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神との邂逅

ブクマ増えてる!誰かは判らないけどありがとう!ヤル気でるぜ!

目が覚めると目の前にはキリエがいた。


俺が声にならない声を発するとキリエは此方に気付いて急に泣き出す。


どうして泣いているんだろう?そう考えて思い至る。メルの事だ。


俺はキリエの頭を撫でてやる。きっとキリエは自分のせいでメルが煉獄へ堕ちたのだと思っているのだろうが、そう考えるのはメルの気持ちを踏みにじる事じゃないかと思う。


だから大丈夫。キリエは悪くない。そう伝える。嗚咽が混じり、よく聞こえないがごめんなさいとそれでも謝っているのだと分かる。


きっとこのごめんなさいは俺の気持ちに対してだろうなと、受け止める。


悪いのは全部…それを考えると頭を怒りに埋め尽くされそうになり、振り払う。


行かなきゃ行けない所がある。


起き上がり、靴を履こうとするが足がない事に気づく。


俺はいつも気を失うとどこかしら無くなってるな、と自嘲する。


氷で足を作り革靴を履く。横の机には俺の服が一式あり、ズボンが破けていた。


それを創造で直して着替え、歩き出す。足首が駆動しないので歩きにくい。


その足首に駆動部分が出来るように創造し直すと、最初はバランスが難しかったが、なんとか動きやすくなった。


行ってくると言って部屋を出ようとすると、キリエは何も言わずフードを深く被って顔を隠しながら付いてくる。


どうやら俺が居たのは最初に取っていた宿の様だ。


俺は道すがら、キリエと当たり障りの無い会話をして歩く。


どうやら俺は5日寝たままだったようだ。


そしてようちゃんはというと、襲撃の全責任を自分だけで背負い逃亡し、その時偶然出会った盗賊から助けた少女、エリナ・バンブリッジが事情も聴かず自らの館に招き、そのまま匿ってもらっているという。


ようちゃんには悪いことをしたなと思う。


俺は都市を出て墓地へと到着した。


墓地の中央は相変わらず警備が厳重だが、俺はそれを無視して進んで行く。


警備が止めに入ってきたが、氷の破片で一瞬で肉塊となる。


それを見た他の警備も駆けつけて来ようとするが、俺はその全てを一瞬で肉塊にしていく。


その異常な光景を見ても、それをなしているのが自分であっても何の感情も沸いてこない。


俺が扉を開くと、中には俺が待ってろと言った事を守っていた獣人等の亜人が数人残っていた。


彼らは俺を見て、拝んでくるもので鬱陶しいので早く行けと言って外を指差す。


彼らは最後まで俺に感謝を伝えていたが、俺は感謝される事をしていないので自分にイラついて壁に当たる。


迷宮内の魔物を虫を払うように排除しながら進んでいく。


ヒオル達の元に着いた時は魔王様と崇められて本当に鬱陶しかったが、もう外に出られると伝えて当たりそうになる感情を努めて圧し殺し、忘れ物をしたと言って先へすすむ。


後ろに付いてきているキリエの表情で何かを悟ったのかヒオル達は深く追及せずに外へ移動する準備を始めていた。


俺はその後も当たり散らすように魔物を惨殺していく。


前回来たときはそれなりに苦戦した相手や階層主等も居たのだが、それは全て一瞬で肉片と化していく。


俺は強くない。本当に強かったら今頃は…そう考えて壁に拳を叩きつける。


俺はただひたすら迷宮を下り、ようやく50層にたどり着く。


「ユウカ、何故戻ッテキタ?」

「全部知ってんだろ?」

「フム、煉獄ハ堕チレバ二度ト戻レヌゾ?」

「それでいい、俺を連れてけ!今の俺なら連れていけるだろ!」


恐らく煉獄へ行く条件は罪悪感だ。今の俺には十分ある。


「ソウカ、失望シタヨ」


キエルはそう言って詠唱を始める。


「主様!私も…!」


俺はそう言って掴んでくるキリエを突き飛ばして魔方陣に呑み込まれた。





目を開けるとそこは森だった。


「メル…今行くよ。」


俺はそう言って目の前に広がる亡者達の群れを薙ぎ倒しながら進んでいく。何故だか判らないがその方向にメルがいるのだと分かる。


煉獄には亡者や魔物ではない怪物、あらゆるものが存在していた。


俺はそれを倒し、時に逃げ、血にまみれながら突き進んで行く。


どれだけの時間、月日がたったのかはもう覚えていない。ただ、ただ目の前の敵を殺すという事を繰り返し、目的も忘れてただその方向にひたすら進んでいった。


もはや自分の事すらも忘れた頃には自分に叶う敵は居なくなっていた。


ただ頭の中を埋め尽くすのは殺すという原始的な殺人衝動のみ。生きるために殺す。邪魔だから殺す。気に入らないから殺す。


殺し、喰らい、生きるだけのただの獣となっていた。


その肉体を殺し、肉を喰らい、魂を掴み、魂を喰らう。


何年、何ヵ月、何日、何時間そうやって生きていたのだろうか。


俺はふと涙が頬を伝うのを感じ、その理由を思いだす。


記憶の隅で錆び付いていた記憶を少しずつ思いだしていく。


涙が止まらなくなった。


そこはすぐ近くだった。


山の岩影にある小さな洞窟。


恐る恐る中へと入り、明かりのない洞窟を右手伝いに進んでいく。


「ユウ君…来てくれたんだね…」


懐かしい声が今まで殺してきた自分の感情を記憶を全てを一気に鮮明に溢れ出させ、涙と共に流れ落ちる。


「本当に、本当に長い間待たせてごめん」


メルは壁に持たれたまま動かない。


「本当に待たせすぎだよ、だけど本気でこんな所まで来てくれるなんて思わなかったよ。私、本当に幸福者だな…」

「ああ、俺もこんなに待ってくれる奴が居てくれて本当に幸福者だよ…」


俺は前に踏み出す


「駄目!」


俺は大体予想していた。知ってるよ?こんな話。

俺はそれでもメルへと近付き、向かい合い目を会わせる。

そして彼女に口付けをした。


彼女はもう涙を流せない。それでも泣いているのが分かる。


彼女は半分白骨化して半分の肉が腐り虫が沸いている。


「こんな姿、ユウ君に見せたくなかったよ…」

「どんな姿でも俺はメルを愛してやる。言ったろ?見た目は関係無いって…」

「言ったかな…?」


そう言ってメルははにかんだように見えた。


この煉獄では死んでも死ぬことは無く、永遠という檻に魂を閉じ込められている。


「あのね、ユウ君にしかお願い出来ない事があるの。」

「ああ、」


俺はその次の言葉を理解している。それがどういう事かを理解している。ただ、この煉獄で繰り返して来た事をすればいい。


「私をタベテ?」

「ああ…」


俺は全て喰らった。何一つ残さず全て喰らい、その魂を魔力で捕まえる。


「ユウ君…君に会えて良かった!」


俺は彼女の魂を喰らう事が出来ず、自らの魔力の中に押し込む。


その魂を自らの魂に溶けるように、一つになれと押し込む。


異なる魂が拒絶の反応を起こして身体を軋ませ、悲鳴が漏れる。


何日たっただろうか。俺はメルの魂を自らの魂に溶かし、一つにした。


これでずっと一緒だ。魂の拒絶に身体は裂け、声は枯れ、痛みで脳が麻痺し、もはや立つことも動く事も出来なくなった。


俺はそのまま意識を閉ざした。






何もない暗闇に自分が浮いているのが分かる。身体が動く。無くなっていた足も生えてるし、手は義手のままだが、意識もはっきりとしている。自分のした事を思い出し、何故自分は意識があるのだろうかと思う。


自分がしたのは魂の融合。喰らい力にするのとは違い、それは意識を崩壊させただのエネルギーの塊として意思の無い化物と化する禁忌だ。


煉獄にいる間に何度も見て経験し、対峙した中で培った知識だ。


『ここに貴方を呼ぶのは2回目ですね』


そこには俺を異世界によんだ奴がいた。

別に恨んでは居ない。何よりもその時の自分が望んだ事だ。


「俺はなんでここに居る?」

『煉獄から貴方を引っ張りあげたのよ?苦労したんだから感謝してね?』


正直あのまま自分を失っていたのと今助かった事を比べてもどちらがマシかなんて答えがでない。あのままでも良かったのかも知れないとも思っている。


『貴方は遠い昔、私が愛した人に似てるのよ、だからつい助けてしまったけど迷惑だったかしら?』

「昔愛した人?」

『でも貴方の方が百倍いい男よ!だって、彼ったら私の顔を見て逃げ出したんですもの。だから毎日1000人殺してやるってつい呪ってしまったわ』


まさかとは思うが多分彼女は伊邪那美だ。


『よく知ってるわね、そう、私はイザナミ。』


勝手に考えてる事を読んで会話繋げやがった。


「そしてイザナギが1500人生ませるなんて面倒な事言い出したんだろ?」


『そうよ!だから私も意地になっちゃってばんばん殺しちゃったわ!だけどね、私もそれに疲れて今度は別の世界に私の子を作って平和に暮らしていたのよ?』


「そのせいで今の日本は人口爆発で食料事情最悪だぞ?」


『あんな世界もう知らないもの!それでね、この世界で平和に暮らしていたのに、今度は別の神がこの世界に人間を送り込んできたものだから戦争になっちゃってね。ウチの子達が本当に死に絶えそうなのよ!だから助けてほしいってお願いしたのに貴方はどうしてか人間の国に行っちゃって何故か魔族じゃ無く亜人助けてるし…』


「亜人はイザナミの子じゃないのか?」


『そうよ、亜人も又別の神の子だけど、そちらはどちらかというと私が招いてあげたの。だってあの子達、どこの世界でも差別されて可哀想だったんだもの。けど勝手に入ってきた人間のせいで台無しだけどね』


イザナミはそう言ってため息をつく。


「それで、俺をここに呼んだって事は、今度は俺にどうして欲しいんだ?」


『最初来たときと違って可愛げ無くなったわね!まあ、察してくれているとは思うけど、今度こそ魔族を助けて欲しいの。今がそれを出来る最後のチャンスだから…』


「最後のチャンス?助けられなかったらどうなるんだ?」


『その時は、魔族は滅びて私も消えちゃうかな…』


「消える?どうして…?」


『神様になると、その力は信仰の力で補給されるの。だから信仰が無くなればそのまま消えちゃうのよ。今の私の力じゃあ直接世界に現れて助ける事も出来ないし…だからお願い!』


「つまり、神の力が強ければ直接現れる事が出来るんだよな?それなら直接殺すことも出来るって事で間違いないな?」


『なかなか物騒な質問ね…でも不可能ではないけど、神に敵うなんて思わない方がいいわよ?私だって直接倒せる気がしないもの。』


「まあ、それはそれでいいよ。とりあえず分かった。助ける。その代わり今度は魔族側に落としてくれよ?」


『ふふ、ありがとう。私も貴方の為に出来る事を考えて置くわ。』


イザナミはそう言って手を振る。

俺は最後に前回気になっていた事をやってみる。一瞬でイザナミの前にたどり着き、その髪を分ける。


「やっぱり可愛いじゃん」


最後にイザナミの赤くなった顔を焼き付けて視界がホワイトアウトしていく。

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