基盤作り
久々の更新おつおつ!過去投稿のステータス改稿しましたがストーリーは変えてないです!また改稿するかもですがごめごめですです!
人の気配で目が覚めると同時に扉ノックされた。既に外は暗く、部屋も暗い。
俺は起き上がり、ランプを点けて扉を開ける。
そこには明らかに疲労の色が見えるアル君が居た。
「どうぞ、これが従事者のリストで、こちらが要望を纏めたものです。」
俺はお礼を言って栄養剤を創造して渡す。そのまま部屋に招き入れてアル君に椅子を勧めて俺も座る。
リストは見やすく整理されており、とても分かりやすい。アル君はA型なのかな?
「必要なものは、治療院に鍛冶場、工房、食堂に、酒場…酒場?あー必要だな。他には農具一式に衣類に…etc」
「結構多いね」
「人数も多い上に新しく出来た町なので妥当かと。」
「なるほど。因みにこの国の事情詳しく教えて貰ってもいい?残存する町とか村とか要所だけ」
そう言うとアル君は簡潔に教えてくれた。今残っているのは村が2ヶ所と町が一ヶ所、そしてこの砦が最後だと言い、魔族の人口はここにいる500人の他には戦えない女子供合わせて400人と残存1000人を切った位だそうだ。
イザナミさん!ヤバかったよ!思った以上にヤバいっすよ!
「因みにこの国の信仰はイザナミで合ってる?」
やべ、呼び捨てにしちゃった。
「イザナミ?私たちが信仰するのは深淵の女神様ですよ。」
なるほど。名前伝わってないんだ。それじゃあその深淵の女神様の信仰を全面に出すために整理するか。
「その深淵の女神様についてはどんな風に伝わってる?」
アル君の話しによると、深淵の女神様はこの世界を作り、鬼と呼ばれる者達を7人産み出したそうだ。
そしてその7人は集まる事無く別々に暮らしていたが、幾年か経ちその中の1人が孤独に堪えられずに動物に魔力を与えたそうだ。
しかしそれは意思を疎通出来る生き物では無かったので、意思を通わせる事が出来る者が産まれるまで何体も何体も作ったのだという。
こうして産まれた生き物が今の魔物であった。それから何度も失敗を重ね、ついにその鬼は自分と同じ形をした生き物を産み出した。しかしその生き物も知識を持つことは無く、鬼は深淵の女神に祈ったそうだ。
すると深淵の女神はその鬼の為にその生き物に知識を与えたそうだ。それが原初の魔族で最初の魔王であった。
鬼は魔王と交わり子を成し、それが繁栄して今に至ると言う。
これが深淵の女神に関する話だった。
つまりこの深淵の女神に対する信仰は、元の世界に一番多い救われたい為の信仰とは違い、感謝を表す信仰なのだろう。
「多分その深淵の女神様ってのはイザナミの事だな」
俺がそう言うとアル君は理解できていないようで頭に?が沢山ついている。
俺はイザナミの事とそのイザナミに頼まれて魔族を救いに来た事を伝えると、アル君は驚愕したり土下座したりなんか訳が分からない感じになって、落ち着いてから話を続ける。
「それでは陛下は深淵の女神様の御使いであられたのですね…ありがとうございます」
アル君は目に涙を貯めて堪えている。
多分信じていたものが報われた事とか、神の御使いであれば本当に助かるかもしれないという希望で今まで1人で溜め込んでいたものが崩壊したんだろうなと思う。
実際この魔族の軍勢をアル君1人で率いていたような感じだったし、若いのに先頭に立っていたのはそういう責任ある家柄の唯一の生き残りだったからなのでは?とも推測出来る。
俺はアル君の横に立ち、今まで良く頑張ったな。と囁いて頭を撫でてあげる。するとアル君は俺にしがみついて来て声を出して泣きはじめた。
大丈夫、後は俺が引き継ぐよ。
アル君は泣き疲れてそのまま眠ってしまった。本当に泣きつかれて眠るって事あるんだな、と思いながらアル君をベッドに運んで布団を掛けてあげる。
実際今日はかなりの量の仕事も押し付けたし、長年背負った責からも解放されたりと色々気が抜けたんだろうな。
俺はアル君から貰ったリストをポーチに仕舞い、外へ出る。既に軍の配置等も済ませていたようで、途中見張りや巡回の魔族に挨拶をしながら外へ出た。アル君は本当に出来る子だな。
まだ何も建っていない所に町のバランスや交通の便等ある程度考えながら必要施設を創造していく。
その後で大きめの倉庫を何件か建て、倉庫事にジャンル分けして必要物資を創造して今必要なものは揃え終わる。
その後で館に戻り、自分の部屋はアル君が寝ているので空き部屋に入り机に向かう。
俺はイザナミの教典を書き始めた。イザナミの教典とは言ったが、その名を借りた法律だ。
要点だけ纏めるとこんな感じだ。
1、全ての種族は平等である。
2、正当性の無い殺傷の禁止。
3、正当性の無い拘束の禁止。
4、必要以上を求める事の禁止。
5、他者の幸福を願い、自らが幸福になる為の努力をする事。
6、可愛いは正義!
7、毎日イザナミ様に感謝しよう。
え?私情?無い無い!
俺が教典を書き上げた頃には既に日が登っていた。
俺は疲れたなと思い館の食堂へ行くと、どうぞと女の魔族の人が椅子を引いてくれたので、もしやと思い座って待っていると、紅茶と白パン、野菜のスープが出てきた。
アル君はこんな配置まで終わらせていたのかと感心する。
俺は朝ごはんを食べて和んでいるとアル君が凄い勢いで食堂の扉を開け、俺を見つけると物凄い勢いで謝ってきた。
俺は気にしてないと伝えて朝食を勧める。
アル君が席に着いたのを確認して俺は昨日書いた教典を渡す。
「これは何ですか?」
「深淵の女神の新しい教典だよ」
アル君に教典を全ての民に今日中に布教するようにお願いした。
アル君は今日中にですか!?と焦っていたが無視して押し付ける。心なしか若干顔がひきつっていたが気のせいだろう。
続いて本題である今後の予定を切り出す。
「近いうちに元々の魔族領のみ奪い返したいんだけど、なんか注意する事ある?」
流石です!と前置きされてから、詳しく聞いてみるとやはり問題は多いらしく、この砦から3日程の所に元々の魔王城があるティル・ナ・ノーグという都市があり、その都市には勇者と呼ばれる特殊な力を持った人間が5人常駐しているという話だった。
勇者は同じ異世界者かな?
「よっし!それじゃあ5日後に全軍出撃!」
アル君はそれに慌てたように続ける。
「ちょ、ちょっと待ってください!いくらなんでも急すぎです!まだ軍備も整ってないですし、この砦の維持もあります!全軍は流石に…」
「ん?あぁ、そっか、じゃあ半軍出撃!」
「ですから…」
俺は言葉を制して懸念をはらってやる。
「俺だけ3日後に出て先に制圧しとくからみんなは制圧した城の統制だけで大丈夫だよ?」
「なっ!」
俺はその後反論するアル君を宥めてとりあえず一月待ってからの進軍に頷く事にした。思ったより軍備は時間が掛かるらしい。
暇をもて余す事になった俺は何か役に立てる事はないかと考えてこの国の現状を聞いてみると、第一に食料不足という事。
これは俺が人手を充実させた事で後期的には改善させる事が出来たが、現状的に考えるとかなり厳しいという事だ。
第二に治療師、薬品の不足。今回ある程度の治療師の確保は出来たが、軍として活動出来る治療師や薬品が非常に少ないようで、遠征に時間が掛かるのもこの問題があるからという事だ。
第三が天災級の魔物が付近で活動しているという事だ。この砦より南東のティル・ナ・ノーグとは反対に位置する山脈に飛竜の巣があり、元々は麓の森に近づかなければ害は無かったのだが、最近活発になり森以外での被害報告が増えてきていたという事で恐らく邪竜と呼ばれる個体が産まれて統率しているのでは?という事で、こちらは現状討伐隊も組めず放置するしか無いようで、この事も進軍を遅らせる事情の一つとなっているようだ。
天災級という事は前回戦った災害級のエンペラーゴブリンよりも格上の存在のようなので興味が出る。
大まかにこの三点を聞いてアル君は布教活動の指揮をする為に食堂を後にした。
俺は話を聞いた後でまずは天災級の問題を片付けようと考えながら食堂を出ると、前回道案内してくれたボインちゃんに出くわした。
ボインちゃんに話しかけるとかなり恐縮していたが、話してみると彼女は諜報特殊部隊長という軍でもかなりトップの魔族のようで、名前をエリザ・クリードという貴族階級の人物のようだった。
「諜報特殊部隊って事は情報収集とかも広報系が出来るんだよね?」
「は、はい、しかし現状では偵察部隊が少なく余り多くの活動が出来ておりませんが…」
どこも人手不足のようだ。
「それじゃあ、人間の国にあるギルドって知ってる?」
俺は彼女にギルドシステムの立ち上げと必要な人材を確保する為の権限を与えて、最初に薬草の収集依頼を出すようにお願いした。
その際報酬が必要となるのだが、魔族と人間の通貨は違うらしく、通貨も新しくする予定なのだが現状は軍予算の魔族通貨を自由に使える権限も渡して、ギルド(仮)となる建物を創造して管理を任せる。
それが終わり、俺は山脈の方へと天翔していった。




