりのこのご時世に塗り替え工事とかするはずがない。」
築47年も経っていると白い壁も流石に至る所で黒ずんでいたが、その時達也が見た壁はまるでほぼ新築かと思える程綺麗な白だった。試しに自分の家のドアを外から見てみると、下から錆が広がっていて、塗装も所々で剥げていたのに、まるで新品同様だ。確認の為に、ドアを開けて玄関から見てみると、一年前に傘の先が当たってついた傷はついていた。
達也の頭はますますこんがらがっていた。目に飛び込む物全てがおかしい。達也は小走りに廊下を後にして、階段を駆け降りた。いつも置いていた場所に達也の自転車はなかった。鉄製で出来たポストも周りの景色を写し出す程ピカピカだった。達也は混乱しながらもマンションの外に飛び出た。そこにはいつも見慣れた道路があったが、いつも見慣れていた風景ではなかった。
スマートフォンを見ると相変わらず圏外の表示。そしてカレンダーの表示も出来なくなっていた。
この作品はたまたま財布の中に入っていた旧500円玉入っていて自動販売機で飲み物を買おうとした時に思いついた物語です。逆転した考えで、今の物が過去では通用しないとか、珍しくなったりと...
とにかく時代の変化をテーマとした物語を作ってみました。