もっと強く
ようやくPVが1000突破しました!
数字的には低いかも知れないですが、個人的にはそれでも十分嬉しいので、見てくださってる方々に感謝感激雨霰です!感無量です!
拙い文章ですがこれからも生暖かく見守ってください!
ヨウとディオは一本の細い道を走っていた。
後ろには大きな丸石が転がって襲ってきている。ダンジョンによくあるトラップの一種だ。
目の前にはL字の道があり、やっと終点だと思い正面の壁を曲がる。
ディオはもう無理!と言ってへたり込んでいる。
しかしその石は壁にぶつかっても砕ける事無く動き出し、それを一瞬で判断したヨウはディオを肩に担いで更に走る。
「普通壁にぶつかって終わりじゃないのかよ!」
ようはようやく見えた十字路を右に飛び込みようやく丸石から逃げ出すことに成功する。
「は、反則です、修練どころか殺しに来てますよ…」
落ち着いた所で辺りを見回す。ヨウ達はダンジョンに潜り既に49層まで辿り着いていたのだが、一向に階下への階段を見つけられずひたすら歩き続けていた。
「さすがにギブです!もう戻りませんか?」
ディオはそう言って青い水晶のような玉を取り出す。
どういう仕組みかは判らないが、これは帰還の魔石というもので、一瞬で地上の魔方陣まで戻ることの出来る石だという。
「お疲れ!先に飯でも作って待っとけ!」
ヨウはそう言って帰らない意思を伝えてくる。ディオも諦めて最後まで付き合いますよと言って立ち上がる。
この階層は粗方魔物は倒し尽くしているのでトラップを除けば殆ど危険の無い階層と化していた。
倒したのは殆どヨウなのだが、ディオもそれなりに貢献はしていた。
ヨウはまた下への道を探しはじめるのでディオも離されないようについていく。
そうしてしばらく進むと大きな四角い部屋に出る。この部屋の床の真ん中には四角い空洞が奈落のように口を開けている。何度も通った道だ。
「やっぱここか…」
「それ、本気で言ってます?」
相変わらずヨウの表情は読めないが、嘘をいう事は今までなかったので本気なのだろうとディオも覚悟する。
「俺が一人で行ってくるからディオは待ってろ、危なくなったらすぐ帰還しろよ?」
「え!?一人で行くんですか!?」
「もし俺達二人が帰ってこなかったらあいつ絶対探すだろ?」
ヨウはユウが戻る事を確信してる言い方だ。その信頼にディオは少し羨ましくなる。
「わ、分かりました。だけど必ず生きて帰って来てください!」
ようは、おう!と答えて奈落の様な穴に飛び込んでいった。
穴は暗く何も見えず、ひたすらに落下を続けている。体感的にも数分以上は落下している。いくらダンジョンが不思議設計だったとしてもこの長さの落下は無駄なギミックだなと思い考える。
そしてようは落下の浮遊感覚の中で歩くような動作をする。すると落下途中であるにも関わらず歩くことが出来る。
ヨウはそのまま歩き続けていくとついに明かりが見えて大きな扉が目の前に現れる。
相変わらずの浮遊感が違和感ではあるが、ようはその扉に手をかけた。
中に入ると浮遊感覚は無くなり、辺りを炎が走り、その部屋の主を浮かび上がらせる。
「あれー?お兄さんどっかで見た?」
ユウをぼこぼこにぶっ飛ばしていた少女だ。
「私は解放者の王シエル、お兄さんは力と富、名声何が欲しいの?」
その声に戦慄めいたものを感じるが、ようやくこの少女を殺しユウのを追い詰めた仇を返せると歓喜する。自然に口角が歪み答えを放つ。
「お前の命だ!」
ようはそう答えて笑みが止まらないまま少女に踏み出す。
一瞬で間合いを詰めて一閃を放つが少女はそれを宙に回転して避け、そのままの威力で蹴りを放つ。
ヨウはそれを刀身で受け止め弾く。お互いに間合いを作るが一瞬で詰めて攻め合い弾き合う。実力は拮抗しているようだ。
愉しい!自分の力を存分に奮う事が出来る最高の相手だ。それは向こうも同じ事を考えていたようでお互いに口角がつり上がる。
ヨウは距離を取り魔技を放つ。
「炎帝剣舞!」
それは迷宮で殺戮を繰り返し、己の力として新たに身につけた技だ。
その瞬間ヨウの周囲を炎が包み、ヨウ自身を燃え上がらせる。
ヨウの体に強い力が流れ込み、自らの力となるのを感じる。
そして斬り込む。その速さは今までのそれとは格段に違うものでその速さを制御する事は難しい程だ。しかし今は制御する必要は無い。全てをぶつけて目の前の相手を圧倒するだけだ。
少女はその速度に反応出来ず、両腕を交差させて受け止めるのが精一杯でその威力を殺すことが叶わず背面の壁に弾き飛ばされる。
そしてぶつかるや刹那、ヨウはその背面に現れて更に背に斬撃を放ち、前方の壁まで飛ばされ衝撃で壁を破壊する。
少女は血を吐きながら立ち上がる。
「慣れるまで時間が掛かるな…」
少女がユウに対して行った攻撃を真似たヨウがそう呟く。
「ははっ、お兄さんはそんなに私が欲しいの?なら早く奪って頂戴!」
少女は嬉々とその目を開き、踏み込んでくる。
ヨウは遅いと感じて刀を構えたその刹那、背後から強烈な打撃を感じて吹き飛ぶ。
まずい!と感じて直ぐに空を蹴って横に機動をずらすと案の定ヨウが吹き飛ばされていた機動の先に少女がいた。
それを見て安堵した瞬間さらに横腹を衝撃が捉えて地面に叩きつけられる。
ヨウは何が起きたか判らないまま直ぐに体制を直すが骨が何本か折れているようでズキズキと抉るような痛みが走る。しかしそれを気にする余裕はない。
少女がゆっくりと此方に歩きながら声を放つ。
「油断するのがいけないのよ?早く私をあなたのものにして?私だけを見て?私を一人にしないで?私を楽しませて?」
狂っている。ヨウは刀を鞘に納めて目を閉じる。
「もう諦めたの?私の事嫌いになった?また一人ぼっち?嫌だ!嫌だあぁぁぁ!!」
少女は叫びながヨウへ最後の一撃を放つ。
ヨウは音を視て抜刀する。
「死線抜刀!」
その瞬間、ヨウの前方が空間ごと切断された。空気も音も物体も全てが一刀両断され、二重の音を作る。
ようはそのまま背を向けて刀を一振りして鞘へ納める。最後まで納めてカチンと音が響いたのと同時に全てが切断され崩壊した。
ヨウはその少女が完全に事切れた事を確認して部屋の奥へすすむ。
そこに不吉な声が響いた。
「お兄さんの勝ちだよ!良かったね!」
その声に反射して振り向くと眼と鼻の先に少女が出現し、唇を奪われた。
ヨウは何が起こったのか全く理解出来なかった。
シエルは口を話すとぴょんと後ろに跳ねてスカートをつまんで会釈する。
「解放者の王シエルです。不束者ですがよろしくお願いします!浮気したら殺すよ?」
そう言ってシエルはニヤリと笑った。
ヨウはただ唖然とその姿を見る事しか出来なかった。
「ヨウ様にはこれをあげるね」
シエルはそう言って手のひらに剥き出しの目玉を乗せて差し出してくる。
それを見た瞬間ヨウの左目が鋭い痛みに襲われて蹲る。そして収まると何事も無かったかのように痛みは引き、相変わらず少女の手のひらに目玉が乗せられたままだ。
「ヨウ様の目…」
少女はそう恍惚とした顔で呟いて口の中にその目玉を放り、咀嚼する。
ブチブチという聞く堪えがたい音を鳴らしてゴクリと飲み込む。ヨウはその目の前の光景に背筋に冷たいものが走る。
そして理解する。それは俺の目だと。
しかし今あるこの左目は何だと考えていると少女が心を読んだかのように教えてくれた。
これは魔眼であると。この魔眼は「希望」という魔眼で、使われた者は無条件で油断するという先ほど自分に身に覚えのあるものだった。
そして少女は続ける。あなたも「解放者の王」であると。
ヨウは自分のステータスを見る。
〈LV.59〉
【魔族】ヨウ
〈称号〉『解放者の王』『剣神(刀)』『殺戮者』「炎帝」
〈刻印〉『破壊』
〈加護〉「生命」『魔眼・希望』
〈縁〉シエル
〈スキル〉「格闘V」「投擲V」「忍耐IX」「片手剣VII」「刀X」「短剣II」「体力IX」「疾走VII」「近接戦闘技術IIX」「剛力IV」「反撃IX」「気配察知VI」「罠察知III」「加速III」「動体視力V」「物理耐性IV」「威圧V」「剣圧VII」「火耐性VI」
〈魔技〉『死線抜刀』『炎帝剣舞』「招炎」
〈魔法〉「身体強化IX」「火IV」「雷I」「殲滅I」
俺も大分強くはなったなと思う。しかし、まだまだ強くなれる。それが凄く嬉しい。
それからヨウはシエルと名乗る少女に聞く。
「なんで俺のステータスにお前がいんだよ?」
「それは私とヨウ様が深い絆で結ばれたからだよ!」
シエルの話では、シエルは一度人の王に倒され、そこで同じように縁を結んだが、その王は人の身であった為に寿命で他界し本来は縁は切られるはずだったのだが、教会の人間がその王の遺骨を媒体に縁を無理やり繋げて従わざるを得なかったと話した。
しかし、今は正式にヨウと縁を結んだ事で、その王の遺骨は効力の無いものとなったから大丈夫だよ!と言っていた。
欲しいものに対して「お前の命だ」と答えた事に若干の後悔をしながらも、本当の敵は教会であり、殺せる獲物だと分かり歓喜する。
ヨウは背中にシエルをかかえたまま奥へと降り、魔方陣から地上へと帰還した。
教会とそこに在る悪意全てを破壊する為に。
ようちゃんは少女を手に入れた!
ようちゃんのモラルが100下がった!
ようちゃんのロリコンが100上がった!
ようちゃんの社会性は消滅した!




