旅は道連れ
かなり短いけどごめごめ!
町の入り口ではディオ様がゴゴゴゴと言う効果音と共に超絶な態勢で門に背を預けて居る訳でも無く普通にポツンと立って待っていた。
「やあ、お待たせ!」
「そちらの方がヨウさんですか?」
ディオはそう言ってヨウを値踏みする様に見ている。俺とは違い敬意の目が見える。
「よろしく」
自己紹介をして、お互いに冒険者カードを見せ合う。勿論俺達のカードは偽装したものだ。
本来はステータスに関しては聞かない・見せないが冒険者として生きる為のルールや事故防衛になっているのだが、俺達はお互いに異世界者という事と、信頼を得るという事の目的で開示しようという事になった。ディオのステータスはこうだ。
〈LV.27〉
【人族】ディオン・スクワイア
〈称号〉『勇者』
〈刻印〉「切断」
〈加護〉「料理」
〈スキル〉「短剣IV」「二刀流III」「近接戦闘技術III」「加速II」「動体視力II」「気配察知V」「逃走II」「料理V」
〈魔法〉「風」「光」「身体強化II」
なかなか強い。というか俺より断然強い。『勇者』と「切断」が気になったので聞いてみると、勇者は魔王、または自分よりも強い者に対峙する際に、全ての能力に50%の上昇補正がかかり、光の特性が付与さるというものだ。
切断はその名の通り、あらゆるものを必ず切断するというものだ。
この勇者と切断掛け合わせたらかなり恐ろしいな。
そしてついでにと、こっそりようちゃんの素のステータスを見せてもらった。初日以外なかなか見る機会が無かったので気になっていたのだ。え?俺がイチャイチャしてたから?
〈LV.31〉
【魔族】ヨウ
〈称号〉「殺戮者」「炎鬼」
〈刻印〉『破壊』
〈加護〉「生命」
〈スキル〉「格闘III」「投擲II」「忍耐V」「片手剣VII」「短剣II」「体力IV」「疾走V」「近接戦闘技術V」「剛力IV」「反撃III」「気配察知III」「物理耐性II」「威圧V」「剣圧IV」「火耐性III」
〈魔技〉「招炎」
〈魔法〉「身体強化III」「火II」「雷I」「殲滅I」
あれ?色々やばない?どらげない?
殺戮者とか物騒なものもあるし怖すぎっ!
殺戮者の称号は、1日をして千の命を奪ったものに贈られる称号で、殲滅の魔法特性が付与されるようだった。
弱いの俺だけ?ようちゃんに片手剣を指南してもらおうかな…と考えながら自分のステータスも見る。
〈LV.18〉up
【魔族】ユウ
〈称号〉『窮鼠猫噛』new「禁忌を犯す者」「刀鍛冶士」
〈刻印〉『創造』『反逆』
〈加護〉「幸運」「守」
〈スキル〉「弓II」up「鍛冶VII」「甲冑II」「革細工IV」「裁縫III」「木工I」「錬金術V」「料理III」「交渉I」『命名』「罠I」new
〈魔法〉「氷III」up「土I」「禁断I」
なんとなくレベルとかスキルがあがっていた。それと窮鼠猫噛という称号と反逆という刻印、守の加護も増えてる。
『窮鼠猫噛』
圧倒的差の格上に対し勝利した者に贈られる称号。『反逆』を刻印する。
『反逆』
反逆する力を得る。
「守」
災難から守る
うん。なんだかよく分からない…刻印に増えているからチート増えた!って思ったけど全く持って分からない。
守はメルからもらった武器に着いていたから本当に御守りだったのだろう。なんか心がほっこりする。
そうしてステータス開示を終え、ディオがようちゃんを先生と呼び始め、ウィズリムへ向かう。
ウィズリムはここバランシールの町から北東にある都市だ。ウィズリムまでは道も整備されており、魔物も少なく比較的安全に向かうことが出来るそうだ。
途中2ヶ所程に村があるそうなので、そこで休み休み無理せずに行こうという事になった。
道中一つ目の村までは一度も魔物や盗賊等に会うことも無く無事に到着する事が出来た。朝から歩いて今はもう夜になっており、丸一日歩いた俺達は全員一致で即宿即寝する事にした。
入ったのは町の入り口からすぐ近くにあった紳士の宿場という宿で、中にはガチムチマッチョのスキンヘッドで、白い歯をキランと覗かせた袖無しのシャツにベストを着込んだ紳士だった。
紳士はマッスルポーズを決めながら対応してくれて、三人部屋に案内され直ぐにベッドに横になる。
「俺達宿間違えたかな…」
「もう、眠れればどこでもいい…」
「ぼ、僕はこんな宿で眠れる気がしないですよ…」
「あー、イギリスって同性愛者多いもんねー…」
「Zzz…」
「ようちゃん寝たし俺も寝るから頑張って!」
「そ、そんなぁ…」
そうして朝を迎えて朝ごはんを食べる為に食堂へ降りる。食堂は受付とは別のマッスル系の紳士が二人で回しているようで、客層は女性の割合が多い。
「この世界にも腐女子っていんのかな?」
今日の朝ごはんは大盛に入ったトマトソースの様なものが掛かったパスタの様なものと、ポテトサラダの様なサラダだ。
まずはパスタの様なものを一口食べる。
モチモチした日本人好みのスパゲティ寄の麺に、トマト本来の甘さと酸味を引き立てるオニオンの風味、その中に隠れている…林檎!林檎の甘味が舌を喜ばせている!極めつけは絶妙なハーブの構成だ。バジルの他にオレガノ…後はタイムだ!この三種類の風味がガーリックに負けない香りを演出し、繊細な品格を出している!
次にポテトサラダを食べてみる。
なんだこれは…これは俺の知らないポテトサラダだ…じゃがいもをすりつぶしたものの中に、形の残る程度のオニオンと、若干酸味のあるオリーブがマヨネーズの無いポテトサラダでも充分な満足感を作り出している…いや、それだけじゃない…これは…ハーブ?俺の知らないハーブだが、その爽やかさと苦味が織り出している…この感動を伝えられる言葉が無い…
「充分伝わってるから」
「ユウさん…」
見るとまたしてま周りの視線を一身に背負っていたようだ。なんかもう慣れた…
俺は立ち上がり、どうもどうもと会釈して席に座る。そして何事も無かったかのように完食し、足早に宿を後にする。
この宿のポテトサラダの評判が村から町へ、そして国中に広まり、この村はポテトサラダの専門店まで出来る様になり、ポテトサラダの村として親しまれるようになったのはずっと後のお話。
俺達が村を出て道なりに歩いていると、一台の馬車が横転して放置されていた。
馬車を調べると馬車の中はもぬけの空になっており、付近に胴体と頭が離れている死体が転がっている。血がまだ乾いていないので死んでから時間は経っていないようだ。
「ようちゃんはこういうの苦手じゃないの?」
「ゴブリン倒してたら人も同じに見えるから特になんとも」
ディオは目を背けているだけで特に騒いだりもしていない。その歳にしては冷静だなと思う。俺?別に他人なんてどうでもいいし、スプラッター系映画もよく見るよ?
「まだ時間経ってないみたいだけど、どうする?今のうちに逃げる?それとも追ってみる?」
そう言って俺は足跡の続く右手の方にある森を指差す。
「いってみるか?」
「しょ、正気ですか!?殺されるかも知れないんですよ!?」
「殺される覚悟もなく魔王の血族を殺せると思ってんの?」
俺は冷たくいい放つ。
俺はこの旅でどうにかディオを洗脳もしくは改心させてみようと考えていた。
ディオは言い淀んでいる。それを無視して続ける。
「とりあえず行くだけ行ってみようか!」
「あいよ!」
「………。」
そうして俺達は森に入っていった。
ポテトサラダ食べたいな…