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逃げるが勝ち!

ばっちこい!

「っ痛」


今更ながら、ようちゃんは棍棒を食らった脇腹を擦って呻いている。


「そのくらいで済んでるとか奇跡だとおもうんだ、うん。俺なんてビビってうごけなかったよ」


そう言って緑色の液体の入った試験管をようちゃんに渡す。


これは恥ずかしい事にあのゴブリンにビビって後ろに倒れた時、丁度手元にあった雑草、もとい薬草が反応しレシピと知識をくれたのでこれ幸いと創造した回復ポーションである。


たった一枚の葉から作れる為、さっきから大量生産している所である。


ようちゃんはそれを一息に飲み干すと、先ほどから不思議そうに脇腹を叩いたり擦ったりしている。効果はてきめんだ!


「これやばいな、なんか死なない気がしてきた!」


それは気のせいだよ、ようちゃん!


一息ついた所で先ほどのゴブリンとの戦利品を吟味する。


刃こぼれの酷く錆びている短剣と、片手剣。ゴブリンが持っていると長剣に見えたが実際は片手剣だった。

それと棍棒に、ゴブリンの腰布。


ようちゃんはぼろぼろの片手剣を振り回して楽しそうにしているので、俺も短剣を振り回して対抗しようとしたらまたレシピが浮かぶ。これは!と思いようちゃんから片手剣を借りる。


まずは片手剣から鉄の塊であるアイアンインゴッドを作る。明らかに質量、純度に差があるがこの際無視。


そして出来たアイアンインゴッドを更に創造で片手剣を作り出す。なんの装飾もディテールもないがそれは新品の鉄の剣になった。


それをそのままようちゃんに渡すとようちゃんはうおー!とかいいながらぶんぶん振り回して楽しそうだ。やったね!


そしてすぐ自分の分も作り出す。まずは棍棒から木材を作り、そのまま長弓を作り出す。それだけでは足りないのでようちゃんが剣を振り回して被害を被っている木の枝数本から木材を作り、先程短剣から作ったアイアンインゴッドと合わせて矢を30本作り出す。


俺は接近戦なんて御免被るので、離れた場所から弓で攻撃する逃げのスタイル!接近戦は嫌だけど、この先戦力外通知はもっと嫌だよ!

因みに昔、母親の影響で弓道を習っていたので長弓を選んだ。

最後にゴブリンの腰布から布を創造して、それから肩さげ鞄を作ってさっき作ったポーションを詰め込む。


「そういえば魔物の心臓って魔石だから価値があるらしーよ?こいつゴブリンだし定番通り耳も剥いどく?」


「ああ、そういえばそうだな」


そう言ってようちゃんは容赦なく耳を剥いで心臓部に切り込みを入れて手を入れて魔石を探している。


え?俺?むりむりむり!なんかゴブリン臭いし!と思っていたらお声が掛かる。


「換金しても分けねーよ?」


わー!楽しそー!頑張るー!とか喚きながら嫌嫌人生初の剥ぎ取りに参加する羽目になった。

ようちゃん異世界慣れんのはやくね?


剥ぎ取りも終わり川沿いに下り進めていると、ようちゃんが、おっ!と言い歩みを止める。なんでもレベルが上がってスキルも増えたらしい。


ようちゃんのレベルが2になり、格闘と投擲、忍耐が増えた様だ。格闘と投擲はその行動に補正が掛かるもので、忍耐は防御力上昇である。なにそのぬるげー。

いいなー、とかいいつつ自分のステータスを見るとそこにも変化があった。

レベルは上がってはいないもののスキルに鍛冶、木工、裁縫、錬金術が増えていた。

創造で作っても制作スキルが上昇するようで気分が良くなる。


気を取り直し進んで行くと急に森がざわめき始めた。動物や魔物達が小川の対岸から大量に凄い勢いでこちらに向かって来る。


「この展開は難易度高くね?」

「逃げるのも勇気だと思うっ!!」

「流石に逃げるのも無理そうだな」


なんて会話をしながら覚悟して待ち構えていると魔物達は俺達には目もくれず走り抜けて行く。


「助かった?」

「たぶんそれフラグ」


その言葉と共に魔物達が逃げて来た方角から地響きにも聞こえる野太い咆哮が聞こえる。それを聞いてようちゃんがこちらを見た時には俺は全力で走っていた。


「ちょ、逃げんのはえーだろ」

「身体能力は俺のが低いっ!」


すぐに並走してきたようちゃんに全力疾走しながら返事をする。

俺たちは全力で小川を下りながら、ちらっと後ろを振り向くと咆哮の主らしき巨体が森を抜けて小川の所まで出て来た所だった。距離は200mも無いくらいの位置だ。


その姿は大きなサイのような姿で、全身を黒い鎧で覆われ角がまるで剣のようになった生き物。


明らかに今の俺らでは太刀打ち出来ない気がする。幸いこちらには気づいてはいないようでこのまま全力で走れば逃げ切れそうなのだが、なぜかそのサイは向きを変えてこちらに向かって来る。


「ようちゃん、俺魔王になれそうも無いや、、」

「うーん、詰んだな…」


よく見るとそのサイのわずか前方を人が走ってこちらに片手を振っている。明らかにこちらに向かってSOSを出している。これが噂に聞くMPKかと絶望してみる。


「あー、殺ってみるか?」


このイケメンは何を言ってるんだ!とは思うものの、このまま逃げたとしても追い付かれるのは目に見えている。つまりそれしかないのだろうと諦め思考を切り替える。


「俺、こいつに勝ったら結婚するんだ、、」


とりあえず明らかな死亡フラグを立てて気合いを入れる。


「お前今彼女いねーだろっ!無駄なフラグたてんな」


そう言ってようちゃんは苦笑して剣を構える。

先手必勝という言葉を信じてこちらも弓を構えて息を吸い弦を引く。そのまま呼吸を止め狙いを定める。恐らくあの顔から体にかけて覆われている鎧は当てても無駄だと思い、装甲の無い脚を狙う。そして集中を持って矢を放つ。


ヒュンと風を切る音と共に前方の人物を素通りし、その矢はサイの左目を貫く。


低い咆哮をあげながらサイはバランスを崩し砂ぼこりをあげながら横転し、木にぶつかり勢いを止める。

とりあえず当たればいいやとは思っていたがまさかのクリーンヒットに自分でも驚く。もしかして幸運のおかげかな?


横転し、腹を見せている隙をつく為にようちゃんは剣を持って駆け出し、前方を走っていた人物はそのままようちゃんと俺を素通りして行く。なんて恩知らずな奴だ!とも思わないでも無いけどあれ怖いししょーがないよね。


俺も2本目を穿つ為に直ぐに矢を取り弦を引き狙いを定め、放つ。


その矢がサイの腹に当たるのと同時にようちゃんも剣を横に振り抜く。


大きく出血したサイは呻きながらも暴れ出し、ようちゃんは間合いを取る。サイが立ち上がりこちらに無事な目を向け今までよりも大きな咆哮をあげる。するとその剣のような角が青く光り放電し始める。


あ、やばそう。と思った瞬間その稲妻がこちらに放たれ、その電光石火に反応する間も無く死を覚悟し目を瞑るが、なかなかその衝撃が来ない。恐る恐る目を開けてみると、目の前に透明な障壁があるようで全て防がれていた。


「LuQn9sP……」


横には先程走り抜けていった人物が立っていた。顔まで隠す赤黒いローブに三日月の装飾の施された銀色の杖をもった女性だ。


所でこいつ何いってんだ?


訳が分からなくなっている内にサイは攻撃が防がれた事に苛立ったようにこちらに剣の角を向け突進してきた。


そこに眼中から外れていたようちゃんが横凪ぎに脚を斬りつけ、更に転倒するサイ。


「All lives return to the earth」


それを見た横の女は何かをゆっくりと唱え始めた。日本人ながらゆっくりと聞けばそれが英語である事は分かる。

その女の手元は英語を話進める度に光の幾何学模様が形をなして行く。


「It is a spear with one power」


それを聞きながら俺も弓を構える。弦を引き矢を放つ頃には幾何学模様は完成されていたようだ。矢を放つと同時に彼女も叫ぶ。


「Penetration !」


その叫びと同時にサイの居る地面が盛り上がり円錐状の土がサイを貫く。そして俺の矢は外れる。そしてようちゃんが弾き飛ばされる。


そこで遂にサイは活動を止めた。

とりあえず結果オーライだね!

【魔族:朝木夕(仮) Lv.1】

〈刻印〉『創造』

〈加護〉「幸運」

〈スキル〉「鍛冶I」「裁縫I」「木工I」「錬金術I」

〈魔法〉


【魔族:鈴木陽(仮) Lv.2】

〈刻印〉『破壊』

〈加護〉「生命」

〈スキル〉「格闘I」「投擲I」「忍耐I」

〈魔法〉

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