幸福の里ってあるの?
マナビットがサチア及びイヤハの里の者たちとふれあう度に世界観、価値観、常識、死生観、そして不可思議な現象出来事法則に思い悩んだり気付き納得したり反発したりしながらイヤハの里にて過ごして行く話しです。
「違うわマナビット、あなた自身の身体が傷を治したの
うちの者は、ただあなた自身の治癒力がスムーズに働くように導いただけ
あなたの内にある生命力が傷を治したのただそれだけのこと」
俺の前にいる美女サチア・フレルが重症の傷の治療を感謝する俺に彼女は大した事でもない様に答えた。
自分は、なんとか助かったが、みんな無事かな……ひと月ほど前の事をふと想う
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冒険者の俺たち「夕陽の誓い」メンバー六人は、エフィーメ王国の王都マツーマの東の城塞都市サージョからまだ東のシコックツルーギ山脈の麓をさ迷っている。
「オドルア?本当にこんな山っ中に幸福の里イヤハってあるの?」
魔物使いのミカが、リーダーで剣士のオドルア・フォートに疑いの眼差しで問うた。
「百年前の探検家カミュ・シンジールの「ああ崇高なる神が創りたもうたイゼヤ界隅々紀行見聞録第一巻シコック大陸シコックツルーギ山脈編」にイヤハの里の記述が有るんだ」とオドルアは証拠の書物を言及した。
「しかし、滅茶苦茶長げー書籍名だなぁ」と大剣使いのカッツオがタイトルの長さに呆れかえる。
俺(盾)は、「どう言う風にイヤハの里への行き方を書いてあるんだ」とイヤハの里を探す手掛かりを聞いた。
「書いてない」オドルアは答えた。
「「「「?!書いてないって!」」」」俺たちは、足を止めオドルアを睨み付けた。
「シコックツルーギ山脈を歩き周ってたらたどり着いたって書かれてた。イヤハの里から帰ってから、もう一度行こうと八回ほどシコックツルーギ山脈を歩き廻ったけどイヤハの里へは二度と辿り着け無かったって書かれていたよ」オドルアは、飄々と言ってのけた。
「どーするのよ‼このままこんなところを一生涯さ迷い続けるの!いつかS級の魔物に出逢ってご馳走様って食べられちゃうわよ!どーするのよ‼」と魔法使いのカマーゲが正論をの賜った。
「さぁ出発‼イヤハの里への道を探そうエイエイおーーッ!」オドルアは、一人戯けたことを言って右手の拳を天高く突き上げた。他の皆は歩き疲れその場に砕け落ち座り込んだり倒れ伏せたりする。
座り込んでいた聖女のイヨが「夜営の準備しなきゃぁね」とヨイショットと立上がり衣服の砂をぱぱっと叩いた。
後のみんなも
「あいよぉ」
「そうね、ふぅ」
「しようーか」
「しましょ、バカに付き合ってられないわよまったくもぅ!」
オドルア以外の五人が夜営の準備に取り掛かるなか
オドルアは、一人ボソッと「まだお日様が高い所にあるのに」と頭垂れていた……
オドルアは、頑張っていた。
皆が食後のお茶を飲んでいる時に。
オドルアは、力説していた。いかにイヤハの里が素晴らしいかを!
未だ見ぬ里を、百年前に偶然に一人だけしかし辿り着けなかった里のことを自分の想像を膨らませ上塗りして、アーだコーだと頑張って力説していた。
「多数決五対一で決まったんだからつべこべ言わない!わかったぁあ わ よ ね!」カマーゲがオドルアを睨み威嚇した。「明日片付けたらとっとと帰るの!」カマーゲがオドルアにトドメを刺した。合掌。
カミュ・シンジールは、二巻作製の為、アキツシマ大陸のチューコック州トットーリ砂丘へ赴くしかし、そこにて行方不明となったのであった。「ああ崇高なる神が創りたもうたイゼヤ界隅々紀行見聞録」の第二巻以降は未完になったのである。