再会
「終わったーーーーーーーっ!」
社内に直哉の声が響き渡る。
「よし、こっちもオッケー。」
少し遅れて修二も立ち上がった。
「クラウドに全部入れたから、チェックよろしく。予定通り1日半で終わったな!」
修二が日菜子の横に書類を置いた。
「…大丈夫だと思います。後は私が手直ししておきます。」
「やったー!解放〜!」
無邪気に喜ぶ直哉。
「じゃあ時間もないし、早く行こうぜ!
試合始まっちゃう!」
これから2人はJリーグのテストマッチを特別に見に行く予定でいる。
「オレ、着替えてくるから。後は現地で!」
「じゃあオレも一回帰るわ!あっちでな!」
直哉も修二も足早に荷物をまとめて会社を出た。
日菜子は修正に1時間ほど掛かったが、それも無事に終了し、会社の電気を全て落として帰路に着いた。
帰り道直哉からメールが入る。
「終わった?」
「先程終わりまして、帰り道です。」
「そっか、良かった。もうすぐで、試合終わる。」
「そうですか。」
「これから選手の打ち上げに誘われた。日菜子も来れる?修二も日菜子いないとつまんないって言ってる。」
「私は遠慮しておきます。」
「そっか。じゃあ後でおれん家に来てくれる?」
「行きません。」
直哉から悲しい顔のスタンプが送られてくる。
いつものメール…。
こうやって直哉は時々本気なのか嘘なのか分からないメールを日菜子に送ってくる。
日菜子はそれこそ自分の立場をわきまえていた。
今のこの3人の関係を崩したくない…。
このままずっと繋がっていたい。
ずっと直哉の側に居られるポジション。
それを守っていたい。
そうしていつも心とは裏腹の態度を直哉に見せていた。
本当は直哉の家に行きたい。
直哉の事が好きでしょうがなかった。
でも好きだと気付いた時から絶対に言わないと決めていた…。
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次の日。
「昨日の打ち上げで、ウチで働きたいって人がいてさ。パートなんだけど。
それが2部リーグの選手の奥さんで、かなり美人だし、営業にはうってつけかなって思うんだけど、どう?」
修二から朝早くメールが来る。
「お2人が良ければ良いのではないですか?」
「そうだね、善は急げって事で、休み明けから出勤してもらうようにコンタクト取るから色々よろしくね!」
日菜子はその後1人会社に行き、受け入れのための書類など準備した。
休み明け。
いつもは日菜子が最初に出勤するはずの会社に電気が付いている。
中に入ると珍しく修二が早く来ていた。
「日菜子おはよう。今日さ、9:00にこの間話した人来るからよろしくね。」
「はい、準備してあります。」
「さすが日菜子。ありがとう。」
各社員がチラホラと出勤してくる。
直哉もそれに混ざって出勤する。
休み明けのため、バカンスをしてきた社員同士で会話に花が咲いている。
チリン。
事務所の入り口にあるチャイムが鳴る。
日菜子が出迎えに行く。
「お待ちしておりました。」
「おはようございます……………え?
日菜子?…日菜子じゃない?」
「…?え?!
あおい??………あおいなの?」
遅れて修二がやって来る。
「おはよう、今日はありがと…………?
あれ?2人知り合いなの?」
「そうなんです!友達です!ビックリした〜!」
キャッキャと日菜子の手を取ってジャンプするあおい。
日菜子は少し戸惑いを見せていた。
「久しぶりに聞いた、相変わらず声優ようなあおいの声…。」
「そうそう、声だけは変わんないんだけど。顔は老けたでしょ〜。」
ひたすら嬉しそうに答えるあおい。
「いや、そんな事ないよ…。相変わらず可愛い。」
「やだ〜!日菜子も全然変わってないよ〜!」
ブンブンと繋いだ手をあおいが揺らす。
圧倒的な女子モードで、お花畑の雰囲気が一気に流れてくる。
日菜子は苦笑いをした。
「じゃあ…ここじゃなんだから…奥へどうぞ。」
修二も少し雰囲気を察知して苦笑いをした。